野球のフォークボールと燃費の関係性?まさに変化球のような特殊な切り口。読むだけでクルマの見え方が変わるかも?
野球のフォークボールは、なぜ打者の手元で落ちるのか。そのメカニズムはクルマの燃費向上にも関係があるという。
さっそくトヨタの硬式野球部「レッドクルーザーズ」のエース、嘉陽宗一郎投手を直撃。元中日ドラゴンズの吉見一起さんが「プロでも通用する」と太鼓判を押すピッチャーに、実際の球筋を見せてもらった
でも、これがクルマの燃費とどう関係するのか。
逆にストレートはなぜ落ちない?
まず「フォークボールがなぜ落ちるのか?」の前に「ストレートがなぜ落ちないのか?」について考えたい。
言うまでもなく、物体は重力によって下に落ちる。むしろ「重力に反して伸びるストレートの方が凄い」とさえ思える。
ボールにかかる力を重力のみとした場合、マウンドから144キロで投げられた球は、キャッチャーに到着する時には 1.0m落ちるはずだ。
しかし「まっすぐ」と評されるストレートの軌道はそうではない。
その理由を誰もが目にしたことのある“あの事例”で説明する。
水が真下に落ちない理由とは
皆さんも、蛇口から落ちる水が、スプーンなどで跳ね返らず、曲面をつたってナナメに落ちることを目にしたことはあるだろう。
このように、水や空気には壁面に沿って流れようとする性質がある。
これをボールに当てはめた図で見てみると、左向きに投げられたボールは、右向きの風を受ける。図の赤色矢印のように気流は上下に分かれ、ボールの曲面をたどる。
ボールのスピン(回転)を考慮しない場合、上下の力は釣り合う。しかし実際のストレートは、紫色矢印のようにバックスピンがかかっている。
バックスピンの影響で、上側に多くの気流が流れて浮力が働くので、ストレートは伸びるのだ。
ちなみに嘉陽宗一郎選手は、自分の投球について、どの程度回転を意識しているのだろう?
嘉陽
学生時代と違って、トヨタの野球部に入ってからは測定機器を使えるようになりました。ボールの「回転数」や「回転軸」そして軌道の変化に関わる「回転効率」などが分かるので、ピッチングの改善に生かせます。
以前、トヨタ生産方式の研修で工場を見学したのですが、クルマづくりの現場で行われている改善は、アスリートとしても勉強になりました。
回転数の違いが、落差の違い
では、なぜフォークボールは打者の手元で落ちるのか。
ボールの回転数は、一般的にストレートが1分間におよそ 2200 回転、フォークはその半分といわれている。
ストレートとフォーク、回転数の違いがどう影響するのだろうか?下記動画を見ると分かりやすい。
回転数の少ないフォークボールは、上に引き上げられる浮力も小さく、ストレートよりも重力の影響を受けやすく、早く落下するのだ。
*いわゆるツーシーム、フォーシームと呼ばれるボールの握り方もボール変化に影響を及ぼすが、今回は割愛する
次のページでは、元プロ野球選手が「衝撃を受けたフォークボール」を教えてくれた。さらに、クルマについているアレが、実は燃費に影響している理由も明らかに…