「もっといいクルマづくり」に欠かせない評価ドライバー。若手とベテランの感知能力を比較実験!結果はなんと...。
一般人には感じられない熟練の技
次にチャレンジしてもらったのが、前車を追従しながらの加速シーンをイメージした一定速での踏み込み、通称「ゆっくり踏み」。「ステップ踏み」と同様、40-80km/hの加速で、目標アクセル開度は50%だ。
加速についてベテラン射手矢は、狙った踏み込み速度を、狙った開度まで一定で操作できている。
若手 相良は、踏み始めは一定速度でアクセルを踏み込めているが、踏み込み速度が徐々に遅くなり、狙ったアクセル開度に近付くにつれて踏み込みが甘くなっているのが分かる(左の赤い囲み)。
一方、狙ったアクセル開度を保持し、目標車速80km/hに合わせて速度をコントロールする操作はどうか?
ベテラン射手矢のアクセル開度を示す緑のラインは、上昇時と近い角度で下降している。要は踏み込み時に近い速度でアクセルを緩め、狙った車速に合わせることができているのだ。
若手 相良の緑のラインを見ると、下降時に段差がある。つまり、アクセル操作にムラがあり、狙った速度に合わせるのにも時間がかかっているのが分かる(右の赤い囲み)。
データで「見える化」したからこそ、こうしてベテランと若手の運転技能には確かな差があることが明らかになった。想定してはいたが、やはりベテランによる熟練の技能は一日にして成らずであった。
相良
「1日でも早く一人前になるぞ」という気持ちで日々取り組んでいますが、今回の結果が物語っているように、まだまだ運転技能も車両を感じるセンサーも荒い部分があると感じています。
5年以内に「できる・分かる・言える」について自信を持って取り組めるよう努力して、GR86などスポーツ系車両の開発に携わりたいです。
僕にとって、クルマを運転することを仕事にできるのは本当に幸せなこと。これからも、感謝の気持ちを込めてクルマづくりに励んでいきます。
しかし、彼らのテスト走行を見守り、同乗走行も体験した取材陣には、ベテランと若手の走りの違いは分からなかった。
評価ドライバーとは、このように一般人が感知できないほど微細な領域で、クルマのつくり込みを行っているといえるだろう。
次回は、「曲がる」「止まる」をテーマに、引き続き若手評価ドライバーがベテランに挑戦する。評価ドライバーに必要なのは運転技能だけではない?不可欠なことが次々と・・。