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忖度なしの実験企画!24歳vsベテラン クルマを正しく評価できるのは?

2023.12.01

「もっといいクルマづくり」に欠かせない評価ドライバー。若手とベテランの感知能力を比較実験!結果はなんと...。

評価ドライバーのなかでもトップガンといわれる匠たちが所属するのが、凄腕技能養成部だ。

人間の感性がいかに重要な役割を果たしているのか?各種センサーを搭載したテスト車両で、若手とベテランの感知能力を見える化。果たして実力差はどれほどなのだろう。

大ベテランに、修行中の24歳が挑んだ

クルマの基本的性能である「走る・曲がる・止まる」。

これらをテーマに、各機能の評価を担当するベテラン評価ドライバーに、修業中の若手が挑んだ。本連載の第2回で紹介した通り、トヨタの運転資格は、初級、中級、上級、S1、S2に区分けされている。

S1以上は技術部のみのライセンスで、どの環境でも限界域で車両コントロールと評価技能を有している。

S2は初めて走るコース・車両でも短時間で評価ができ、サーキットではラップタイム±1秒以内で周回できる運転技能とともに、トヨタ自動車代表としての人間力も求められる。

今回、ベテラン評価ドライバーとして若手の挑戦を受けたのは、いずれもS2資格を持つトップガンたちだ。

さっそく「走る」について見ていこう。アクセル操作に対してクルマが意図した通りに加減速するかを評価するもので、クルマづくりの現場では「動力ドライバビリティ」評価という。

今回、動力ドライバビリティのスペシャリストとして登場してくれたのが凄腕技能養成部FDチームグループの射手矢晃三SX。子どもの頃から機械と乗り物が大好きで、「小学生のときには父親のクルマを分解していました」と語る、評価ドライバーになるべくして生まれてきたような人だ。

2004年に入社し、動力ドライバビリティの機能担当として車両開発に携わり、2020年凄腕技能養成部に配属

一方、若手として射手矢に挑戦する相良優斗は、1999年生まれの24歳。トヨタ工業学園を卒業し、2018年に入社した。

同学園在学中に凄腕技能養成部が新人を1名募集するという情報を得て、自ら志願。同期120名を対象に第1次選考で40名が選出。その後、卒業までに何度も実施された選考試験や実習をパスし、入社と同時に同部に配属された。

相良

凄腕技能養成部に入ることができてとてもうれしかったのですが、私以外はベテランの大先輩ばかりで、不安もありました。

上司や先輩からは「運転技能の習得や知識教育はサポートするから、人間性を実習先や普段の生活で磨きなさい」とアドバイスされました。

トヨタでは、評価ドライバーとして18歳で入社すると、一般的に上級を取得できるのが25歳、S130歳、S2はそれ以上となる。危険を伴う仕事だけに、運転技能のみならず、人間性の鍛錬も重要視される。

現在、凄腕技能養成部ではテストケースとして、トヨタ工業学園在学中の学生から評価ドライバーとしての適正と人間性を基準に2名を選出。短期間でS2ドライバーを育てるトライアルを行っている。

相良はその1人であり、2022年、23歳でS1を取得。26歳までにS2を取るべく日々精進しているという。

果たして結果は?データを公開!

そんなベテラン射手矢と、若手の相良がチャレンジしたのが、40km/hから80km/hまで過不足なくスムーズに加速する走行テスト。高速道路への合流や前車追い越しなどのシーンを想定したものだ。

ベテランの射手矢はこう語る。

射手矢

私たちは、例えばアクセルを踏んでから、加速度が立ち上がるまでの応答時間や、応答してからのトランスミッションのショック、加速の仕方を評価・検討しています。

ある速度から加速して目標速度に正確に合わせられるようなアクセル操作ができなければ、動力ドライバビリティの評価はできません。

評価ドライバーには、お客様が実際に使用するあらゆる運転状況を狙った通りに再現し、その際にクルマに起きる現象を感じ取るセンサーが必要だからです。

正確に車両を評価するために、日頃から運転技術を磨いています。

ベテラン射手矢と若手 相良が上記テストを行った結果、取得できたのが下記のデータだ。

まずは、高速道路の短い合流車線から本線への進入や、前車を追い越すシーンをイメージした素早い加速のアクセル踏み込み、通称「ステップ(速)踏み」だ。

グラフにある通り40-80km/hの加速で、目標アクセル開度は50%。3つのラインは紫が車速(km/h)、水色が前後G(加速度 m/s 2)、緑がアクセル開度(%)、横軸は経過時間を示す。

ベテラン射手矢のデータ
若手 相良のデータ
ベテラン・若手2人のデータを重ね合わせたもの

まず加速についてベテラン射手矢は、素早く狙った開度()までアクセルを踏み込めており、そのまま一定開度を保つことができている。

相良は、ベテラン射手矢と同様に初期の踏み込みは良いが、アクセル開度を保てておらず落ち込んでいる。それに伴い、前後加速G(水色)の変動も大きい(左と中央の赤い囲み)。

一方、車両が80km/hに達した時点で加速を止め、一定速を保つようにアクセルを緩める操作はどうか?

ベテラン射手矢は、素早く80km/hをキープできるアクセル開度に合わせこみ、アクセルを緩めてからの追加操作が少ない。

対して相良は、素早い操作はできているが、アクセル開度の変動が大きく、80km/hの定常速度を導くのに時間がかかっているのが分かる(右側の赤い囲み)。

次のページでは、ベテランと若手の運転技能には明らかな差があることが判明。一体何が違うのだろうか。

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