クルマ好きを惹き付けてやまないエンジンの音。レースや開発の場で常にエンジンサウンドと接しているレーシングドライバーにはどう聞こえているのか?
情緒価値としてのエンジン音
身体がクルマを感じ対話するにあたって、音はとても大切な要素のひとつだ。
「そのベースとなるエンジン音がいい音であれば、もちろん気持ちがいいですよね」と佐々木選手は言う。
では佐々木選手が好きな「気持ちのいい音」とはどんな音なのか。
佐々木選手
みんな好きだと思いますが、やはりレクサスLFAの音は僕も大好きです。
自然吸気の大排気量エンジンが高回転まで回った音というのは、甲高い音になる。そういう音は誰もが認めるいい音なんだろうと思います。
一方で、佐々木選手がこれから音づくりに取り組みたいと語るエンジンがあった。
それが、2025年10月25日に岡山国際サーキット(美作市)で行われたS耐第6戦でデビューを飾った、GRヤリスM Conceptのことだ。
ミッドシップされるエンジンは、2024年5月のマルチパスウェイワークショップで発表された際に、赤いヘッドで注目を集めた2.0L直列4気筒ターボ付きのG20E型だ。
このエンジンは発表当時よりコンパクト化が進められ、より大きなパワーを引き出すための取り組みが重ねられている。
佐々木選手
G20Eは排気音がターボに当たって、ターボが回るシューッという音がしている、排気音ではなくて作動音が聞こえてしまっている状態です。
これはあまりいいことではないので、これから改善していきたいと思っています。
まだ音づくりの段階まで進んでいないので、ここからです。
ICE開発部でエンジン開発の坂井光人主査は、「性能を上げていくと音が悪くなるということが背反としてある」とS耐岡山で話していた。
この原理原則のなかでいい音を追求するためには、燃焼スピードをコントロールし、併せてエンジン本体から伝わる音の素となる振動や空気の流れを適切に制御していかなくてはならない。
まさにこれから、ドライバーの身体感覚を総動員した、さらなる解析と制御の積み重ねが求められている。
最後に、佐々木選手にエンジンの「音」だけでクルマを聞き分けることができるか聞くと、佐々木選手は「当然でしょ!」という表情で「はい」と短く答えた。
ではどのようにして聞き分けているのか問うと、しばし考えてから丁寧な口調で語り始めた。
佐々木選手
音が高いか低いか、低音と高音の割合、回転数が上がっていくときは太い音なのか、調律された音なのか。
それから1気筒ずつの力がありますよね、例えばV6のクルマとV8のクルマの音、V10の音って違うので。
たぶんそういうところで聞き分けをしていると思います。バイクももちろん聞き分けられます。
人間の声と同じですよ。みんな同じヒトの声でも、あの声はモリゾウさんだな、あの話し方は(豊田)大輔さんだなってわかりますよね。
クルマも完全に一緒で、個性があって、キャラクターがありますから。
音楽もそうですが、聞き分けられるかどうかは興味があるかないかという違いじゃないでしょうか(笑)。
この記事を最後まで読んでいただけたカーガイのみなさん、まずは街中で、そして水素エンジンやバリエーション豊かな車種が混走するS耐に足を運んで、エンジン音の聴き比べを楽しんでみてはいかがだろうか。
クルマの息吹を体感することで、目の前を駆けていくクルマがより一層躍動して見えるに違いない。