新型スポーツカーのワールドプレミアが5日、Woven Cityのインベンターガレージで行われた。その様子を紹介する。
式年遷宮という言葉がある。
定められた年(式年)に神の住む宮を遷す(遷宮)儀式で、伊勢神宮では1300年前から20年に一度行われる神事だ。
伊勢神宮では、式年遷宮の意義を「日本の歴史や先人たちの心などは、決して捨て去ることはできません。未来に残さなければならないものを守り続ける。それは変えること以上に難しく、大切なことなのです」と説明している。
では、トヨタにとっての“式年遷宮”とは何か?
トヨタのクルマ情報サイト「GAZOO.com」で、モリゾウこと豊田章男副社長(当時)はこう語る。
スポーツカーの開発は、伊勢神宮の「式年遷宮」みたいなものだと思います。
(中略)
1967年、トヨタは2000GTや1600GTなど、多くのスポーツモデルを送り出しました。
その時の若手メカニックのひとりが、成瀬(弘)さんです。
それから40年、成瀬さんは棟梁となって、若いエンジニアやメカニック、ドライバーに技術と技能の伝承を行っています。
時代が悪いから、開発をやめると言うことではなく、将来を見据え、こういう時代でも技術や技能の伝承を続けることは、とても大切なことだと思います。
もちろん、20年前にはなかった多くの技術が、このLF-Aには盛り込まれています。
カーボン素材や、時速300kmからでも安全に曲がれ止まれる技術、各種の機能部品など、色々な技術のブレークスルーもたくさんあります。
そんな開発が、今後、さまざまなクルマに活かされていくことを考えると、開発をやめるという理由は、見当たらないように思います。
(2009.5月29日 GAZOO特集「モリゾウのドライバー挑戦記」より『伊勢神宮の式年遷宮…?』)
5日、トヨタはスポーツカー3車種のワールドプレミア(WP)を、静岡県裾野市のWoven Cityにあるインベンターガレージで実施した。
*本記事内の車両意匠は、いずれも現時点のもの。
強さの物語は悔しさから始まる
TOYOTA GAZOO Racingのサイトで、11月27日から始まったカウントダウン。会場のスクリーンに“その瞬間”が表示される。3秒前…2秒…1秒…。
オープニングムービーの後、ステージに上がったのは、サイモン・ハンフリーズChief Branding Officer(CBO)。
迎えるのはジャパンモビリティショー(JMS)2025で展示された「LEXUS Sport Concept」から、名称を一新したコンセプトカー「Lexus LFA Concept」だ。
WPの様子はYouTubeでも生放送された。多くの注目が集まる中、デザインのトップは、2つの屈辱の物語を披露した。
ハンフリーズCBO
Good morning everyone.
おはようございます。
Thank you for taking the time and trouble of coming all this way to the Toyota Higashi-Fuji Plant here in Eastern Japan.
本日は、トヨタ自動車東日本の東富士工場にお越しいただき、 誠にありがとうございます。
Now originally, this was a press shop.
元々ここはプレス工場でした。
And as some of you may know, it was the factory where Shoichiro Toyoda and Nakamura Kenya created the first Century in 1967.
そして、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、1967年に中村健也さんと豊田章一郎さんが初代センチュリーを生み出した、まさにその場所でもあります。
The spirit of invention that was born here is now reborn as the Inventor Garage of Woven City, a facility for creating the future.
ここで生まれた“発明の精神”は、新たに“Woven Cityのインベンターガレージ”として未来をつくる場所に生まれ変わりました。
Now today will be a celebration of not only invention but of something that I know we all love: a celebration of the car.
今日は発明のお祝いだけでなく、私たちが愛してやまない“クルマそのもの”をお祝いする日でもあります。
The excitement, the thrill, the love for speed, all things I think, everyone in this room and everyone watching online shares a passion for.
あのワクワク、スリル、スピードへの愛。ここにいる皆さんも、オンラインで見ている皆さんも、きっと同じ情熱を心に持っていると思います。
But as with many things in life, a story of strength begins with a story of what is called in Japanese kuyashisa--humiliation.
しかし人生と同じく、“強さ”の物語は日本語でいうところの“悔しさ”…「屈辱」から始まります。
And I want to tell you about this from two viewpoints.
2つのお話をさせていただきます。
I have been working as a designer for 36 years, and I can honestly say that as a designer, there is nothing more painful than being told that what you have put your heart and soul into. is boring.
私はデザイナーとして36年間働いてきました。正直に言ってデザイナーにとって自分の“心と魂”を注ぎ込んだものを「つまらない」と言われることほど、つらいものはありません。
14 years ago at Pebble Beach in America, that is exactly what happened when Akio was told on his visit there, “Lexus is boring.”
14年前、アメリカのペブルビーチでまさにそれが起こりました。そこで章男さんは「レクサスはつまらない」と言われたのです。
That feeling of humiliation was a turning point, and it became a source of determination.
その“屈辱”は大きなターニングポイントとなり、強い決意の源になりました。
当時のトヨタは、規模の拡大を追求する中で台数と収益を優先し、販売地域も、車種も偏ったクルマづくりをするようになっていた。豊田会長は2024年1月に行われた講演で「そこには『つくれば売れる』というメーカーのエゴがあったと思います」と振り返っている。
「お金をつくる会社」から「商品で経営する会社」へ。改革の闘いを続けてきた豊田会長。
それから14年。今年のペブルビーチで、もう退屈とは言わせないために、このコンセプトカーをどう見せるのが良いか? と問われた豊田会長の答えはいたってシンプルだった。