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おにぎりで奏でる高音のロータリーサウンド

2024.10.03

クルマ好きを惹き付けてやまないエンジンの音。エンジンの形が変わると奏でる音も違ってくるのか。第3回はロータリーエンジンが高音ですっきりした音のワケを聞いた。

復活したロータリーエンジン

2012年にRX-8が生産終了して以来、量産休止となっていたロータリーエンジンだが、開発の灯を絶やすことはなく、約11年を経て発電専用エンジンとして量産モデルへの搭載復活を果たした。(マツダ公式サイト ロータリーエンジンスペシャルコンテンツ

MX-30

このMX-30に搭載される8C型ロータリーエンジンもロータリーサウンドを響かせるのだろうか?と問うと、岩田氏は「期待されるお客様も大勢いらっしゃるんですが、あいにくとこのエンジンは発電専用という性格上、高回転まで回さないので、いわゆるロータリーサウンドのおいしい所はお聞かせできません」と苦笑した。

しかし逆にいえば静粛性に優れたロータリーエンジンの特徴は、PHEVにもフィットするということだろう。

ロータリーエンジンなら静かさを求められるPHEVにおいても音づくりはしやすかったのだろうか?

岩田氏

それがそう簡単にはいかんのですよ。ロータリーエンジンは単体でも静粛性に優れた構造ではあるんです。さらにローターが2つだと振動を打ち消し合えていいのですが、MX-30はローターが1つなので、1つでは打ち消し合えず、車室内でノイズとなってしまう振動成分に対応しないといけませんでした。

振動をなんとか車体に伝えないように車体と種々つながっている部分の伝達経路を遮断させたり振動を減衰させる機能を追加させたり…とその点では難しさがありました。

とはいえ、加速していくときのエンジン回転が上がっていく感覚や、アクセルペダルを踏んだときの反応について、人の操作感覚に合うような音になるようにエンジン制御で工夫を入れました。発電専用という特徴を生かして割と自由につくり込むことができたので良かったです。

記憶に残る「マツダ787B」

ロータリーサウンドのファンにとって1991年のル・マン24時間レースで日本車初の総合優勝を果たしたマツダ787Bが奏でるサウンドは記憶に残る音のひとつだろう。

マツダ787B(提供:マツダ株式会社)

このマシンの特徴とはどんなものだろう。

岩田氏

787Bはペリフェラルポート式 * を採用しています。それはローターがより速く回転してスピードが出るようにハウジング内の排気圧が下がりやすい形になっているので高回転時「パーン」っていう高音を奏でます。

*まゆ型のハウジングに直接吸排気の出入口があり、開口面積を大きく取れるため吸排気抵抗が小さく、高回転域で高出力が得られるためスポーツカーなどに採用されている。

逆に低回転時には、開口面積が大きいので一気に排気されてしまうので「ボッボッボッ」というレシングカー特有の迫力ある脈動音になります。

しかも4ローターなので、多気筒のレシプロエンジンと同じように回転数が45007000回転の高回転域に踏み抜いていくときの甲高い響きは格別です。

お世辞じゃなく僕はLFAの音も好きなんですけど、4ローターの音の雰囲気と近いものがありますよね。

LFAを挙げていただいたところで、他にも好きなエンジン音は?と聞くと、「若かりし頃はホンダVTEC6000回転から吸排気のバルブが開度が変わったときに変化する音が好きでした。特徴ある音っていうのは人によってはノイズとみなされてしまうときがあり、好みが分かれてしまうところなんです。

例えばSUBARUさんの水平対向のあの「ドロドロ」という音など、僕個人としては各社こだわりのあるエンジン構造やメカニズムゆえの特徴を示すような音は残していけたらいいんじゃないかなって思います」と岩田氏は答えた。

マツダの目指す「いい音」とは

最後に「いい音」とは何か尋ねてみた。

岩田氏

一般的に「いいエンジン音」っていうと、回転数をグーンと上げて踏み抜いて高回転まで引っ張ったときの音をイメージする人が多いと思います。その点、高回転まできれいに回るロータリーサウンドは確かに「いい音」だと思います。

ただ、もっと広い意味での「いい音」とは走りの場面や人の操作に対する期待を言われているのだと思います。

たとえばスーパー耐久に弊社はディーゼルエンジンで参戦していますが、ガソリンエンジンと違って高回転まで回さない上にターボで脈動が減衰されちゃうからエンジン音が小さいんです。

そうするとサーキットの現場からでは「迫力が足りないからもっと音を出せないのか」なんて言われたりもします()

結局いい音というのは、聞く人の気持ちに沿った音が出せるかということだと思います。

弊社では 人馬一体を目指したクルマづくりを目指していますが、音づくりもその一環です。

操作にマッチした、出るところは出て、抑えるところは抑えた音、運転する自分の感覚に寄り添うような音づくりを今後も追求していきたいです。

そのために、ロータリーでもレシプロでもディーゼルでも、きっとどのメーカーでも同じように苦労して、汗をかいているのだろうと思います。

「そう簡単にはいかんのですよ」と苦笑する岩田氏の顔が目に浮かぶが、復活を果たしたロータリーエンジンが、再び高回転まで伸びやかに澄んだ音色を響かせる日を期待したい。

マツダ787B(提供:マツダ株式会社)
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