阪神甲子園球場でカーデザイナーが"アレ"について語った。リーグ優勝が決まった日の朝、球場で明かされた裏話とは・・
テレビでは見えない細部も公開
東京2020オリンピックの野球で使われたリリーフカーは、「かわいい」とネット上で大きな反響を生んだ。実はあのクルマも永津がデザインしたものだ。
阪神甲子園球場を含めて“日本で唯一、2台のリリーフカーをデザインした”ことになるのだが、今回はどんな工夫が詰まっているのかじっくり見ていきたい。
ステアリングには黄色のステッチを配した。ダッシュボードにも同色のパネルをオン。
いくつものアイデアが込められたトヨタからの提案を、阪神電気鉄道株式会社・甲子園事業部の湯山佐世子さんは驚きとともに受け止めていた。
阪神電気鉄道株式会社 湯山さん
トヨタさんは選手のことを考えたすべてのオーダーを受け入れるだけでなく、時間がないにも関わらず、必ず何かを自主的に提案してくださいました。ものすごい熱量を感じましたし、これがクルマづくりのプロかと驚きました。
熱量を感じていたのはトヨタも同様だった。
井戸
何度もミーティングをしたんですが、必ず前日の試合結果から会話が始まるんですよ。彼は調子落としてるなあ、頑張ってほしいなあと。話すたびに愛が溢れているんですよ。
その言葉に触れているうちに、僕も永津も阪神が好きになってしまいました。費用や時間の制限もありましたが、熱量で工夫を繰り返しました。
井戸と永津。この二人は、2017年から毎年アメリカで開催されるCESに出展するコンセプトカーづくりでタッグを組んできた。長年の信頼関係があるからこそ、井戸はあまりリクエストを出さなかったという。
永津
ちょっと強引かなと思うくらい、“ここ、こんな風にしてみました”と形にする。リソースが限られているときは、そんなやり方のほうが上手くいくんです。いいものが形になってくると、最初は不安を感じていた人も、だんだん仲間になってくれました。
せっかく阪神甲子園球場で取材したので、リリーフカーを運転する人にも話を聞いてみた。
タイガースガールズ キャプテンのAyakaさん
リリーフカーが登場することもエンターテイメントだと思っているので、投手を降ろした後、クルマを収めるときにも神経を使います。
バックで収めるんですが、スパッと一発で入れたほうがかっこいいじゃないですか。でもお客様から面白がって「もっと右だ!右―!!」といじられたり(笑)
(取材後の試合で優勝が決まりそうなので)運転してきた中で、今日がいちばん楽しみです。
そして、2023年シーズン、最も多くセーブ ※ を獲得した投手に贈られる“最多セーブ投手賞”に輝いた岩崎優投手からもコメントが届いた。
※リードしているチームの救援投手が、試合終了までリードを守りきることで付く投手記録
阪神タイガース 岩崎投手
投げることを考えるのはマウンドに上がってからなので、割と球場の反応を感じながら乗っています。シートが高くなったので見える景色も変わりましたし、よりファンのみなさんから見てもらえるので良いと思いますね。
そして、勝利のヒーローになってリリーフカーで球場を一周するときは最高の気分だという。
阪神タイガース 岩崎投手
その時はもう試合に勝っている状況なので、気分は良いですね。これからもたくさんリリーフカーに乗って、0点で抑えることができるように頑張ります。
ファンとともに最高の時間をつくり出すリリーフカー。井戸は、多くの人にC⁺podを知ってもらえる良い機会だったと振り返る。
井戸
「甲子園で使ってもらっています」と会話を始められるのは大きいですね。C⁺podは小型で改造もしやすいので、あらゆる可能性があります。
熱狂とともに、あらゆる物語が生まれていく阪神甲子園球場。今後、球場やテレビで見る際は、是非リリーフカーにも注目いただきたい。
デザインの力でモビリティの活躍の場はますます広がっていく。