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2024.12.13
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階段の踊り場でダンス?メーカーの垣根を越えてカーデザイナーが変なことをやっていた

2024.12.13

本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は自動車会社の合同ファッションショー!?

【マジメ禁止】階段の踊り場でダンス

そもそも「JAID」とは、どのような団体なのか。

トヨタ ビジョンデザイン部 中嶋孝之 部長

2015年に各社デザイナーが雑誌取材で集まった際、意気投合して発足しました。みんなで広島に行ってマツダさんを見学したり、トヨタ博物館をご案内したり。

マジメ禁止で楽しいことをやりましょうと、各フロアから自由に集まって階段の踊り場でダンスするイメージで各社の色を出すことがコンセプトです。

今回のショーのタイトルも、廃材は、捨てる/放るもん、お肉でいうホルモンということで「HŌRUMON NIGHT」に。サステナブルな活動をポジティブなミートアップの場にしようと名付けました。

日産 グローバルデザイン本部 第三プロダクトデザイン部 花岡大輔 デザインマネージャー

デザイナー同士の交流が刺激になります。自由な場とは言いつつ「あのクルマの内装って」など探り合いもあったり(笑)。業界を盛り上げていくためにはデザイナーが社外に出ていくべきだと考えています。

JAIDはあくまでも有志活動だ。社内での風当りが強いこともあったそうだ。

ダイハツ 第一デザインクリエイト室 佐々木克典 室長

当初は「遊んでるんでしょ?」と誤解されたり。でも展示会などを重ねるうちに、参加メンバーの実力がついてきたのが見え、今では皆さん応援してくれています。

お互いのクルマの話で盛り上がることも多いそうで、ランドクルーザーやミニバン系のデザインを担当するトヨタ車体のデザイナーはこう語る。

トヨタ車体 デザイン部 デザイン戦略企画室 カラー&感性デザイングループ 竹内孝太さん

業務ではランドクルーザーに関わっているので、日産パトロールやインフィニティQX80の内装を見ると「こういう感じでくるんだ!」と衝撃を受けたり。

日産の花岡さんに「誰が担当したんですか?」って聞くと、ちょうど内装を手がけた方が近くにいらして。会社によって思想も手法も違う。いい意味でカルチャーショックでした。

それに対し、日産の花岡さんは「新型アルファードに搭載されたスーパーロングオーバーヘッドコンソールは社内でも話題になりましたよ」と社内の反響を紹介。

話はどんどんマニアックに。みなさんクルマが大好きなのだ。

日産さん、あれはズルかった(笑)

ショーの作品づくりは、各社が順にアイデアをプレゼン。「いすゞさんならもっとカジュアルじゃない?」「トヨタ、マジメすぎない?」などと容赦なくガヤが飛ぶ楽しい現場だったという。

ホンダ デザインセンター デザイナー 栁田夢さん

「マジメ禁止」ということもあって、すごいガヤが飛んでくるんですよ(笑)。

いかに最後まで楽しんでもらえるか。お互い高め合えるか。楽しみつついいアイデアを詰めていけるように寸劇でプレゼンしました(笑)。

とはいえ「負けたくない」という想いもあるようで。

トヨタ インテリアデザイン室 茂木俊介 主任

各社のプレゼンスタイルが様々で「そういう伝え方もあるのか」と刺激を受け、負けられないと思えました。トヨタは動画をつくりましたが、表現の幅を広げることができ日常業務でも活かせています。

そういえばA3一枚にアイデアをまとめるフォーマットで、日産さんだけスタイリッシュな掛け軸でプレゼンしたことがあって、あれはズルいと思いました(笑)

これには一堂笑いが。日産の花岡さんは「それを言ったら、企画書じゃなくて試作品をつくって着て来たトヨタ紡織さんの方がもう一枚上手でしたよね(笑)」と嬉しそうだ。

今回、唯一自動車メーカー以外からの参加したクリエイターの采礼さんはこう語る。

クリエイター 采礼さん

独自研究した3Dプリンティング技術によって、廃材をファッションへ昇華させるアップサイクルブランド「SAAYA」を手がけている

自動車会社の人ってマジメなイメージでしたが、いっぱいガヤも飛んでいて、こんな感じなんだと楽しかったです(笑)。作品も縫製がきれいでびっくりしました。

「SAAYA2024コレクション」。デジタル技術などにおいて予期しないエラーが発生する現象「グリッチ」をファッションで表現。3Dプリンター(exf-12/extrabold)でつくられている

采礼さんが絶賛したのがトヨタ紡織の作品だ。クルマの内装部品に留まらず、飛行機や新幹線のシートなども手掛けるトヨタ紡織。デザイナーに話を聞くと…

トヨタ紡織 デザイン部 江崎有香さん

ダウンの裏地は15年ほど前にトヨタの車両に使われていたシートを利用しています。補給用原反といって、シートをつくり直すために何年か置いておくのですが、保管期限が切れると捨てられていたものです。

今回、ホンダとのコラボ企画となったいすゞ。ホンダの栁田さん曰く「いすゞさんのスケッチがあまりにも素敵だったためオファーした」という。

いすゞ デザインセンター プロダクト&CMFグループ 林千鶴さん

うちには3歳の娘がいて「こんなハーネスがあったらいいな」というものを形にしました。お互いに商品化したいと思えるアイデアを出し合え、貴重な体験になりました。

JAIDの活動を通じ、各社持ち帰ったものも大きかったようだ。

ダイハツ 第1デザインクリエイト室 佐々木室長

会社の指示ではなく、自分がつくりたいものだから一切言い訳できない。いいクリエイティブをつくる実行力が身についたと感じます。

ほかにも「新車の発表会は他部署の仕事だと思っていた。もっと演出も考えるべきかもと考えさせられた」なんて声も。

イノベーションは意外な組み合わせから生まれる。取材を通してそう再認識させられた。今後、各社からどんな内装デザインが生まれるか、乞うご期待!

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