トヨタが高速道路の工事現場に?作業をラクにするための"バーチャル現地現物"って一体なに!?
「こんなのできるか!」と言われてもいい
現場のモチベーションが上がっただけでなく、現場からも改善案が出てくるようになったそうだ。
大林組JV 兼丸所長
職人の皆さんも、僕らに言われるより、自分たちでやり方を変えていく方がきっと楽しい。シミュレーションを取り入れてみたら、明らかに作業がスムーズになってモチベーションも高くなったと聞きます。
しかし当然ながら、複雑な工事現場ではすべてがシミュレーション通りにはいかない。
現場で汗を流し、懸命に仕事に向き合う職人の皆さんは、シミュレーションの中にいるバーチャルな人ではなく、一人ひとり生身の人間だ。経験値で身につけた仕事の手法があれば、日によって体調も違う。
シミュレーションの精度を高めるには、現場で働く人たちとの対話が不可欠だと改めて気づくことに。
未来創生センター 酒井伯文 第2インフラシステムグループ主任
職人さんたちも最適だと思うやり方で作業しているので、我々のやり方を押し付けると絶対にカドが立ちます。だからこそ共感していただけるように見える化が大事。
職人さんから「こんなのできるか!」と言われてもいいんです。なぜできないか?を聞き取って反映することができますから。
「シミュレーション通りに作業してください」ではなく、コミュニケーションをとるためのツールだと思っていて、改善の主役はあくまでそれを使う人。
考えの違う人たちが同じビジョンを持って会話し、改善していくことが大事です。そして改善活動を通して、より良い改善のためにはどのような研究をしなくてはならないかを見極め、技術を進化させることが我々の役目です。
実際、シミュレーションを始めてから、現場での会話が増えたという兼丸所長。
大林組JV 兼丸所長
真っ向から「そのやり方はよくない」なんて言えないですよね(笑)。
自分たちの経験則から、最善だと思う方法でやっている訳ですから。でも、一度シミュレーションで“ラクになる経験”をしてもらうと、話は早かったですね。
現状、シミュレーションはまだ開発途上であり、細かな作業の多くが組み込めていないなど、課題も多い。しかし現場の声を聞き、対話を重ねることで、シミュレーションとの食い違いが見えて、改善点も明確になってきた。
ビルの建築現場など、多様なシーンでも活用が期待されるGEN-VIR。トヨタでは「モビリティとインフラのつながり」をテーマに、懸命に働く人たちをラクにするためにシミュレーションのさらなる改善を目指していく。