本業とは関係ないような取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は、元日本代表も驚いたサッカーロボ!?
仕事中、公園でサッカーをする男
公園でサッカー。就業中だが、もちろん、遊んでいるわけではない。
18個のモーターの動かし方は、シミュレーションでは数千通り。“上手なキック”を追究すべく、実際にサッカーボールを何度も蹴りデータを取り続けた。
また、ロボットに使用するパーツはSDGsの観点から、マントの生地はエアバッグの端材、ネックレスにはベアリングの端材を活用。
PKの的を認識するためには、自動運転車で使われるものと同じ仕組みのセンサーを搭載するなど、クルマ屋ならではの開発が進む。
デザイン面では、水素タンクと発電機を搭載するため、胸板が異常に分厚くなるという課題が。「化け物になりそう・・」とメンバーも頭を抱えた。
しかし、必要な電力量を見極めることで、水素タンクや発電機の小型化に成功。初のお披露目となるデビュー戦に向け、人間らしいボディに仕上げられていく。
激震!首骨折事件
かくして迎えたデビュー戦は、「わくわくワールド」という豊田市×トヨタ技術会の共同開催イベント。「子どもたちにモノづくりの楽しさを体験してもらい、将来技術者になってほしい」という願いが込められている。
ところが本番前日、関係者に激震が走る。リハーサル時に、ロボットの首が傾いていることが判明したのだ。
三木グループ長
ロボットを調べてみたら、樹脂製の首の骨がポキっと折れていました。3Dプリンターでつくるには時間も足りず、“頭なし”でやるしかないのかと途方に暮れました・・
誰もが諦めかけた翌朝、メンバーの一人が木製の骨を持ってきたのだ。なんと自宅リビングの木の机をノコギリで切り出し、自らつくってきたという。
そこからは緊急手術。本番20分前に修復し、子どもたちに披露へ。
当日、会場にはなんと約300人の子どもたちが集結。見事にゴールを決めるPIXIに対し「がんばれー!」「すごい!」と大歓声が響いた。
先進安全技術開発部 石田正穂 主任
トヨタで働いていると、自分たちがつくったものを目の前でお客様に見ていただく場面はなかなかないので、本当に嬉しい瞬間でした。何度も困難や不具合があっただけに、本当に嬉しかったです。
トヨタイムズで過去にご紹介したAIバスケットボールロボット「CUE」も、トヨタ技術会の自由研究が発端だ。今では会社の事業として認められ、さらなる開発が進んでいる。
本業と関係ない研究に、チームで楽しみながら全力で取り組む。そのために会社も、場所、人財、予算を揃える。イノベーションが生まれやすい環境がそこにはあるのだ。
そもそも自動車も飛行機も、あらゆるモノは、非常識に思えるような誰かの夢から生まれてきた。世界の常識をひっくり返すような楽しい何かを生み出すため、これからもモノづくりの挑戦は続く。