プロのラリードライバーが、地元の高齢ドライバーらに安全な運転のコツをレクチャー。その取り組みに込めた想いを取材した。
レッスンの醍醐味は楽しむこと
特設コースを走り終えた参加者たちは、スタート時の緊張も和らいだのか、一様に笑顔。感想を伺うと、こんな声が返ってきた。
「後方確認の重要性が改めて分かった」
「プロドライバーの皆さんがとても丁寧に教えてくださった。安全意識が高まったし、これからも楽しくドライブしたい」
「次回もあったら、ぜひ申し込みたいし、周りにも伝えたい」
ゴール地点で参加者を迎えた新井選手は、「『安全への高い意識を持って運転してくださいね』とお話しすると、すごく良い笑顔で帰ってくれる。これがグッドドライバー・レッスンの一番の醍醐味かもしれません」と振り返る。
新井選手
若いころは動体視力も良いし、判断力も早いと思いますが、やはりだんだん落ちてくるでしょうから、意識的に一つひとつのものを見て、確認する意識を持ってもらうと良いのかなと思います * 。
*内閣府が公表している「令和5年交通安全白書」によると、2022年の交通死亡事故発生件数を法令違反別(第1当事者)にみると、安全運転義務違反が1,334件と約半数を占め、運転操作不適,漫然運転,安全不確認の順番に多い。
レッスン終了後、勝田選手にプロだからこそ伝えられることを聞いてみた。
勝田選手
私たちは、猛スピードの世界で走っている訳ですが、ものすごいスピードのものを注意深く、ちゃんと見て運転しています。その中で見えるもの見えないものがよく分かっています。
ただ、運転に集中できない、余裕がなくなってしまうと、周りが全く見えなくなってしまいます。そういう一番危ない状況を分かっているからこそ教えられるんじゃないかなと思います。
勝田選手たちからは、一般道でも使える技術として「安全確認の徹底」「周囲の状況に注意を払うこと」「次に何が起こるか予測しておくこと」とコツを教えてくれた。
モータースポーツを起点として安心安全なクルマ社会へ
地域への恩返しとして、蘭越町から始まったグッドドライバー・レッスンは、今回の豊田市開催で26回目。参加者は累計で約1,000人にまで拡大した。
その豊田市では、ラリージャパンに合わせて、ほかにもTMFによる児童向けの交通安全展示も開催している(12月24日まで)。市民の間では交通安全意識が高まっているはず。
太田稔彦市長はレッスンの参加者から、さらに安全運転の意識が広がっていくことに期待を寄せる。
「豊田市にとってもありがたいですし、ラリーの世界から交通安全につながっていけば、こんな素晴らしい取り組みはないんじゃないかなと思います。今日参加された方々は、そもそも安全運転意識が高い方です。大切なのは、そういう人たちが、さらに交通安全のスキルを身に付けられて、街中で運転することによって、周りの人たちが影響を受けること。クルマ社会をリードするそういう運転の仕方を率先してもらえれば」
現在は、NPO法人グッドドライバー・レッスンが各地へ赴いて開催しているが、今後はレッスンの枠組みを確立し、さらに全国へと展開していきたいという。
「モータースポーツに携わっているドライバーは、ラリーに限らずたくさん全国にいらっしゃいます。そういった志を同じくする人たちと一緒になって全国でやっていければと思います」
こう語る奴田原選手。モータースポーツを起点として、もっと安心安全なクルマ社会へ。活動の輪が広がっている。