
「私にとっては、ここにいる卒業生229名全員が、『トヨタの子』です。」豊田章男会長が"お父さん"として見送る卒業式。卒業生の感謝と涙が溢れる旅立ちの様子をお届け。

2025年2月17日。澄み渡る青空に涼しい風が吹く中、トヨタ工業学園の卒業式は行われた。会場には229名の卒業生が並び、その保護者と在校生が旅立つ背中を見守った。
今年も出席した豊田章男会長は卒業生に向け、「皆さんがこの学園で学んだこと。それは、自分以外の誰かを思いやる『優しさ』であり、ここまで育ててくださった『ご家族への感謝』だったのではないでしょうか」と問いかけた。
卒業を迎えた今、家族への想いを強く感じている卒業生。「私にとっては、ここにいる卒業生229名全員が、『トヨタの子』です」「どうか今の気持ちを忘れないでいてください」という豊田会長のエールをまっすぐなまなざしで受け取った。
*豊田会長のあいさつ全文はこちら
これまで、学成会の会長が務めていた「卒業生の言葉」は、今年は希望者を募り選考を実施。選ばれた酒井結都さんは、両親に苦労をかけず自立したいという想いで入学を決意。くじけそうになりながらも乗り越えた3年間を振り返り、「お父さん、お母さん、もう心配しないでください」と語る表情に、学園から羽ばたいていく覚悟がにじんだ。
番組では卒業式を迎える直前の学園生活から、式翌日の退寮の様子までを密着。
229名それぞれの想いがこみ上がり、涙と笑顔があふれる模様を、ご覧ください。
一緒に入学、一緒に卒業
トヨタ工業学園の卒業式では、卒業生から家族へ感謝を伝える時間が30分ほど設けられている。実は卒業生は全員、家族への手紙をしたためたうえで卒業式に臨んでいるという。
ここからは、番組におさまらなかったさまざまな学園生のストーリーの端を、覗いていこう。


家族と合流前の、「河合おやじと同じ職場です」と意気込む卒業生に話を聞いた。
家族がインドネシアにいて、会えるのも1年に1回とか、少なくて。会ったときにできるだけ感謝を伝えようと思ってはいたんですけど、ちょっと恥ずかしくて言えない部分もありました。
今日、家族に来てもらっているので、「学園で学んだことは自分以外の誰かを思いやる『優しさ』であり、ここまで育ててくださった『ご家族への感謝』」という、尊敬する会長のお言葉の通り、ちゃんと言葉で伝えないといけないなって思いました。
家族との久しぶりの再会。あちらこちらで盛り上がりを見せる会場。その中で、ひときわにぎわっている団体が。
集まっていたのは野球部の部員たち。中心にいた東本一喜さんと松井嘉希さんは箱を手に持っていた。
監督の二葉祐貴さんと顧問の久野裕介さんへのプレゼントの、顔写真入りコップ。「卒業して離ればなれになっても、飲み物を飲んでいるときに僕らの思い出がよみがえればいいなと思います」と、東本さんは笑顔で語った。
教壇にたった経験がなかったので、指導員になるときは不安もありました。でも私もこの学園のOBなので理解できることも多く、訓練生ファーストで接しようと決めていました。
今回の卒業生は入学時から見てきたので、寂しい気持ちもありますが、とても感慨深いです。
3年前に指導員になり、今年から元の職場に戻ります。一緒に入学して一緒に卒業する、この3年間を忘れません。

睡眠以外をともにした11人へ
高等部の卒業生における女子の人数は、105名中11名。女子生徒にはこの環境ならではの想いがあったようだ。
「女の子だから」って特別扱いされるとかはなくて、みんな一緒に頑張らなくちゃいけない環境で、男女間で価値観の違いがあってしんどいこともありました。
でも、女子の人数が少ない分絆はすごく深くなって…。女子の友だちがいたからこそ乗り越えられたことはたくさんありました。
そんな中島さんを含め、高等部の女子は首からかわいらしい飾りをかけていた。

これは工藤葵さんの母・聡子さんがサプライズでつくったものだそうだ。
11人の女子は、寮でも学校でも、睡眠以外は24時間常に、親以上に一緒でした。
この3年間を一番近くで寄り添ってもらった感謝を込めて、作らせてもらいました。
このサプライズに、女子たちは晴れやかな笑顔を見せた。

この日、卒業を迎えた葵さんからの手紙には「親孝行させてください」という言葉がびっしりと綴られていたという。成長を感じる娘の言葉に、夫の孝一さんとともに涙した。
お父さんとして出席する卒業式
式後の集合写真撮影。豊田会長から「普通の子どもに戻っていいよ」と声をかけられ、張り詰めた緊張感から解放されホッとした表情を浮かべる卒業生。豊田会長は「普通のティーンエイジャーに戻る、あの瞬間が好き」と話した。
富川悠太が、卒業式へ出席し続ける理由を問うと、「お父さんだから」と答えた豊田会長。
富川は「お父さんですので。卒業おめでとうございます」と言われると、「ありがとうございます」と微笑んだ。