知的障害のある人たちにスポーツの機会を提供する「スペシャルオリンピックス」を特集。アスリートだけでなく、すべての人がパートナーやボランティアなどの形で関わることができるとは? これを見れば「スペシャルオリンピックス」の基礎がわかる!
6月12日のトヨタイムズスポーツは、知的障害のある人たちにスポーツの機会を提供する「スペシャルオリンピックス」を特集した。
選手たちにとって4年に1度の晴れ舞台であるナショナルゲーム(全国大会)を取材。さまざまな立場で大会に関わる人たちに、参加する意義や得た気づきを語ってもらった。元トップアスリートたちも感動したという、スペシャルオリンピックスの魅力とは?
アスリートだけでなく、あらゆる人が参加
一般的なスポーツは、選手以外の人たちのほとんどは観戦や応援に回るというイメージだろう。アスリートだけでなく、すべての人がパートナーやボランティアなどの形で関わることができるのが、スペシャルオリンピックスの大きな特徴だ。
スペシャルオリンピックスとは、知的障害のある人たちにさまざまなスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じて提供している国際的なスポーツ組織。複数形で表記されているのは、一つの大会だけではなく、日々のトレーニングを含めた活動全般を指し、日常的にスポーツの機会を生み出すことを意味しているという。
競技会は各地で開かれ、4年に1度の世界大会は来年にチリのサンティアゴで開催予定。ナショナルゲームはその選手選考を兼ねて行われる国内最大規模の大会で、今年は「2026年第9回スペシャルオリンピックス日本 夏季ナショナルゲーム・東京」が24年ぶりに東京で開催された。
スペシャルオリンピックスが重視しているのは「競うこと」だけではなく、「参加すること」「挑戦すること」。すべての選手が表彰され、表彰台の高さに差がないのはその象徴だ。その中で、アスリート一人ひとりの勝ちたいという気持ちも尊重している。
6月5日にトヨタアリーナ東京で行われた、夏季ナショナルゲームの開会式の模様は1:18から。
トヨタとスペシャルオリンピックスの関わり
トヨタ自動車の社員の名刺には、スペシャルオリンピックスのロゴが印刷されている。そして、国内大会や地域のイベントでのボランティアや応援などに社員は積極的に関わってきた。
トヨタは「障害の有無にかかわらず、多様性を尊重する社会を目指す」という理念に共感し、2016年1月にスペシャルオリンピックス日本とナショナルパートナー契約を締結。2018年から25年まではスペシャルオリンピックスグローバルパートナーも務めた。
2018年の調印式で同国際本部のティモシー・シュライバー会長は「すべての人に開かれた垣根のない世界を実現したい」と述べ、豊田章男社長(当時)は「私たち一人ひとりが、本気で、本音でそう思えたとき、すべての人が移動の自由と楽しさを感じることができる世界に近づくことができる」と語った。
スペシャルオリンピックス独自の取り組みが、知的障害のある人(アスリート)とない人(パートナー)がチームメイトとなり、一緒にスポーツをする「ユニファイドスポーツ®」。お互いに支え合いながら競技体験を共有する活動を、トヨタはサポートしてきた。
また、今回の夏季ナショナルゲームにも、トヨタループスからアスリートを派遣しただけでなく、トヨタからもパートナーやコーチ、ボランティアが参加している。
北澤豪と有森裕子「これこそ共生社会」
番組では、スペシャルオリンピックスに参加しているさまざまな人たちに話を聞いた。
まずは、活動の魅力を伝えるドリームサポーターを務めるサッカー元日本代表の北澤豪さんと、ユニファイドスポーツ®アンバサダーである女子マラソン2大会連続メダリスト有森裕子さん。
有森さんは「いろんな人たちがいていい。これだけが勝ちですよじゃなくて、全部を良しと思いつつも、いろんなケースを受け入れる。それを共に一緒にやれることは大事」と、多くの人が参加する意義を語る。過去にスペシャルオリンピックス日本の理事長を務めていたが、任期の終了後もユニファイドスポーツ®に関わりたくて活動を続けているそうだ。
北澤さんは、スポーツを通じてさまざまな人が共生していくシーンを、社会にどう落とし込むかを考えなければならないと述べた。「ユニファイド(スポーツ) がすごい画期的というか、誰が誰だかわかんないですもん。これこそ共生社会だと思いました。混ざっちゃえば、時間を共に過ごしたらフラットになるから。そういった場面が教育でも社会でも少ないし、もっといろんな場で皆さんが一緒に混じり合った方がいい」と話す。
元トップアスリート2人が語る、活動を通じた気づきは13:04から。
未経験でもアスリートと一緒に成長
ユニファイドスポーツ®では、パートナーがアスリートを一方的にサポートするのではなく、対等な関係でお互いをリスペクトしながら競技に臨む。
トヨタ技能者養成所の荒川大己選手は、バスケットボールのパートナーとして大会に参加。もともとバスケの競技経験はなく、4年前のナショナルゲームでボランティアをしていた時に誘われて、翌年からは自らもコートに立っている。
「経験者じゃないからこそ、(アスリートと)一緒に成長したいですね。アスリートとパートナーって名前こそ違うんですけど、そこに垣根はない。得意不得意があるのは、我々も通常生活していても同じで、その延長だと僕は思っています」と荒川選手。20代や30代の人たちにも、ボランティアを入口にしてもっと参加してほしいそうだ。
どんな人にも挑戦できる機会があることを感じさせる、荒川選手のインタビューは19:51から。
「すべての⼈が参加できる社会」に向けて
番組はさらに、陸上の5000mに出場したアスリートの平本将寛選手に密着(24:22 から)。コンディションが良くない中でも走り終えた後の笑顔と、「応援してくださった皆さんにエールを送りたいです」の言葉が印象的だ。
ボランティアへのインタビュー(29:15 から)では、「今となってはボランティアというか、趣味で陸上競技をアスリートのみんなと楽しんでいる」「生活しているところで一緒に練習をやることが、アスリートの成長もそうですけど、地域やボランティアの成長につながる」といった言葉が聞けた。
番組MCの森田京之介キャスターは「トヨタは『障害の有無にかかわらず、すべての⼈が参加できる社会』の実現を⽬指していますけど、全ての⼈が参加できる社会ってどういう社会だろうと考えたときに、その縮図がスペシャルオリンピックスの世界に詰まっている気がしました。豊⽥会⻑もこの世界に触れて、『どちらがどちらを⽀援するではなく、どちらがどちらからも学び合う、⽀え合う、こんな世界がこれから未来をつくっていくんだろう』と語っていましたけれども、まさにみんなが主役になれるこのスペシャルオリンピックスから学べることはたくさんあるなと思いました」と、特集を締めくくった。
竹中七海が見た新しいスポーツの世界
スペシャルオリンピックスと出会って大きな感銘を受けたというのが、今回の取材を担当した竹中七海アスリートキャスター。「これまでの取材の中でも本当に貴重な経験。ここで聞いた言葉はずっと大切にしたい」と振り返る。
新体操の日本代表として2021年の東京大会にも出場した、元トップアスリートの竹中キャスター。現役当時は勝ち負けの世界に生きてきたが、「みんな一緒に楽しめる場があってもいいって、もっと広い世界を見せてもらった。そこに対する視野を広げてくれるし、スポーツの力はもっと可能性があるんだというのを気づかせてくれました」と語った。
竹中キャスターが「自分事として関わることで、学べることや成長できることがすごくある。絶対に生で見た方がいいです」と推奨するスペシャルオリンピックス日本 夏季ナショナルゲーム。6月開催分は終了したものの、9月4日から6日までボウリングや競泳などの競技が開催される。スポーツに参加する新しい形を、ぜひ現場で感じてほしい。
毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2026年6月19日)は、9月19日の開幕まであと3カ月に迫ったアジア競技大会とアジアパラ競技大会を特集する。愛知・名古屋2026への出場をかけた代表争いは、いよいよ佳境に入った。本番と同じ舞台で行われたジャパンパラ陸上競技大会の模様のほか、出場が有力視されているトヨタアスリートの動向をリポートする。ぜひ、お見逃しなく!