トヨタイムズスポーツ
2023.11.01
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パラアルペンスキー森井大輝が巡る 話題のモビリティショー

2023.11.01

「ジャパンモビリティショー2023」をパラアルペンスキーの森井大輝選手が、アスリート/身体障がい/クルマ好きの視点で巡る!

「乗りたい未来を、探しにいこう!」をテーマに、11月5日まで東京ビッグサイトで開催されている「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(JMS)」。前身の東京モーターショーから4年ぶりの開催となり、多くの入場客でにぎわいを見せている。

そんな話題のイベントをパラアルペンスキーの森井大輝選手が訪れた。森井選手は冬季パラリンピックに6大会連続出場中で、計7個のメダルを獲得しているパラアスリート界のレジェンド。下肢に障がいがあり、普段は車いすを使って生活し、競技ではチェアスキーに乗って滑っている。

「アスリート」「身体障がい」「クルマ好き」という3つの視点を持つ森井選手が、未来の多様なモビリティとふれあい、トヨタイムズスポーツでの取材を通じて語った「想い」をお届けする。

「自動運転の手前にある、操ることの楽しさを」

「遠足の前の日並みに楽しみ」とJMSを心待ちにしていた森井選手。思い浮かべる未来のモビリティは、「障がい者も健常者も垣根なく同じモビリティを操作できること」。そこには、以前豊田章男会長から聞いた「区別をしないこと」という言葉の影響があるという。

最初に訪れたのは、モビリティショーを主催する日本自動車工業会による「Tokyo Future Tour」。スタートアップを含む多くの企業・団体のモビリティが集結し、人々と共に暮らす未来の東京の姿を見ることができる。ツアーの体験取材は05:50から。

ツアー冒頭の映像を体験した森井選手は「モビリティ自体がもっと人に近づいて、パーソナルなものになるんじゃないかと思って。良かったのは、“Fun to Drive”が残っていたこと。自動運転の手前の、操ることの楽しさがあると思う」と話す。

障がいのある人の暮らしを広げるモビリティ

Tokyo Future Tourは「Life」「Emergency」「Play」「Food」という4つのエリアに分かれている。「Life」のエリアで出会ったのは、義足モデルの海音さん。スタイリッシュな義足を装着し、ヒールを履きこなしていた。

メルカリが開発した「poimo」は、ソファのような見た目のモビリティだ。片手でレバーを操作すると自由に動くことができ、試乗した森井選手も小回りの良さに感心。「ちょっと喉が渇いたら、冷蔵庫にこれで取りに行ける」と満面の笑みを浮かべていた。「poimo」の体験の模様は11:42から。

義足や車いすなど、人の移動をサポートするモビリティは進化を続けており、階段を上っていく車いすのパフォーマンスも。将来、障がいが重くなると移動が難しくなる不安を抱えていた森井選手だが、「いろんなモビリティが出てくることによって、そういった心配はなさそう。可能性が広がって、逆に早くその先に行ってみたいなと思わせてくれました」と語る。

「Emergency」のエリアを訪れると、けが人を運ぶ担架が自動で動くなど、災害時で活躍するモビリティが登場。「路面が壊れたりすると、段差があるところに車いすはすごく弱いので、走破性の高いモビリティが必要になってくる」と実感を持って話す。遊びやスポーツの楽しさを体験する「Play」のエリアでは、ドローンで撮影した映像を使って空の旅を再現したものを見学。

「Food」のエリアでは、水素エネルギーで焙煎したコーヒーや、食べたものを学習する“歯型“”のロボットを体験。食べ物の硬さや粘性などを学習することによって、介護食の開発に活かすことも考えているという。

ツアーを振り返って、「僕自身は健常者だった頃から比べると、行動範囲が狭くなったり行きたいところに行けなくなったんですけども、未来のモビリティを見ることによって、安心できました。もっと無茶ができると思いました」と笑った。

「小は大をかねる」トヨタの次世代BEV

続いて訪れたのはLEXUSのブース。今回のJMSで話題を集めている次世代バッテリーEVについて、BEVファクトリーの加藤武郎プレジデントから直接話を聞いた。LEXUSブースの取材は27:08から。

「LF-ZC」を側面から見た森井選手がまず気になったのは、クルマのシルエット。「ボンネットが短いというか、前が低い」という印象だ。

LEXUSのBEVが目指したのは「小は大をかねる」ことだという。バッテリーやモーターのほか、エアコンなど、一つ一つの部品を小さくして、クルマの形そのものを変えた。その結果、座席の周囲の高さも下げられ、“半身浴”のような視点で乗ることができるようになった。クルマのフロント側からあらためて見て、圧倒的な視界の広さに驚く森井選手。

自由にカタチを変えてニーズに応える「IMV 0」「KAYOIBAKO」

次はいよいよトヨタブース。「Find Your Future」をテーマに多様なクルマが並ぶ中、スポーツタイプのバッテリーEVである「FT-Se」など、3つのコンセプトカーの展示を巡る模様は32:10から。

「IMV 0(ゼロ)」は、使う人のニーズに合わせて荷台部分を自由に変えることができる。展示されていたのは、後ろが巨大なLEDスクリーンになっているクルマや、ガチャが回せる特典のコーナーと一体化していたクルマだ。

森井選手が考える「IMV 0」の活用法は、日本中のスキー場を回る移動式のチェアスキー教室。「後ろにボックスを置いてチェアスキーの道具を並べて、体験したいというお子さんがいたら、その子の体に合わせてチェアスキーを1台仕立てて、一緒にできたらいいなって思います」と夢を語った。

「KAYOIBAKO」も、自由度の高さが魅力のクルマだ。バッテリーEVの特性を活かした広い車内空間を、物流用やキャンプ用などの様々な用途に応じて変えることができる。森井選手は「自由度が高くていいですね。道具を積んでスキー場に行ったり、家族とキャンプなんかも」と話す。

アクセルやブレーキも手元に集約した「NEO Steer」の可能性

最後に訪れたのが、森井選手が開発に携わった「NEO Steer」のコーナー。先行デザイン開発室の渡辺義人室長が加わり、手元だけで運転可能な次世代のステアリングを紹介した。

「NEO Steer」が装着されたランクル250に森井選手が乗り込み、自ら操作方法を解説する。足元のアクセルやブレーキのペダルをなくして、それらの操作をハンドルに集約。ハンドルを握りっぱなしにする必要はなく、基本的な運転は片手だけでも可能になった。

森井選手が従来使っていた手動装置は、左手がアクセルとブレーキ、右手がハンドルで、長時間の運転では疲労が大きかった。その話を豊田会長にしたのがきっかけで、「NEO Steer」のプロジェクトが始動。「ちょうど1年半ぐらいで、それが目の前にできた。早く実用化してほしいと思っています」と語る。

渡辺室長は「我々は福祉車両みたいな感覚でいたんですけど、もっとカッコよく“Fun to Drive”でやっていくうちに、実はこれが健常者や誰にとっても楽しくてうれしいものになるというのに気づかせていただいた」と話す。

この新しいステアリングをゲームのコントローラーとして使用して、同行していた森田京之介キャスターと森井選手による対戦も実施した。首都高を走るタイムを競い合った結果は、森井選手の圧勝だったが、初体験の森田キャスターも「指先でブレーキができるのは本当に楽ですね」と運転しやすさを実感していた。

「NEO Steer」の紹介は39:08から。

もっといいクルマづくりとスポーツの関係

森井選手はこれまでもチェアスキーの開発をトヨタのエンジニアと進めてきており、「改善したものが僕の想定をはるかに上回るのは、今回のNEO Steerもそうでした。モノを作る時には、思っていることをしっかり伝えないと、いいモノができない。言いづらいことも言って、よりいいモノができるように心がけています」と話す。

それを聞いた森田キャスターは「森井さんがスポーツという勝負の世界にいるからこそ、妥協のないやり取りがあって、それがもっといいクルマづくりにつながっているのは、トヨタとスポーツの結び付きをすごく感じさせてもらいました」と語った。

「1つのモビリティを障がい者でも健常者でも使える時代が来ると、すごくうれしいなと思います。カッコよくなるほど使いやすくなって、いろんな人が使ってみたいって思えるんじゃないかなって」と体験取材を締めくくった森井選手。撮影を終えると、さっそく会場に戻っていった。

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