1年後のパリを目指すトヨタアスリート大集合スペシャルの後編では日本人トヨタアスリートが集合。
アスリート5人が集まったスペシャルトーク企画、トップアスリート同士ならではの表現が飛び交うひな壇トークは必見!
9月8日のトヨタイムズスポーツは、1年後のパリを目指すトヨタアスリート大集合スペシャルの後半戦。5名の日本人アスリートをスタジオに招き、練習法や競技の裏側などをテーマにトークを展開した。
豊かなボキャブラリーで、身体の感覚やメンタル状態を言語化する選手たちの深い表現力には驚くばかり。特に視覚障害者柔道の半谷(はんがい)静香選手が繰り広げる「半谷ワールド」は、理論派の選手たちも聞き入っていた。
アスリートたちの「忘れられない瞬間」
世界各地のトヨタアスリートのインタビューやメッセージをお届けした前回放送に続き、日本人選手らがひな壇に座ってのトーク企画。今回は東京大会の女子バスケットボール銀メダリストの三好南穂さん(スポーツ強化・地域貢献部)が進行役を務めた。
参加したのは、ウィンブルドンでダブルス準優勝の車いすテニス・三木拓也選手、リオと東京の2大会連続出場中の視覚障害者柔道・半谷静香選手(トヨタループス)、競泳元世界記録保持者の渡辺一平選手、今年4月に入社した7人制ラグビー日本代表の谷中樹平選手、パラ陸上リオ2016銅メダリストの芦田創選手の5名。
最初に、オリンピックやパラリンピックを経験済みの選手たちから、「忘れられない、あの瞬間」と題して、出場時のエピソードが披露された。トークは08:23から。
柔道が「無限の計算式」である理由
「自分の競技を別の言葉で表すと?」 というテーマへの回答は、三木選手が「シャトルランチェス」、三好さんが「チェスマッチ」、谷中選手が「7分間タックルありの鬼ごっこ」、芦田選手が「私のジャンプ披露会」。渡辺選手は当初「誰が一番水と仲良くなれるか」だったが、他に合わせて「水とチェス」に変更して説明する場面も。
半谷選手の答えは「無限の計算式」。その理由を「柔道って力をぶつけ合ってる競技かと思ってたんですけど、実は力の向きが緻密に計算されていて。1歩出す足、引く手のすべてが、力の漏れがないような位置づけになるんですね。柔道用語で襟の手を立てるとか、引き手を返すとか言うんですけど、 それを巧みに使いこなすことで、技をかける力の道筋ができてくる。相手が押してくる力と自分の押す力の交点で、技に入ることができます」と話した。
「公式を教えてくれるのは指導者で、アレンジするのは選手。答えに行く方法は何でもいい。答えが1になる計算式は、0+1でも1×1でも1÷1でもいいのが柔道かなって思ってます」と語る半谷選手。
三木選手は「もう1時間くらい、お話聞きたい」、視聴者もチャットで「半谷さんの言葉深い!!」とコメントしていた。
動作などを言語化する習慣のある半谷選手だが、磯崎裕子コーチからは「柔道は畳の上のサーフィン。自然の力に抗わずに、そこでの最善を探し出す」と言われ、実際にサーフィンにも挑戦したという。「コーチは長い時間をかけて私の動きを作り上げてくれていて。『見えないからできないんじゃなくて、私だからできない』という理由を必ず探してくれる」と感謝を伝えていた。
目を使わずに技を身につけるための練習方法
半谷選手の特殊な練習法も明かされた。動画やコーチの手本を見ることができない彼女の練習スタイルは「触る・感じる・試して、話す」 の3ステップ。まず、コーチの体に触れながら動作を確認していくという。
「1ステップ目の『触る』は、1コマ1コマ背負い投げという動作を分割して、シーンごとに手や肩の角度を確認していきます。軸と力点・作用点の場所を確認するのを基本にして、パラパラ漫画みたいな動画にしていくイメージのフレームを作ります。どういう力の向きで行われているのかを作る工程が『感じる』です。実際に私に技をかけてもらい、緩急や強弱、タイミングなどを感じて確認します」
最後は、実際に半谷選手が技を試して、そのフィードバックをコーチに話してもらう。「競技の中で起こるエラーは再現性がないから、コーチはフィードバックにすごく苦労する。 視覚障がいの選手であれば、どのエラーなのかを本人が認識していない限り指導が成り立たないので、『試して、話す』 が非常に難しいと思っています」と説明していた。半谷選手の丁寧でわかりやすい説明は30:05から。
記録スポーツならではの難しさ
選手同士の質問で盛り上がったのが、記録スポーツの陸上や競泳で、ベストなパフォーマンスを大一番で発揮するための調整方法。芦田選手は「メンタリティーの部分がすごく大事。より遠くに跳ぶっていう、日々の生活の中でそれを選択して生きていけてるか」、渡辺選手は「記録のスポーツはまだまだ奥が深いし、分かってない部分が多い」と語った。興味深いやりとりは39:07から。
日頃から「まっすぐコレクション」をしている半谷選手からは、見えなくてもまっすぐ泳ぐための方法を質問。渡辺選手は「目をつぶって泳ぐ選手が大半」と説明し、左右の動作を均等にするイメージで泳ぐようにアドバイスした。
「目をつぶってできること」つながりで、衝撃写真を放送されたのが三好さん。得意の3ポイントシュートを打った時の写真はいつも目を閉じていて、目隠しをしていても決められるそうだ。オールスターでは、まぶたの上に目を描いた状態でコンテストに参加。その写真が公開された。
車いすテニスとモータースポーツの共通点は
ほかにも、大会では1日に3試合こなす谷中選手のマインドセットの変化などが話題に。三木選手がコートの状態に合わせて車いすのキャスターを調整していることを聞いて、森田京之介キャスターは「モータースポーツに似ている」と指摘していた。三木選手による調整方法の解説は25:45から。
愛車自慢コーナーでは、三好さんが銀メダルのごほうびであるレクサスNXの写真を披露。「皆さんメダル獲れば乗れます!」と語り、選手たちにとっては最高のモチベーションになったようだ。
各職場からの応援メッセージ動画を見て、パリへの意気込みをあらためて語った選手たち。トヨタファミリーのサポートはもちろん、異なる競技の仲間からもらったヒントやパワーが、メダルへの大きな原動力になるだろう。
毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2023年9月15日)はトヨタが全日本ラリー選手権・WRC・WECと1-2フィニッシュを決めた世界各地の3レースを振り返る特集。ぜひ、お見逃しなく!