コミュニケーションはなぜ低調に終わってしまうのか。対話を諦めさせない職場をつくるには? 全員活躍を掲げるトヨタの労使が交わした議論とは。
対話が生まれる場所
宮崎副社長
何らかの声がスピークアップで上がっても、その声だけで会社は判断するわけではなく、人事部の皆さんを中心にいろいろと調査を行って、何が事実なのか(を突き止めること)がスタートになります。
我々がそういうことを、ひょっとしたら伝え切れていない、伝わっていないんだとすごく感じました。
宮崎副社長はさらに、「異動や処遇の透明性が見えていないので、より現場で不安をあおっているのかもしれない」として、労使で解決策を探っていく姿勢を見せた。
また、コミュニケーションが低調に終わってしまう現状に対しては、「人への投資」の積み増しを念頭に「(職場のニーズに沿った)適度なスペース、話が弾みやすいスペースを考えなきゃいけない。そういう声を皆さんからいただいて、今回、追加でつけた費用をより効果のある形で使っていただきたい」と呼びかけた。
「話が弾みやすいスペース」について、上郷・下山工場の斉藤富久 工場長は、若手が中心となって休憩所をつくったことでコミュニケーションを生み出した事例を紹介している。
斉藤 工場長
「みんなで好きなように自分たちがゆっくりくつろげる休憩場をつくってください」と言いました。
自前で壁紙を貼ったり、机をリノベ-ションしたりすると、そこに小さなコミュニケーションができて、それが非常に良い効果を生みました。
何か一つでも楽しいことをつくってあげればいいのかなと思います。
そこから始めて、どんどんいろいろな課題を潰していくのが、うまくいくステップなのかなと思っています。
斉藤工場長の話を受け、「直接会うことの大切さをいかにわかってもらうか。いろいろ仕掛けたい」と手を挙げたのは北米本部の小川哲男 本部長。組合からの報告にショックを受けたという。
心を通わせる仕掛けを
小川本部長
teamsは便利なんですけど、やっぱり2Dで、実際のふれあいがないですね。ですので「直接会うことで、いろいろ会話が生まれるよ」ということを感じてもらう場づくりをしていきたいと思います。
生産現場も、先ほど斉藤さんが良い事例を話してくれました。心を通わせる方法はいろいろあると思います。施設、あるいは、職場の環境を良くしていくのはもちろんやっていきますが、気の通い合うような仕掛けもやっていきたいと思います。
スライドで示していただいた中で、対話への諦めがありました。これを見たとき、ショックを受けました。対話は諦めちゃいけないし、諦めさせてはいけないと強く思っていろいろな仕掛けをやっていくべき。
職場環境だけではなく、マインドセット、気の持ち方をどうリフトアップしていくか、みんなで労使の壁を越えて考えていくべきではないかと感じました。
対話を諦めさせてしまう背景にあるのは、ハラスメントへの恐れだけではない。特に高負荷な現場では、足元の業務や短期的成果を優先するあまり、人材育成やめんどう見が後手に回っているという実態も伝えられた。