誰のためにTPSに取り組むのか。どのようにCO2排出を減らすのか。トヨタの向かうべき方向が見えてくる。
【SDGs】Woven Cityという実証実験の場でSDGsを加速させる
カーボンニュートラルをはじめ、SDGsのさまざまな取り組みを進めていくなかで、大切なのは「自分以外の誰かのために」という考え。人事担当の桑田執行役員は、こう話す。
桑田執行役員
SDGsとカーボンニュートラルの考え方はリンクしています。現場では、省エネは相当進んでいますが、事技系職場では電気をこまめに消すなど、まだできていない部分が自分自身も含めて多くあります。
今回の話合いを機に「誰かのため」「地球のため」にという観点で進めていくことが必要だと思っています。
これは創業以来大切にしてきた、豊田綱領の思想でもある。
今後、「CASE」と呼ばれる技術革新でもSDGsに大きく貢献していくのだが、トヨタはそれらの実証実験を、Woven Cityというリアルな街で進めていくことができる。
トヨタのあらゆる取組みがヒト中心のWoven Cityで進化し、誰一人取り残さない未来を目指していく。クルマが道に鍛えられるように、社会の課題解決についても、リアルな街で鍛えていけるのだ。
さらに組合からは、カーボンニュートラルと日本のモノづくりの関連性についても、意見が述べられた。
組合・小野副委員長
SDGsやカーボンニュートラルについて議論を深めてきましたが、まだまだ一人ひとりできることがあると気付きがありました。
カーボンニュートラルのようなテーマを労使で議論したことは、初めてだと思います。
これまでは、コスト競争力を突き詰めることに、まい進してきましたが、各国のエネルギー事情もあり、カーボンニュートラルの観点で取り組まなければ、(コスト競争力だけでは)選ばれない時代が来ていると感じました。
トヨタだけではなく、550万人の仲間と日本にモノづくりを残すために必須であると理解できました。
また、TPSの議論にもあったように、トヨタはまだまだ仲間のためにできることがあると感じました。その進化系がWoven Cityの取り組みにつながっていくのだと感じました。
本日のTPSとカーボンニュートラルについての議論は親和性の高い話だと思います。カーボンニュートラルを進めるために、TPSが必要という解釈もできると思いました。
また、社長のアドバイスもあったように、今がスタートであり、ここから徹底的にやり続けなければ、せっかくの議論も意味を持たないと思います。
責任を持って、労使それぞれが職場に伝えていきたいと思います。
【SDGs】今後3年で徹底して進める「2本柱」
議論も終盤に差し掛かり、桑田執行役員からトヨタのSDGsとして、今後徹底して取り組むべき2本柱について説明がなされた。
桑田執行役員
第1回の話し合いで豊田社長から「自動車産業は『みんなで一緒にやってきた産業』であり、これからは、550万人という仲間、『もっと多くのみんなと一緒にやっていく産業』だからこそ、お互いに『ありがとう』と言い合える関係が大切」という言葉がありましたが、それを実感した話し合いでした。
では、550万人の仲間のために何をやっていくのか。まず、これまでも、これからも私たちのベースは変わらず、「もっといいクルマづくり」を通じて、550万人の仲間に貢献していくことです。
そのためには、「デジタル化」と、本日議論をした「カーボンニュートラル」に取り組む必要があります。
これらは、100年に一度の大変革の時代に、550万人が「みんなで一緒に」やらなければできないことです。
「デジタル化」と「カーボンニュートラル」において、私たちが自動車産業のリード役を務めることができれば、550万人の仲間から、「トヨタありがとう」と言ってもらえるかもしれません。
多くの仲間を1つにつなげることで、仲間の仕事も、もっと楽に、もっと楽しくできるはずです。
結果として、SDGsの考えである「誰一人取り残さない」に一歩近づくことにもなると思います。
そのため、「デジタル化」と「カーボンニュートラル」を「2本柱」と位置づけ、3年の区切りを設けて、徹底的に進めてまいります。
今回の労使協議会は、この2本柱を、本気で実行に移す「スタートポイント」にしたいと思います。
組合からは、SDGsを加速させるために、企業内組合の意義についても言及された。
組合・光田書記長
これまでの議論に加えて、先ほど話があった「デジタル化」と「カーボンニュートラル」の2本柱で、改めて今後重点的に取り組む方向が見えてきました。
両方とも「これをやればよい」という簡単なものでもなく、すぐに答えが見つかるものではありませんが、労使で、みんなで進めていきたいと思います。
組合としても、これまでは産業レベルの大きな課題は「上部団体にお任せ」と考えていた面もあったと反省しています。
今後は、企業内組合の立場の自分たちだからこそできることは何かという観点を持って取り組みを進めていきたいと思います。
「誰一人取り残さない」ということに近づくためにも、組合が果たす役割は重要と認識しています。
まず、自分たちが進んで動くという姿勢を大切にし、「一緒にやろう!」と仲間の輪を広げていきたいと思います。
話し合いの最後に、議長の河合はこう述べた。
河合議長
本日まで3回の議論を通して、本音のいい会話ができたと思っています。
改めて、昨年から現在も続くコロナ禍での頑張りも含め、組合、ならびに組合員の皆さんには厚く感謝を申し上げます。
先ほど桑田執行役員から話のあった2本柱は、一人ひとりが意識し、行動につなげてほしいと思います。
世間では、カーボンニュートラルは、EV化を進めれば達成するかのように言葉が飛び交っています。
その点については、皆さんには今日、正しく深い理解をしていただいたと思います。ぜひ、これを全員に徹底していきたいと思います。
トヨタのモノのつくり方は「TPS」、理念・心は「トヨタウェイ」です。その軸をブラさず、進化させることが我々の作法だと思っています。
徹底的にムダ・ムラ・ムリを排除することと、質・量・コストのつくり込みが、カーボンニュートラルの一つです。
全ての人がそれぞれの立場で、「誰かのため」「仲間のため」に行動することが、人の成長や働きがいにつながると考えています。
我々550万人の仲間に貢献していくために、2本柱を進める上では、一人ひとりが「自分に何ができるのか」を考え、行動に移していくことが大変重要です。
労使協議会が終わっても、労使専門委員会や労使拡大懇談会などの場で引き続き、議論していきたいと思います。
続いて組合から、本日議論されたTPSをみんなの共通言語にしていくことなどが語られた。
組合・西野委員長
カーボンニュートラルのような、トヨタだけでは解決できない大きな課題に向き合うには、産業全体の力の集結がますます重要です。また、産業内には戸惑う仲間や、方向性への理解も余力がない仲間もいます。
会社と方向性や取り組みを確認しながら、組合として、同じ産業の仲間の困りごとを真摯に受け止め、解決に向けて一緒に取り組むことで、仲間づくりを加速させていきたいと思います。
そのためにも、本日議論したTPSは非常に大切です。
特に技能系職場においては、自分たちの職場をよくするためのものと叩き込まれてきましたが、その根本にある考え方は、「一人ひとりに本当に付加価値のある仕事をしてもらう」という、人を幸せにするためのものです。
「カイゼン」という言葉は、効率化という意味合いで広く世間に知られていますが、TPSを「誰かのために」という根底にある思想も含め、トヨタだけでなく、みんなの共通言語にしていきたいというのが私の想いです。
そうなれば、550万人の産業の仲間と一緒に行えることが、より広がると考えています。
自分たちが置かれている環境が、決して当たり前ではないということと、感謝の気持ちを忘れず、それぞれの職場で仕事のやり方を変えることで、より仲間に貢献していきたいと思います。
そのためにも、トヨタで働く一人ひとりを、職種や入社形態などで一律に考えるのではなく、多様な価値観を理解し合うことで、もっとチャレンジできる環境をつくっていきたいと思います。
先回の労使協で、「組合員一人ひとりがやりがい、幸せを感じて働いてほしい。そうして働く一人ひとりの頑張りが、お客様や仲間、社会全体の幸せにつなげていきたいと強く思っている」と申し上げました。
本年の労使協で、それにつながる議論ができ、大変ありがたく思っています。
過去には、労使の立場からの主張のぶつけ合いに終始する面もありました。この2年間、どのように共通の基盤に立ち、労使の話し合いをするか、悩みながら取り組んできました。
社長から第1回労使協で、一昨年秋に確認した、「会社は従業員の幸せを願い、組合は会社の発展を考える」という労使の「共通の基盤」について言及がありました。
本年は、組合としても会社のことを考え、労使が対立軸ではなく、同じ方向を向いて、本音の議論ができるようになってきたと感じています。さらに一歩、労使の関係を前に進めることができたと考えています。
この先、未来に向けて取り組むなかで、さまざまな課題がでてくると思っています。それは、初めてのものや、答えがない課題もあると思っています。
これまでの3回の労使協で、大切だと確認しあった「相手を思いやる本音のコミュニケーション」を続け、お互いの考えや実態を伝えあい、労使で一緒に進めていきたいと思います。
組合員のこの1年の頑張りは十分理解いただいており、我々の姿勢も受け止めていただいていると思っています。
3回にわたった本音の話し合い。次回は3月17日、会社より回答が申し渡される。