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トヨタ春交渉2021 #2 働きにくさの壁を、壊せ

労使交渉 2021.03.03 UPDATE

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3月3日。トヨタ自動車本社で第2回労使協議会が開かれた。先週1回目の議論では、仕入先や販売店に出向する社員の実体験を通じて、自動車産業で働く550万人の仲間のことを、“分かったつもり”になっていないかという問題意識を共有。一緒になって競争力を高めていく重要性を確認した。

今回は、リモートも含め、労使双方から約380人のメンバーが参加する中、まずは議長の河合から、2つのキーワードが示された。

河合議長

550万人の仲間への貢献にあたっては、トヨタで働く一人ひとりが、仲間から頼りにされる存在となるために「成長」し続けること。そして、「全員活躍」が必要不可欠です。

そこで今回は、トヨタで働く一人ひとりの「成長」と「全員活躍」をキーワードに議論をしてまいりたいと思います。

河合議長

【若手】の成長を阻害する要因とは

先陣をきったのは組合側。技能職と事技職、それぞれの若手の悩みが紹介された。

「育成方針・仕事の付与が一律で、ステップアップしづらい」「部署間で情報格差があり、仕事を進めづらい」「調整業務が多く、お客様のうれしさにつながっているか実感できない」「部品開発の外注化で、図面に落とし込む技術が仕入先にかなわない」という生々しい悩みだ。

多くの若手が、もっとチャレンジしたい、成長したいと思っているものの、阻害される実情があるという。従来の枠を超えて、若手が自らの意志でチャレンジできる機会を増やしてほしいという声が上がった。

それを受け、会社側の海外営業担当・中田統括部長が話す。

中田統括部長

昨年より、やめかえ(業務改廃)を進める中で、上位層の承認を得るための調整業務をやめ、カンパニー長、地域本部長が直接対話をして意思決定する枠組みへの変更を進めてきました。

若手には、よりお客様を知り、現場を知り、成長を後押しするため、海外現場への配置を加速し始めております。

まだまだ道半ばですが、「現地・地域のためのバックオフィス」としての役割を明確にしながら、事技系のTPS(トヨタ生産方式)、やめかえをしっかり進めて、さらに若手の海外現場への配置を進めたいと考えております。

新興国を中心に、まだまだ若手が現地で活躍するフィールドはあります。新たな活躍の場を加えながら、育成とローテーションをうまくかみ合わせて進めていきたいと思っております。

中田統括部長

続けて、GAZOO Racing Companyのプレジデントを務める佐藤執行役員。「もっといいクルマづくり」のために業務を細分化するのではなく、クルマ全体を俯瞰することの重要性を実例とともに紹介した。

佐藤執行役員

自職場やカンパニーの中で完結する仕事が減っているのではないかと感じています。

クルマづくりそのものも複雑化しており、経験のある先輩たちでも何をどうすべきか、確信をもって言えない時代になってきていると思います。

その中で、参考になるのが、GRヤリスの開発事例です。 「レースで鍛えて、壊しては直し、そしてまた鍛える」。まったく今までと違うやり方です。

今までは壊れないことを証明して終わっていましたが、「壊して直す」ところまでやる。するとTS(トヨタスタンダード:トヨタが定めた設計基準)が守ってくれない世界の課題が見えてきます。社長が体を張って、具体的に示していただいた新しい開発のやり方だと思います。

レースでは想像もしなかったことが起きます。多くの問題は、実はその場では原因がわかりません。

TSにのっとって問題解決をする決められたパターンの仕事ではなく、原因がわからない問題に、全員が当事者となり、向き合わなければ解決しません。

このようなクルマづくりが、我々がこれからやっていかなければならない一つの形だと思います。

自分の担当している仕事やクルマが、レースに直結していない場合でも、こうした姿勢で問題に向き合い、お互いにクロスファンクショナルに仕事をしていくことで、未知の課題と向き合い、前に進んでいく。

このようなやり方を通じて、不安を抱える若手と先が見えない先輩が一緒に悩んで、前に進んでいく働き方になっていくのではないでしょうか。

佐藤執行役員

技術を担当する前田執行役員も続く。

前田執行役員

過去十数年の右肩上がりの時代に、とにかくクルマを出すことを優先してきた時期があったと思います。

当時、「手の内化」されていた技術も、工数補填という観点で外注化していきました。承認図の数も増えていきました。同時に、組織も細分化され、いつの間にか「手の外化」してしまいました。

それなりに潤沢な開発費もあり、恵まれた環境だったからこそ、そのような状況を生んでしまいました。良かれと思って外に出した結果、原価低減力を含めた競争力を失ったと思っています。

じわじわと時間をかけて、手の外化してきました。今度は、その逆の道を歩むことになるので、短期では難しいと思っています。

ただ、足元では、少しずつ、手の内化に向けた動きをつくっています。

例えば、エンジンECUの開発では、過去にソフト開発の内製を担当していたベテランと、ほとんど経験のない若手がタッグを組み、一部車種の内製化に取り組みました。

当然、その若手はすごく勉強したそうです。

結果は、5,000時間かかっていたソフトをつくる作業が1,000時間に、2週間かかっていたエラー解消が1日でできるようになり、開発リードタイムの短縮につながる競争力強化につながったとの声が出ています。

「手の内化」は、550万人に対して十分な仕事をするためにも、競争力を強化していくためにも、非常に重要な要素だと思っています。

メンバーは非常にいい目つきでした。自分だけが担当している仕事なので、会社やお客様に貢献できていると喜びを感じていました。

このような働き方を、一層進めていくことが、世の中やお客様に貢献していくことではないかと思っています。

前田執行役員

どうすれば若手がもっと挑戦でき、成長できるのか。それを阻害する要因を徹底的になくしていこうと労使双方で話し合う中、議長の河合から、今後目指すべき方向について言葉が出た。

河合議長

トヨタほど恵まれて、たくさんの教育を受けられる会社はないと思います。しかし、いつの間にか、一律教育となってしまいました。

すごく恵まれている反面で、昇格における年齢制限など、さまざまな人事制約があります。これでは、自分から成長しようとするチャンスの芽を摘んでしまいます。

私自身、このようなことを経験してきたため、昨年、(総務・人事)本部長を担当した際には、専門技能教育や昇格の年齢制限の撤廃を実施しました。

このようなことを進めないと、次のチャンスに向かう意欲が落ちてしまのではないかと考えてまいりました。

また、以前は、許可がないと技術部(構内)に入れませんでした。技術や生技など、勉強することはたくさんあります。社外に行かなくても、トヨタの中で勉強する機会はたくさんあると思います。

自分から取りに行く、やりに行く姿勢が大切だと思います。自由な場で勉強ができるようにしないと、みんながやろうとしていることが、尻すぼみになってしまいます。

みなさんの意見をたくさん集約して、不必要な制約を撤廃し、意欲ある人を育てていきたいと思っています。

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