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2023.04.12

従業員から経営陣へ直球質問 NGなし、忖度なしの一問一答

2023.04.12

メディアより一足早く行われた従業員向けの方針説明会。そのQAセッションは台本なし、NGなし、忖度なし? 数々の質問に新体制の8人が本音で答えた。

抵抗勢力に「こんにちは」

この日の方針説明会は、会場に来ることができなかった従業員のために、ライブ中継も実施。

ここからは、富川キャスターによって各地から届いた質問が紹介された。

――挑戦について邪魔してくる勢力への対処はどうすればいいですか?

富川キャスター

これは社内のことなのか、社外のことなのかわからないですけど。

佐藤社長

挑戦することは、今までの仕事の仕組みとか、やり方を変えるということなので、変わっていくことに対する抵抗感はどうしても持ちやすいですよね。

それから、ある立ち位置から見たときには正しくても、反対から見ると実はネガティブな要素があったり。

でも、多分同じこと言っているんですよ。いいクルマをつくりたいだけなんですよ。

だけど、相手の気持ちを思いやれないでいると、「何でわからないんだ。抵抗勢力だ」となっちゃう。

今のトヨタって「Youの視点」で、全体観をもってものを見ましょうと思い始めている。だからクルマ全体で見たときに「本当に良いことは何か」と考えれば、実は邪魔してないかもしれない。

そういう人って実はめちゃくちゃ熱いパッション持っていたりするので、いったん味方になったら、ものすごいパートナーになれる。

みんなで相手の立場を思いやって、発言すると良くなるかなって。

僕と中嶋さんなんか、クルマづくりの考え方はあんまり合いませんからね()

中嶋副社長

合わないんですよ。よく喧嘩もしますね。

だけど、「どのお客さんに、どんなものがつくりたいんだ」とディープに話していくと、「佐藤さんが言っていることは、そういうことだったのか」、「中嶋がやりたいことはそういうことだったのか」と会話ってつながっていくんですよ。

ですから抵抗勢力がいてくれるっていうことに対して、まずは「ありがとう」じゃないかな。自分に対峙する人がいてくれて、(想いが)共有できたときには、そのパワーが2倍にも3倍にもなるので、まず抵抗勢力にお会いになられたら「こんにちは」から始めていきましょう()

富川キャスター

確かにチーム経営ですから、佐藤新キャプテンのもと、どういう経営をチームでしていくのかを見ていくだけでも、自分の身の回りで意見が違ったり、なかなかうまくいかないなって思ったときの参考になるかもしれないですね。

次にワクワクするクルマは?

――去年はクラウン、プリウスととってもワクワクしたクルマが出てきましたが、今年も来年もワクワクできるクルマ出てきますか?

サイモンCBO宛に届いたこの質問。クルマ好きなトヨタ従業員なら誰もが気になるところだ。

「どこまで言える?」と両隣の執行メンバーの顔を見回すサイモンCBO。富川キャスターから「言える範囲で」と促されると、「もうたくさんあるんですよ」と切り出した。

「〇〇(車名)が今年出ますね。これはカッコいいですよ」、「〇〇(車名)も出ますね。これもねカッコいいんですよ」、「あとですね…」と次々飛び出す車名。

ひとしきり語り終え、「大変大きな一年になると思います。楽しみにしてください」と会場を大いに沸かせた。

これには長田CCO、新郷CPOも顔を見合わせ「全部言っちゃった」と苦笑いだった。

長田CCOからのリクエスト

最後の質問は、これまでさまざまな場面で「クルマづくりは楽しい」と語ってきた佐藤社長に向けた夢のある内容だった。

――もしお金をいくらでも使っていいとするんだったら、どんなクルマをつくりたいですか?

富川キャスター

モビリティという意味での質問だと思います。未来に向けて恒治さんいかがでしょう?

佐藤社長

お金、というよりは、本当に自分が愛してやまない、操る感覚にすごく従順に応えてくれるクルマっていうのを、自分の想いだけでつくってみたいっていうのはありますね。

他のどこにもない、“この一台”みたいなものは、もしお金がたくさんあって、つくれるのだったらつくってみたいなと思いますね。

この日の午前中に行われた入社式では「大切な日の思い出の真ん中にクルマがあってほしい」「クルマ屋の一員となったことを感じてほしい」という佐藤社長のアイデアで、役員の愛車を展示していた。レクサス、クラウン、カローラなどなど、新チームのメンバーそれぞれの“この一台”がずらり。

佐藤社長

クルマ好きが多い会社になってきていると思うんです。だから本当に多くの人が楽しいと思えるクルマをつくり続けられるようにしていきたいなと思っています。

長田さんなんか本当はスープラじゃないのを持ってくればよかったのに。

どうやら長田CCOには、トヨタ以外の愛車があったようだ。それが明かされることはなかったが、マイクを向けられた長田CCOから佐藤社長と中嶋副社長へ、まさかのリクエストが。

長田CCO

(エンジニアではない)自分はつくれる立場にないので、これは佐藤さん中嶋さんにお願いですけど、オープンカーつくってください。ちょっとトヨタにはそういうクルマが少ないので、ぜひよろしくお願いしたい。

本当はそれ(オープンカー)を持ってきたかったんですけど、バッジ(ブランド)が違うんでやめました。

長田CCOのお願いに、会場からはこの日一番の拍手が起きた。

1時間ほどに及んだQAセッションは、盛況のうちに閉幕。最後に「新体制の人となり、考え方、雰囲気みたいなものをお伝えしたいと思っていました」と語った佐藤社長。従業員との距離は、確かに縮まっているように見えた。

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