水素エンジンでの6年目の挑戦となった、2026年のスーパー耐久・富士24時間レース。今年は超電導技術を用いた世界初となる挑戦を行っていた。
2026年6月5日から7日かけて富士モータースポーツフォレストで行われたスーパー耐久シリーズ(S耐)第3戦富士24時間レース。
国内で唯一の24時間レースとして、大きな盛り上がりをみせ、今年はおよそ6万4900人のファンが訪れた。
この大会に、2021年から水素エンジンで挑戦を続けているのが、水素エンジンGRカローラ。
将来の市販車両への水素エンジンの応用を目指し、技術開発の場として挑戦を続けている。
6年目となった今年は、過去最多となる483ラップを記録した。
その大きな要因の一つとなったのが、今年新たに導入した「超電導液体水素ポンプ」だ。
2023年5月に構想を発表し、2025年11月のS耐最終戦でお披露目された技術を、世界で初めてレース車両に導入したのだ。
走りについても、ドライバーからは「ガソリン車と同じ会話ができ、完全に走りのセッティングに集中できるのがすごく嬉しい」という声も上がるなど、確かな進化を示したこの技術。
その詳細と、レースを通して見えてきた課題について紹介する。
液体水素エンジンと高相性の超電導技術
超電導技術とは、極低音の環境下で電気抵抗がゼロになり、電力損失なく電流が流せる革新的な技術だ。
今回、この技術に目をつけた理由は、水素エンジンGRカローラの燃料の特性にあった。
レースで使用する燃料の液体水素の温度は、-253℃。
これは極低音環境に非常に近く、超電導技術に適した環境だったのだ。
では、超電導液体水素ポンプを導入することでいったいどんなメリットがあったのか。
1番のメリットは、燃料タンクの容量が拡大したこと。(上図①)
これまでは、モーターなどの周辺機器はタンクの外に配置されていたが、超低音の液体水素の中にモーターを設置する必要があるため、タンク内に搭載。
これによってスペースが創出され、タンク容量を1.3倍以上拡大することに成功した。
さらに、モーターが超電導化されたことで小型・軽量になったことに加え、タンク内に搭載したことで低重心となり、ドライビングの安定につながったのだ。(図②)
そして、入熱源となっていたフランジもなくなったことで、タンク内の水素が温まり気化するボイルオフ量も低減され、燃料効率の改善も期待できる。(図③)
水素エンジンプロジェクトを統括するGR車両開発部の伊東直昭主査は、この超電導液体水素ポンプについて、これまでの取り組みを振り返りつつ次のように話した。
伊東主査
水素エンジンでの挑戦は6年目になりましたが、ガソリン車に追いつくということを目標にやってきました。
ガソリンのGRヤリスは、一度の充填で40ラップほど走行することができますが、これまでの液体水素カローラでは、パッケージの制約で30ラップが目いっぱいでした。
それを今回、超電導の技術を使ってポンプをインタンク化したことで、タンクスペースを拡大でき、40ラップ分の液体水素を充填することに成功しました。
始めはモーターがまったく回らないところからスタートして、非常に苦労しましたが、レースでしっかり走れるレベルまで開発を進めることができました。
しかし、これでガソリン車と同じ40ラップを走ることができるかと言われるとそう簡単な話ではなく、まだまだ多くの課題があります。
最も大きい課題が、耐久性とボイルオフの増大です。