米国関税の影響下でも3.8兆円の営業利益を確保したトヨタの2026年3月期決算。メディアとの質疑応答で語られた、持続的成長への道筋とは。
Ⅳ:ROE(自己資本利益率)20%超の達成
――ROE改善についてどの程度重視し、目安としている20%超えについて、どういった時間軸で達成していくのか?
近社長
特にどの時間軸で、いつ達成するということは、今はございません。ただ非連続な成長を目指してまいりたいと思います。
宮崎が先ほど申し上げましたが、バリューチェーンとか新領域(SDV、コネクティッドなど)で収益を上げていく、営業利益率を上げていくということが1つ。
もう一つ、資本面に関しては、収益構造がバリューチェーンなどにシフトしていくと、当然その構造に見合った、少し軽い資本構成も見据えることができます。ここは株主の皆様からお預かりするものですので、株主様の声を聞きながらやっていく部分だと思います。
それを続けていき20%という旗をしっかりと見据えながら、いろいろなことをやってまいりたい。
Ⅴ:モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり
――モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりが進んでいるが、ビジネスとして成り立たせるには、稼げるクルマも必要になってくるかとも思う。これから、どのようなクルマをつくっていきたいか?
近社長
モータースポーツを通じたもっといいクルマづくりは、トヨタの開発の一丁目一番地ですので、これはもちろん強力に継続して進めていくことだと思っております。
私は、クルマづくりに関しては、手触り感を持ってお伝えすることはできないかもしれませんが、あれだけ限られたリソーセス、限られた時間の中での、極限的な使用状況で、クルマが鍛えられ、号口段階では出ないような不具合も、そこで出てくる。
そうやって本当に強い部分を突き詰めていくということは、クルマづくりにとって非常に重要なことだと思います。結果として今、プロのモータースポーツの世界でも結果が出ているということは、本当にすごいことだと思います。
一方それをビジネスでやっていくというときには、何かいい機会があり、そこにものすごく巨額の投資をかければいいということではなく、ある程度の制約、ある程度のキャパの中で、一生懸命工夫していくことが、非常に重要だと思います。
モータースポーツへの投資をしっかりと継続していくと思いますが、無尽蔵ということではなく、TOYOTA RacingもGAZOO RacingもRookie Racingも、しっかりと自分たちのキャパを持っていて、その中で工夫して開発をしています。
そうして開発が進んでいき、人も育っていくんだろうと思います。
結果としてGRヤリスというクルマが、欧州ではヤリスブランドを高めて、ベース車両もお客様に非常にご評価いただいています。
カローラは北米(で評価いただいている)ということもございます。そういったブランド、および群、モータースポーツで鍛えたクルマの素性といったことが相まって、長い時間をかけて、お客様に評価いただいていくんだと思います。
そういう意味では、持続的にやっていくことだと思っておりますし、それをしっかりとサポートすることが私の役割だと思っております。
Ⅵ:仕入先との向き合い方
――仕入れ先との関係性は、どうあるべきと考えているか?
近社長
協豊会、栄豊会*とのさまざまな会合の中で、トヨタのことを「同志」と呼んでいただきました。同志と呼んでいただくために、私どもOEMとしては、一番厳しいお客様である一般のお客様に逃げずに向き合い、しっかりクルマをお届けしていく。これが、我々が仕入先様に「同志」と呼んでいただく最初の条件だと思っています。それができなければ、我々は同志と呼んでもらう資格はない。
*協豊会:トヨタの部品仕入先による組織。栄豊会:設備・建設・物流関係の仕入先による組織。
逆に仕入先様にとって、トヨタは「一番厳しい得意様」であらねばならないとも思います。
やはりお客様に本当にいいクルマを届けるためなら、厳しいことも当然言わなければならない。それがトヨタのため、ということではなくて、お客様のためということであれば、しっかりと厳しいことを仕入先様にも話していかなきゃいけない。
ただ、本当に(仕入先様が)厳しい時、本当に危機的な時には一緒にやる、連携をする、場合によっては支援をする。そういう存在であり続けたいと思っております。それが、「共存、共栄、温情と甘えに基づく妥協の産物ではない」という石田退三さんの言葉を私なりに考えたものでございます。
激変する事業環境においても、持続的に成長できる強いトヨタへ。決意を示した今回の決算発表会。
メディアからは「先ほど(メッセージの中で)近さんがアクセルを踏むためには、いいブレーキが必要だとおっしゃっていましたけれども、ブレーキは止まるだけではなく、曲がるところにも使えるので、いい方向に舵を切っていただければと思います」とエールを送られる場面もあった。