トヨタが電池開発のコンセプトとして掲げる「安心」。その実現へトヨタが培ってきた強みとは?
9月7日、トヨタ自動車は電池の開発と供給の取り組みについて説明会を実施。メディアのほか、国内外の投資家やアナリストに向けて情報発信を行った。
メインスピーカーは技術開発を担当する前田昌彦CTO(Chief Technology Officer)。
質疑応答では、生産を担当する岡田政道CPO(Chief Production Officer)、渉外広報を担当する長田准CCO(Chief Communication Officer)、電動車の革新的な効率の向上、新電池の開発、カーボンニュートラル燃料の活用などを担当するCN先行開発センターの海田啓司センター長も加わり、トヨタの電池戦略について説明した。
欧州では2035年にエンジン搭載車の新車販売を禁止する規制案が発表され、米国でも2030年に新車販売の半分を電動車にする目標が掲げられている。
こういった規制の流れに対応するためにも、また、カーボンニュートラルの実現に向けても、競争力のある電池を開発し、確保できるかがカギとなっており、電池工場の建設や投資計画を打ち出す自動車メーカーも出てきている。
BEV(電気自動車)販売台数では、決して目立つ存在とは言えないトヨタ。1997年に世界初の量産HEV(ハイブリッド)乗用車として投入したプリウス以来、自動車メーカーとしていち早く電池の内製化にも取り組んできたが、強みはどこにあるのか? 未来に向けたロードマップをどう描いているのか?
前田CTOのプレゼンを中心に、開発と供給の両面で語られたトヨタの電池戦略を紹介する。
HEV 3台のCO2削減はBEV 1台分
本日はカーボンニュートラル実現に向けたトヨタの電池の開発と供給のお話をさせていただきます。
まず、改めて、カーボンニュートラルとは、工業製品を例に挙げますと、原料の調達に始まり、「つくる」「運ぶ」「使う」、リサイクルして最後は「廃棄する」、製品のライフサイクル全体を通して発生するCO2をゼロにするということです。
皆さまご存知の通り、世界のCO2濃度は産業革命以降、増加し続けています。人類が排出するCO2をトータルで削減することに、もはや一刻の猶予もありません。
自動車産業で言えば、電動化を進めることは、カーボンニュートラルに近づくための効果的な方法の一つです。
たとえば、我々の試算では、HEV3台のCO2削減効果はBEV1台とほぼ同等です。
現時点では比較的HEVの方が安価に提供できるので、再生可能エネルギーがこれから普及していく地域では、HEVを活用した電動化などもCO2削減に効果的だと思われます。
一方で再生可能エネルギーが豊富な地域ではBEVやFCEV(燃料電池車)などのZEV(ゼロエミッション車)の普及がより効果的だと考えています。
さらに、南米のような地域では、バイオエタノールをCO2削減への対応として実用化している例もあります。
以上のように、我々はどうやって炭素を排出しないようにするか、もしくは削減してゼロに近づけていくかに集中するべきです。
エネルギー事情が違えば、CO2排出量を削減する選択肢も異なるので、カーボンニュートラルの達成に向けて選択肢が広がるように、さまざまな方策にトライを続けていきます。
このような視点に立ち、トヨタは電動車両をフルラインナップで準備しています。
それぞれの地域において、お客様の利便性を考慮しつつ、CO2排出量を削減する「サステナブル&プラクティカル」な商品を提供したいと考えています。
BEV 26万台の電池で550万台のCO2を削減
まず、これまでの電動車の実績を振り返ります。
トヨタは1997年に初代プリウスを導入以降、性能向上も図りつつ、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV、BEVを投入してきました。
その中でHEVは累計1810万台ほどになっています。先ほども申した通り、HEV3台分のCO2排出量削減効果がBEV1台分に匹敵するので、これまで販売したHEVは約550万台のBEVと同等と言えます。
今までつくったHEV用電池の量は、約26万台のBEVに搭載する電池と同じです。つまり、BEV26万台分の電池で550万台分のCO2削減を進めてきたと言えます。
今後は市場の変化も鑑み、今までの経験で得た強みも生かして、BEVやPHEVの導入も加速させ、電動車の選択肢を増やすことによって、各地域のお客様に選んでいただき普及を加速させることでCO2排出量の削減に努めてまいります。
トヨタは電池もフルラインナップ
電動車フルラインナップを支えるコア技術はモーター、電池、パワーコントロールユニットの3つです。
本日はその中で電池について、トヨタが電動車を量産する中で培ってきた独自の考え方や競争力について、皆さまにご理解いただきたいと思います。
電動車フルラインナップを進める中で、電池もフルラインナップで開発・製造を進めてきました。
HEVは「出力型」、言い換えると瞬発力を重視し、PHEV・BEVは「容量型」、いわゆる持久力を重視しています。
HEV用電池として、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池をそれぞれの特徴を生かして、継続的に進化させてまいりました。
今年発表した、瞬発力を重視したバイポーラ型ニッケル水素電池も今後搭載車種を拡大してまいります。PHEV・BEV用のリチウムイオン電池は今までもコストと持久力の両立を図ってきて、今後も継続的に改良させていきます。
2020年代後半には、さらに進化させた新型リチウムイオン電池をお届けするべく開発を行っています。