イチロー"豊田章男会長付特別補佐"の日本人初のアメリカ野球殿堂入りを記念した"社内表彰"がついに実現。表彰状と商品券のほかに特別に贈られた"世紀の現物支給"の正体は⁈
デザインを担当したのは2025年入社の2人!
9台のセンチュリーGRMNをデザインしたのは、2025年に入社したカラー&感性デザイン部の今野雅也と島田彩矢。入社時の研修を終えて間もない7月に、上司から声をかけられた。
デザインは使う人のことを想像することが大事。「人のためを想ってつくる」という大切なことを、これからデザインを仕事としていく2人の一歩目に学んでほしいという想いもあっての抜擢だった。
「事前に先輩から『びっくりする話があるよ』とは聞いていましたが、実際に上司から話を聞いて、想像の斜め上でした。できるかなという不安もありました」(今野)
「センチュリーというだけでもびっくりしていたのに、イチローさんのお名前も聞いて、交わらないと思っていた2つの要素が交わって、2度驚きました」(島田)
ただ、2002年生まれの今野、2003年生まれの島田にとって、イチローさんの名前や偉業は知っていても、日本でプロ野球選手として活躍していた時代や、メジャーリーグで歴代最多安打記録を達成した瞬間はリアルタイムではない。
2人はまず、コンセプトを固めていくために、当時の記事や動画をかき集めた。そしてイチローさんの野球人生を知っていくにつれて、そのすごさを実感していった。
実は当初、上司から言われていたイチローさんに渡すセンチュリーGRMNは、高校時代から始めていく予定だった。しかしイチローさんの野球人生をクルマで表現していくには、幼少期も必要と直訴。
「イチローさんの野球人生の始まりは、決して高校時代ではないと思ったんです。トヨタイムズでも巡っていた伊勢山グラウンドから始まっていて、これからも続いていく。だから幼少期も追加するべきではないかと思ったんです」と今野は語る。
2人の熱意とストーリー構想を見て、上司のGOサインが出た。
デザインを考えるにあたっては、イチローさんが所属した各チームのレプリカユニフォームを取り寄せた。だが、どうにもユニフォームの色とイメージが合わない。
イチローさんの野球人生をクルマに落とし込むには、ユニフォームの色を合わせるだけじゃダメだ。でも過去をさかのぼって現場を見ることはできない――。
今野と島田は、当時の空気感まで反映できるように想像力を最大限に働かせた。
幼少期のイチローさんは、きっと無我夢中になって毎日のように泥だらけになりながら練習していたはず。普通ならいつもピカピカであるはずのセンチュリーも、あえて汚すとことで、イチローさんの野球人生を振り返るときにアイコニックな導入になるんじゃないか。
マリナーズで引退する際のユニフォームも、映像を見ていると色が違う気がする。ただのグレーではなく、芝の色や球場の照明が反射していたり、喜びと寂しさに満ちた東京ドームの雰囲気がそう見せていたりするんじゃないか。
他の7台に関しても、島田は「ユニフォームとセンチュリーでは、配色面積が変わってきます。そうなってもイメージが変わらないように色相を調整したり、コーディネーションで美しく見えるように調整したりしています」と振り返った。
ただ、ユニフォームを反映するのではない。「イチローさんに喜んでほしい」という2人の想いが、この9台に特別な彩りを与えている。
本気のリクエストに本気で応える
デザインが決まったら、次は制作。「本気のミニカーが欲しい」というイチローさんのリクエストに、デザイン統括部のメンバーが本気で応えた。
まずは市販のミニカーを取り寄せ部品構成を確認。完成車として売られているので、当然図面などは無い。分からないところは、クルマづくりで培ってきたカン・コツと知見で構造の理解を深めていった。
ドア、フード、トランク…一つひとつ部品を分解して、塗って、組み付けて。時には塗装の厚みで組み付けが上手くいかず、最初からやり直すことも。
メンバーの1人は「ミニカーであっても品質のこだわりは変わらない。だから全ての部品を分解して塗装に挑むことは必然」と振り返る。
フィギュア制作には3Dプリンタを使った。ただし、こちらもフィギュアづくりは初めて。参考になりそうな動画を見ながら試行錯誤を繰り返した。
トランクのアイテムについては、3DプリンタやUVプリンタ、さらには手作業でつくっている。幼少期の柿などは紙粘土を使い、手で形を整え、WBCのトロフィーは3Dプリンタで造形するなど「アイテムごとに一番いい方法」を採っている。
イチローさんが選ぶ1台は?
本気のミニカーを受け取ったイチローさんは、豊田会長とこんな会話を交わしている。
イチローさん
素敵なストーリーまで考えてくれてありがとうございます。
豊田会長
このストーリーはいいね。イチローさんらしく(ナンバープレートに安打数の)数字も入っているし。
(スタッフから「9台の中で1台選ぶなら?」と問われ)
イチローさん
それはなかなか選べないですね…。
でもストーリーも含めて、僕はこのマリナーズ(での引退)が好きですね。
ちなみにトランクのアイテムについては、イチローさんがピザ、豊田会長は柿がお気に入りとのこと。
イチローさんからは、お返しにアメリカ野球殿堂入りを記念して制作したフィギュアをプレゼント。メジャーリーグで積み上げた安打数にちなみ、3089体の限定品だ。
メジャーリーグに挑戦した当時の、マリナーズのユニフォームでバットを構え、服のしわや腕の筋肉、血管まで精巧につくられている。その出来栄えを見た豊田会長は「同じポーズしてみて」とお願い。
新聞広告から始まり、カラー&感性デザイン部とデザイン統括部が本気で制作した世界に一つだけのセンチュリーGRMNは、この日、無事にイチローさんの手に渡った。
イチロー会長付特別補佐の次回の出社はいつになるのか。そしてその現場はどこなのか。トヨタイムズは引き続きその姿を追っていく。