みんなで挑み、失敗し、悩み、また挑戦する。最後に「ありがとう」と言い合えるように。豊田章男会長、佐藤恒治社長が新年のあいさつを届けた。
意志ある踊り場
佐藤社長
そのうえで今年をどんな年にしていきたいのか。
これまでの取り組みを踏まえて、みんなでやってきた「足場固め」に一区切りつけて、「意志ある踊り場」の1年にしていきましょう。
この2年間、みんなで余力をつくって「やるべきこと」、「やりたいこと」に時間を使える環境をつくろうと頑張ってきました。
生産現場を始め、その時間を活かしていろいろな改善が進んだことは、本当に良かったと思っています。
しかしながら、やり切れなかったこともあります。
「やりたいことをやり続ける」ために必要な「稼ぐ力」を高めることです。「稼ぐ力」がなければ、クルマづくりも、未来への挑戦も、やりたいことはできないんです。
昨年のモビリティショー。トヨタはいろいろな未来をお示しすることができました。
でも、それが決して「当たり前ではない」ということを実感したんじゃないでしょうか。
未来を支える「稼ぐ力」は、今の私たちの行動にかかっています。
自分自身も、その行動が足りていなかったと思っています。
だからこそ今年は、まず私たちのキャパシティ、「今の実力」に向き合いましょう。向き合ったうえで「仕事の正味率」をみんなで高めていきたいと思っています。
その軸となるのはやはり、「もっといいクルマづくり」だと思います。
トヨタのど真ん中に「商品・クルマ」があるからこそ、お客様はトヨタを選んでくださっています。トヨタで働く「全員」が努力し続けなければ、その強みが失われてしまうと思います。
そう考えたとき、私自身、思い出すことがあります。
2009年4月、初めて「もっといいクルマをつくろうよ」という言葉を聞いたときの、あの瞬間のことです。
創業期以来、初の赤字転落。そんな厳しい状況で社長のバトンを受け取った豊田会長が、あのとき、私たちに伝えたことは何だったのか。
改めて、みんなで確認したいと思いました。ぜひここで、その映像を見たいと思います。ご覧ください。
佐藤社長
いかがでしたでしょうか。
「もっといいクルマをつくろうよ」
この言葉を聞いて、正直、当時の自分がどう受け止めていたかというと「もっといいクルマとは何だろう」、「何をつくってほしいのか教えてほしいな」、「じゃないとつくれないよ」。
それが正直な気持ちでした。
でも分からなかったからこそ、みんなが悩んだんじゃないかと思うんです。
必死に考えて「とにかく何かやってみよう」。そうやってみんながともがき始めたんじゃないかなと思います。
そうやっていく中で、当時の豊田社長から、自分自身もいろんな開発の中で、豊田社長と向き合ってクルマづくりをやってきて、常に現場で言われていたのは、「とにかく素性の良いクルマをつくろう」ということでした。
あのときそれにこだわったからTNGAの取り組みにつながったり、今のロングセラーカーのラインナップだったり、モータースポーツを起点としたクルマづくりにもつながっていったんです。
たぶん、あのときの豊田社長は、もっと言いたいことがあっただろうなと思います。本当は心の中にいろいろな思いがあったはず。でも「こんなクルマをつくってほしい」と、あえて具体的には言いませんでした。
それはなんでだろう。今こう思うんです。「現場の考える力」を信じてくれていたからだと。
「トヨタには知恵と技をもった人が必ずいるんだ」
「トヨタらしさを取り戻すためには、みんなのその想いを引き出さないといけないんだ」
そんな強い想い、「意志」があったからだと思います。
私たちのDNAは「よい品 よい考」。
1953年、トヨタにお金も実績もなかったころ、「人の知恵で、良いモノをつくろう」という想いを込めて制定された全社の標語です。
「考える力」を大切にして、自分で考えて「良品廉価」を追求する。これがあらゆる現場において、改善と挑戦の軸になるトヨタらしさで、「意志ある踊り場」のこの1年、それを実践するうえで大事にしないといけない考え方じゃないかなと思っています。
ぜひ「よい品 よい考」の看板を工場で見るたびに、皆さん一人ひとり、このことを思い返してほしいなと思います。
私たちの原点に立ち返って、もっといいクルマづくりとは何だろう?
みんなで考えて、悩んで、行動につなげていきましょう。
ここで佐藤社長は1つ間をおき「もう1つ」と始めた。技術部に所属していた時のこと、社長に就任した当初のことを振り返り、気づいた想いを伝えた。
佐藤社長
そして、もう1つ。
思い返すと、当時技術部にいた自分にとって「もっといいクルマづくり」は「技術開発」のことだと思っていました。
「技術部が頑張るんだ」とどこかでそう思っていました。
そして、社長の役目をいただいた最初のころは、リーダーとして「こういうことをやろう」と具体的に示して、自分が率先して動いて、頑張らないといけないと考えていました。
でもいろいろな課題にぶつかっていろいろ悩む中で「そうじゃないんだ」と気がつきました。
変化に対応するために努力し続ける工場や開発現場の皆さん。
最前線で「お客様との絆」を守ってくれている海外の皆さん。
そして、クルマづくりの基盤を支えてくれている、あらゆる職場の皆さん。
いろいろな現場を回りました。回れば回るほど、それまで見えていなかった現場の皆さんの苦労、頑張り、想いを知りました。
クルマづくりは、部署や会社、地域を超えてみんなでやっている。みんなで…。
そしてどんな状況でも、それぞれの現場にコツコツ頑張っている人がいるんです。
それが「トヨタの現場力」。現場力がトヨタの強さだということを肌で感じてきました。
だから意志ある踊り場の1年、今や私や執行メンバーの役割は「現場力」を最大化できるよう、機能を超えて「みんなをつないでいくこと」だと思っています。
みんなが「もっと仕事をやりやすくする」。そのために頑張る。
だからこそ私たちは、皆さんの頑張りをもっともっと知って、「みんながやりたいこと」に打ち込める環境をつくっていきたいと思います。
そのために、どんな形であれ自分の役割をしっかり果たしていきたいと思います。
これから先、やるべきことも「やめること」「断つこと」を決めなければならないことも、たくさんあると思います。
うまくいかないことも多いかもしれません。
それでも前に進むために、もがき続ける。その背中を見せられるよう、一生懸命努力したいと思います。
皆さんの背中を見ている仲間もたくさん、たくさんいるはずです。
ぜひ一緒に悩んで、みんなでもがいていきましょう。
「意志ある踊り場」の1年。
問われているのは「どんな未来を残したいのか」という私たちの「意志」だと思います。
トヨタが掲げる「TO YOU」というビジョン。
その根底にあるのは「お客様おひとりおひとりの笑顔のために仕事をしよう」という想いです。
私たちは年間1000万台のクルマをつくっています。でも同じクルマは1つもないんです。
「ねじを締める」作業1つとっても、今つくったクルマと次のクルマは違うお客様のところへ届くんです。
1台1台それぞれのお客様の笑顔のために心を込める。それがトヨタが目指す「幸せの量産」だと思います。
皆さんそれぞれに、いろいろな役割を担っています。
クルマづくりにおける一つひとつの改善も、マルチパスウェイや新たなモビリティの取り組みも、すべては「お客様の笑顔」につながっていきます。
そのことを心に刻んだうえで、未来の「笑顔」のために何ができるのか、今年1年、しっかり考えて、「意志」をもって行動していきたいと思います。
みんなで汗をかいて、もっといいクルマをつくって、そして、クルマの未来をみんなで変えていきましょう!
ご清聴ありがとうございました。
佐藤社長の呼びかけに、従業員も大きな拍手で応えた。
続けて豊田会長が壇上に上がる。新年らしく書初めの話題から始まった。