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モータースポーツの困りごと改善へ 新技術で工程3週間→3日に 第5戦鈴鹿

2024.11.11

モータースポーツの困りごとを改善し、裾野拡大へ。世界初の溶接技術がスーパー耐久の現場で披露された。

製作期間3日

「ゆっくり丁寧に」溶接することによって、ひずまず、ほぼ正寸通りに組めるようになったロールケージ。クルマに組み付ける工法も変わった。

従来は、職人が23週間かけて1本ずつ手作業で組み付けていたが、新工法では、ロールケージをSUB ASSY*化。

*SUB ASSEMBLY(サブ・アッセンブリー)の略。製品を最終形態に組み立てる前段階の各部の組み立て工程。

以下のように溶接工程を3分割し、作業性を向上させている。

ロールケージを3つのモジュールに分け、それぞれをボディ外で組立(0.5日)

各モジュールをボディ内に仮組(1.5日)

ボディに溶接(増打、1日)

この「SFA技術」と「SUB ASSY化」の組み合わせにより、制作時間は23週間から3日へと大幅短縮された。

鈴鹿サーキットに展示されたロールケージ。写真手前の緑、同奥の黄色、同右のオレンジ色のテープが3つのモジュールを示している。

最高の褒め言葉

SFA工法によりボディ剛性が大幅に上がったGRヤリスだったが、ドライバーからは「剛性が上がり過ぎている」といった声があった。

コーナーでハンドルを切ったときなどの入力は、ボディがねじれて、サスペンションと合わせて吸収するが、今回ボディ剛性が上がったことで、サスペンションに頼る部分が大きくなった。サスペンションのチューニング幅が広がった一方で、最適なセッティングは今後の課題だ。

だが、このドライバーの反応は、「最高の褒め言葉」(川喜田主査)、「ベスト」(柴田さん)という。剛性を上げることは難しいが、下げることは補強の点数を減らすことで調整が利くためだ。

モータースポーツをサステナブルに

ロボットの活用は、ロールケージの製作時間だけでなくコストの削減にも期待がかかる。

だが、川喜田主査は「決して溶接工の皆さんの仕事を奪うために開発してきているわけではありません」と強調する。

川喜田主査

ボディが正寸でできていても、わずかな誤差はあります。フィンランドなどのWRC(世界ラリー選手権)トップドライバーは、その誤差に合わせてロールケージを組まないと運転して「気持ち悪い」と言うんです。

そこは我々(が開発したロボット)では手が出ない部分で、最終的には腕のいい、運転もわかっている溶接工がより必要とされるだろうし、今の溶接の匠の人たちは、そういう領域での作業時間をよりつくれるようになります。

一方で、エントリークラスの人たちは、早くコストを抑えたロールケージつきホワイトボディを供給していくと喜んでもらえるんじゃないかなと。

モリゾウさんも言われているんですが、決して溶接工の皆さんの仕事を奪うために開発してきているわけではありません。

ややもするとそう捉えられがちで、(鈴鹿の会場に)展示していても、「僕たちの仕事がなくなっちゃうよ」とコメントがあります。

ですが、そうじゃないんですよ。(エントリークラスの)皆さんがチューニングとかをもっとやれるように。そういう領域を目指しているということを我々の方からお伝えしていかないと誤解を招いてしまいます。

以前、GRヤリス ラリー2の初号車に乗ったモリゾウは、「ラリー好き、モータースポーツ好きという方はたくさんいると思う。ただ、敷居が高いとか、どうすればいいのかなと悩んでいる人に、その場を提供できることが、GR中心にやれたらいいんじゃないかなと思っています」と語っている。

今回お披露目されたSFAもまた、モータースポーツへの参加のハードルを下げる一助になるだろう。

SFA工法を取り入れたGRヤリスは、鈴鹿の翌月、岡山での第6戦にも出場した。

まだ2戦終えたばかり。この先もモータースポーツを起点として、より良いものへと磨き上げていく。

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