ラリー北海道を生中継したトヨタイムズ。最終日にはモリゾウ(豊田章男会長)がスタジオ出演し、ベストカー元編集長・本郷仁さんによる公開取材が行われた。その模様をお届け!
【Q4】セリカは本当に復活するのか?
本郷
絶対聞かなきゃ(視聴者に)怒られてしまう質問があるんですよ。セリカは本当に出るんですかと。
モリゾウ
それは、トヨタ自動車に聞いてくださいよ。執行(の立場)じゃないんだもん。
本郷
でもモリゾウさん、お願いはできるじゃないですか。
モリゾウ
だから、お願いしていますよ。どういう名前になるか知らないけどね。
本郷
モリゾウさんにお願いされて、嫌だっていう人はいないでしょう。
モリゾウ
いやー(笑)。けっこういるんですよ。モリゾウの言うことを聞くのが嫌だっていう人はいますから。
だけど、それがある意味、多様化だし。そういう人たちがいるから、プリウスがああなったんです。
クラウンは私が勝ったけど、プリウスは私と一緒は嫌だという人たちが勝った。もっといいクルマづくりでそういう話し合いができる、商品を軸にした会社になれたことは、僕はいいことだと思っているんです。
もっといいクルマをつくるぞと言ったときに、「モリゾウさんにとって、いいクルマって何なんですか?」とよく聞かれました。「そんなの自分で考えなさいよ」としか答えていませんでした。
でも、そのおかげで、自分が考えるもっといいクルマというものがいっぱい出る会社に、10年はかかりましたけど、できたような気がします。商品軸で経営をしていく、現場が大事というところは、絶えず継承しなきゃいけないと思っていますから。
それで何が聞きたかったの? あっセリカね。
ここがラリーの会場だから言うわけじゃないですけど、(デモランに招待した)カンクネンさん=セリカですよ。4回のチャンピオンはセリカでしょ。
なぜ、私がここまでカンクネンさんを使っているか、皆さん、考えてみてください! 共感してみてください!
最後は放送向けにカメラ目線でアピールしたモリゾウに、視聴者も「圧すげー」とコメントしていた。
【Q5】国内ラリーに力を入れる理由
本郷さんからは、国内のラリーにも力を入れている理由について質問があった。
モリゾウ
トヨタは世界選手権に出場できるチームであると同時に、ラリーチャレンジという導入編のラリーを持っている会社でもあります。
ところが、ステップアップしてカテゴリーが高い競技に進んでいくためには、導入から急に世界選手権、町の草野球から急にメジャーリーガーにはなれません。野球でいえば、社会人野球、プロ野球、メジャーリーグという順番があるじゃないですか。そうすると、全日本やフィンランドラリーとか、それぞれの国の代表するラリー競技には出ていく必要があります。
今回は、ラトバラさんの世界の実力というのを、目の当たりにしてほしいなと思っているんですよ。全日本の今まで見てきたものが、世界との戦いでいくと、このぐらいの差があるんだなと。
オリンピックでも、主催者枠ということで(男子)バスケットが出て、世界との距離はあったなと。それで、世界は厳しいなと思いつつ、逆転で(パリ大会に出場できる)12チームの中に入ったわけでしょ。ああいう感覚をするためには、全日本はしっかりと人の面でもクルマの供給面でも持っておかないと、世界には通じないと思うんですよ。
(勝田)貴元選手が今WRCのレギュラーチームメンバーになったわけですけど、シートの数は限られている。いつ何どき、そのドライバーの旬が訪れるかわからないんですよね。そういうときのためにも、いろんなカテゴリーでコンペティティブに戦う土壌があれば、出番だよっていうときにいっぱい出てくる層の厚さになってくるんじゃないかなと。
だから、他のメーカーも誘うし。ラリーを盛り上げるためには、トヨタのチームだけが強いとかいうことでは、本当にコンペティティブにはならないと思います。
【Q6】新投入のDAT車両について
新しく開発されたDAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)が、スーパー耐久やラリーで走る車両に投入されている。その将来性については、視聴者も気になるところだ。
モリゾウ
オートマチックはゲームチェンジャーになりますよ。「オートマチック=マニュアルより遅い。だけど誰でも運転できるから我慢しなさい」というものじゃないんです。
いろんな課題はありますけど、この間のスーパー耐久レース(S耐)で走り切った。最初はTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ(通称ラリチャレ)で走り、だんだんスピードと距離も上がってきて。S耐の過酷な中で、3日間の中で壊して直してをやりながら、完走できました。
ぜひ実現したいと思っているし、多くの人に乗っていただくクルマになる。たとえばオートマ限定の方がモータースポーツを楽しむとか。ちょっと違う音と、ダウンシフト、アップシフトの感覚を感じられる。
S耐でわかったことは、プロのドライバーと私の差は縮まってはきたものの、シフトの差が違う。直線で私が1回シフトすると、コンマ2秒遅れるんです。2回シフトするとコンマ5秒ぐらい遅れるんです。それが今回オートマチックですから、シフトの差で遅れるということはないです。だから、いつもよりプロと私の差が縮まった。運転とブレーキ、アクセルに集中できるんですね。
締めくくりにDATの意味について「裏言葉知っています? だってアキオトヨダ(Datte Akio Toyoda)だもん」とオチを付けたモリゾウ。
「北海道から世界へチャレンジ」というメッセージを色紙に残し、スタジオを後にした。
北海道でWRCの風を感じた2日間のアーカイブ
9月10日の生放送で放映された、モリゾウのデモランの様子は0:29:55から。
前日の9月9日も、スペシャルステージの様子や、モリゾウとカンクネンさんのデモラン、スタジオでのカンクネンさんへのインタビューなど、モータースポーツファンには見逃せない内容なので、ぜひアーカイブを見返していただきたい。