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【エアロセンス】働くドローンで空の産業革命を目指す

2024.09.06

『ジャパンモビリティショー 2023』に参加した、革新的なスタートアップに焦点をあてる「モビリティの未来を担う仲間たち」。第4回は、産業用ドローンの開発を進める「エアロセンス」を取材。

2023年秋に開催された『ジャパンモビリティショー2023』。自動車産業のみならず、多様なモビリティ関連企業が一同に会し、「未来の日本」を創造する場として東京モーターショーから名称・コンセプトを変更し開催された。

未来のモビリティ社会に向けて、今秋も、「未来をつくる、仲間づくりの場」として、『ジャパンモビリティショー ビズウィーク 2024』が開催される。

この連載では、『ジャパンモビリティショー 2023』に参加した、革新的なスタートアップに焦点をあてていく。未来をともにつくる仲間たちが、モビリティをどう考え、どのような想いで事業を展開しているのか。ジャパンモビリティショーから生まれる物語、その先に広がるモビリティの可能性を探っていく。

長時間・長距離を速く飛ぶVTOL型ドローン

産業用ドローンの機体開発のみならず、データ処理のクラウドサービスの提供もおこなうエアロセンス。同社は、国産機初のVTOL(垂直離着陸型固定翼)型ドローン「エアロボウイング」を2020年に発売したことで知られている。一般的にドローンといえば、多数のプロペラが付いた回転翼ドローンを想像するが、「エアロボウイング」は飛行機の原理を活用した固定翼と回転翼のハイブリッド機となる。

VTOL(垂直離着陸型固定翼)型ドローンの特徴は、回転翼によって垂直離着陸ができ、揚力とスピードを得た後は飛行機のように固定翼を使って水平飛行することができる点にあります。エネルギー効率が良く、より長距離を速く飛ぶことができることが特徴です」

そう語るのは、代表取締役社長の佐部浩太郎さん。一般的な回転翼ドローンで測量を行う場合、飛行時間は約30分で数へクタルール分となるが、VTOL型のエアロボウイングであれば約40分飛行でき、数百ヘクタールもの測量が可能だという。

「回転翼ドローンは大まかにいうと電機メーカーさんの範疇で、モーターの回転数を電子制御すれば飛ぶことができる。一方、固定翼は飛行機の設計と同じですので、メカ的なノウハウが必要になります。その両方の知識と技術がないと完成しないんです」

エアロボウイングは、2022年よりスタートした無人航空機の型式認証制度にて、VTOL型ドローンとして国内初の第二種型式認証を取得。これにより、人がほとんどいない場所であれば飛行許可・承認申請不要で飛ばすことができるようになった。

ジャパンモビリティショーの展示を岸田首相が視察

『ジャパンモビリティショー 2023』では、スタートアップの展示エリアにてエアロボウイングを展示。災害時の活用方法を紹介した。また、東京ベイeSGプロジェクトのパートナー企業であることから、東京都政策企画局が運営するブースでも映像展示をおこなった。

「ドローンの展示会や、土木測量分野の展示会にはこれまでにも参加していました。ジャパンモビリティショーは一般の方も多数来場されるイベントでもあるので、認知をさらに広げるために出展しました。実機を見るチャンスのなかった方が、初めて実機を見れたよ! と喜ばれているのは嬉しかったですね。普段は山の中でしか見られないですから(笑)」

会場では、水害のあった場所を計測し、損害保険会社に申請された内容と一致するかを確認した球磨川(人吉市)の例や、自治体が発行する罹災証明を素早く発行するため、ドローンで撮影した現地画像を活用する例などを紹介した。

スタートアップの展示は、2日間ごと企業が入れ替わる仕組みだが、エアロセンスの出展日は岸田首相や西村経済産業相、斉藤国土交通相の視察とも重なり活況となった。

「滅多にない機会ですので、岸田首相には規制緩和をお願いしました。その他、多くの方にドローンの新たな活用方法を知ってもらう機会となりました」

岸田首相視察時の様子。出典:首相官邸HP(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202310/26shisatsu_kondankai.html)

ジャパンモビリティショーに出展していた他社ブースを見学することで、今後のヒントも得られたという。

「当社では、最大100m上空から360°監視できる有線給電ドローン(エアロボ オンエア)があります。この機体をクルマに搭載し災害地まで行って、24時間定点観測することもできるわけです。この製品は、数多く展示されていた商用車との相性が良さそうだなと気づくきっかけになりました」

新しいものを作って終わりではなく社会に貢献したい

佐部さんが産業用ドローンの開発をするきっかけは、新卒で入社したソニーで初代AIBOの開発にたずさわったことが大きい。

AIBOQRIOなど、ソニーではエンターテイメントロボットという分野にたずさわっていました。その後も私はR&Dの部署でしたので、新たに“空飛ぶロボット”というお題でプロジェクトを立ち上げたんです。しかし、ソニーに産業用ロボット分野はなかったので、ソニーではなく外でやったほうがいいだろうと合弁会社としてエアロセンスがスタートし、その後外部資本も入れて独立した歩みを進めています。」

ソニー時代、佐部さんがAIBOで開発していた顔認識技術というセンシング技術の一つは、笑うと自動的にカメラのシャッターが切れる「スマイルシャッター」に応用されたこともある。こうしてソニー時代に培ったセンシング技術が、エアロセンスでのドローンのソフトウェア開発にもいかされている。

「ソニーに限らず、多くの会社が優秀な技術を研究開発しています。しかし、その多くは事業化できず埋もれてしまう。エンジニアとして、モノづくりや発明・発案するというのは世の中に役立ててこそだと思っています。新しいものを作って終わりではなく社会に貢献したい、それがエアロセンスでの原動力です」

創業当初から測量分野にターゲットを絞ってきたエアロセンス。ドローンで撮影した写真をもとに高精度な測量解析をおこなう「エアロボクラウド」も高い評価を得ている。機体においてもVTOL型だけでなく回転翼ドローンも用意し、さまざまなニーズに対応すべく多様なドローン機体やサービスを増やしてきた。

「現在日本は労働人口減少の課題を抱えていることから、目指しているのは“働く無人航空機”です。ドローンというモノ自体は知られていますが、活用方法はあまり知られていないというのが現状です。用途ごとに産業用ドローンが活躍し、当たり前に存在する時代になってほしい。これまで空の世界は一部の人しか使っていない世界でした。でも、今後はより簡単に多くの人が使えるようになると思います」

最後に、本連載のお決まり質問である「モビリティとは?」という問いを投げてみた。

「モビリティって移動することですよね? 僕の中では、各種センサーが移動する世界をイメージしています。そんな言葉があるかわからないけど、センシング・モビリティ。IoTはいろんな場所にセンサーを仕掛けるものですが、それが自在に移動する世界が私のモビリティです」

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