豊田章男会長がランドクルーザーの開発に際して求めた「原点回帰」。それは、ランクルの存在意義をもう一度問い直すこと。その問いに現場はどう向き合ったのか。
継承にかける想い
75年の歴史の中で、ランクルは時代とともに姿を変えてきた。「トヨタ・ジープBJ型」から始まり、ワゴン、ヘビーデューティー、ライトデューティーへと進化を続け、いまでは“70”、“250”、“300”そして“FJ”へと広がるラインアップを持つ。
では、これからの進化について開発陣はどのように考えているのか。
内山CEは、ランクルにおける継承とは、特定の構造や技術を残すことではないと語る。
内山CE
継承とは今まで培ってきたものをちゃんと守るということです。しかし、それは特定の構造というよりも、お客様の信頼に、お客様の生活にちゃんと応えるということ。それこそが継承だと思っています。そこを守るためだったら、僕は他のものは全部変えていいと思っています。
最新技術を搭載するにしても、ランドクルーザーらしく取り込みましたね。ランドクルーザーとしてさらに良くなりましたね、と言っていただけるように取り込んでいきたい。例えば、砂漠のど真ん中から自動運転で自分の家まで帰ってこられる。そうなれば、ランドクルーザーの自動運転があってよかったと思っていただけるのではないでしょうか。
信頼に応え続けるためなら、形や機能は変わってもいい。むしろ変えていくべきであり、ランクルが受け継ぐべきものは、技術そのものではなく、お客様の暮らしを支え続けるという考え方。進化とは、その想いをより高いレベルで実現するための挑戦なのだ。
人の生活を支え、過酷な環境でも無事に帰ってこられる。そんなランクルらしい価値に結びついてこそ、新しい技術は意味を持つ。
上野GXは、時代の変化に合わせた進化の難しさを語る。
上野GX
先人がつくってきた、代々培ってきたところをできるだけキープしながら、もしくはそれを超えながら、環境や法規に合わせていく。それがすごく難しいけれど、やらなきゃいけないことだと感じています。
新しいものを取り入れることと、本質を守ること。一見相反するように見えるその両立こそが、ランクルの開発に課せられた使命だ。
実際に現場で車両を壊し、鍛えている山田CXはこのような思想の次世代への継承について「考えることの大切さ」をこう語る。
山田CX
『こうしたらもっと良くなるんじゃないか』『こうすればお客様にとってもっといいクルマになるんじゃないか』。そういうことを常に考え続けてほしいと思っています。
日本のテストコースだけでは確認しきれない性能もたくさんあります。でも、毎回海外に行くわけにはいかない。確認しきれないからつくれないではなくて、『以前走ったあの国の路面だったらどうなるだろう』『あのお客様の使い方だったらどう感じるだろう』と想像力を働かせてほしいですね。オフロードというツールを使ってランクルを鍛え続けていってほしいと思います。
原田TL
山田CXには本当にさまざまなことを教えていただきました。海外評価にも連れて行っていただきましたし、車両評価の一つひとつの場面で、多くのアドバイスをいただいてきました。歴代の先輩たちが築いてきたランドクルーザーの性能をしっかり維持し、さらに向上させていくこと。それが、これまで教えていただいたことに応えることだと思っています。
信頼性、耐久性、悪路走破性。ランクルが受け継いできたのは性能だけではない。その根底にあるのは、お客様の暮らしを支え続けるという覚悟だ。先人から学び、お客様に鍛えられ、次の世代へ託していく。その積み重ねが75年の歴史をつくってきた。
ランクルの継承とは、過去を守ることではなく、変わらぬ使命に向き合い続けること。その挑戦は、これからも続いていく。