トヨタアスリートとして10年以上、世界を舞台に活躍してきた松山英樹選手。トヨタイムズスポーツとして、初めてとなるインタビューが実現した。そこで語られた勝つために必要なこととは?
オリンピックで感じた嬉しい重さ
パリ2024オリンピックでメダルを手にした松山選手。そこにはPGAツアーでは、味わうことができない大きな違いがあったという。
森田
マスターズという大きな舞台で結果を出したということに加え、2024年はオリンピックという舞台でもメダルを手にしました。
これは松山さんのなかではどんな記憶、思い出として残っているのでしょうか?
松山選手
本当に嬉しい出来事の一つだと思います。金メダルを目指していた以上、悔しい気持ちは当然あったんですけど、日本の男子ゴルフ界にとって、このメダルをもたらしたということはすごく大きいことだと思いますし、頑張って良かったなと思います。
森田
戦った人じゃないとわからないと思いますが、PGAツアーとオリンピックは何か違いますか?
松山選手
全然ちがいますね。PGAツアーは優勝者か、それ以外かという感じですけど、それをオリンピックの金メダルでくくるとメダリストと、それ以外という戦いになりますが、日本の代表としてプレーしているので、全然違う思いがありました。
森田
メダルをかけてもらった瞬間、照れくさそうなのか、はにかんだようないろんな表情に見えましたが、気持ちとしてはどうでしたか?
松山選手
「ほっ」としたというのもありますが、首にかけられた瞬間メダルが重くて「重た!」って思ってにやけちゃいました(笑)
森田
想像よりも重かったですか?
松山選手
そうですね。ゴルフはメダルを首にかけられることが基本的にはないスポーツなので、こんなに重いんだと思って、ちょっとびっくりしました。
森田
松山さんにとっても初めての体験だったわけですね。そういう意味では、2024年というのは世界で戦って10年以上経ちますけど、また新たな一歩というか、そんな1年になったんじゃないですか?
松山選手
オリンピックのメダルとPGAツアー10勝目を挙げることができて、勝率を伸ばすことができたので、11、12勝と進んでいければと思います。
トヨタアスリートから松山選手への質問
森田キャスターが用意していたのは、他のトヨタアスリートから松山選手に対する2つの質問だった。
森田
松山選手は普段、アメリカを拠点に活動されていて、オリンピックという舞台では、他にもたくさんトヨタのアスリートが活躍していたのをご存知ですか?
松山選手
正直、あまり知らないです。
森田
松山さんのことも、我々はトヨタアスリートとして応援していたので、トヨタアスリートの横の繋がりみたいなものを、ぜひ意識していただきたいなと思っています。
他のトヨタアスリートとコミュニケーションを取ると、松山さんに聞いてみたいことがあるというアスリートが結構いました。
今日は、そのなかから2つの質問を持ってきましたので松山さんに答えていただきたいなって思っております。
TOYOTA GAZOO Racing 世界耐久選手権(WEC)チームの小林可夢偉代表から松山さんに質問です。
「僕はここ数年、レース界の将来を考えるようなことが多くなりました。ゴルフ界を引っ張る松山選手は、日本人が世界で活躍するために、どんなことが必要だと考えていますか?」
松山選手
そうですね、これは難しいですよね。未だに分からないですね。
森田
世界で戦っているなかで、例えば「ここが足りてないな」って思うところとか、「もうちょっと頑張りたいな」ってところとかありますか?
松山選手
僕自身はありますが、ゴルフ界とか日本人がっていうところになると、いろいろな環境の違いもあると思いますし、環境だけのせいにもできないと思いますし、そこは何とも言えないところだなと感じています。
森田
一方で、今日のジュニアゴルファーに向けたレッスンもそうですが、ゴルフ界の未来を考えた活動もこうやって松山さんはされているじゃないですか、そこに対する思いはどうですか?
松山選手
将来、活躍できるかできないかは分からないですけど、ゴルフ界にいるかどうかも分からないですけど、一つの経験を生かして、世界に羽ばたいていけるような人が増えてくれればいいなと思います。
森田
若いゴルファーたちと接するなかで、松山さんが一番伝えたいのはどんなことですか?
松山選手
自分の持っているものを全て出したいと思っていますし、聞かれたことには全て全力で答えているつもりです。
森田
マインド面なのか、技術面なのか どっちを伝えたいというのはありますか?
松山選手
質問される内容によっても変わりますけど、その人に合わせて答えていければと思っています。
森田
どちらかというと松山さんは自分の戦う姿で見せるタイプですか?
松山選手
喋るのが得意じゃないので、そっちの方が合っているかなと思ってます(笑)
森田
ありがとうございます。トヨタアスリートからもう一問あります。次はトヨタヴェルブリッツ、ラグビー日本代表の姫野和樹さんからの質問です。
「私もゴルフをやりますが、ミスをした後に引きずってしまいます。すぐに次のプレイが始まるラグビーと異なり、ゴルフは考える時間があって、切り替えが難しいと感じていますが、松山選手はどうやって切り替えていますか?」
松山選手
あまり切り替えられていないですね。
森田
それが答えですか。切り替えられていない?
松山選手
次のプレーが始まるので、時間があるようで歩いたりとか、もう次のことを考えないといけないんで、引きずりながらも次のことを考えています。
考える時間はあるにはあるのですが、次のことを考えていないと、その場でいきなり「こういう状況だから、どうしなきゃいけない」っていうよりは、先を想定していかないといけないので、思っているより時間がないです。
プロゴルファーとしてやっていくうえでは、意外とみんな切り替える時間がないと思っているはずです。
森田
そうですか、ミスしたことはパンと忘れられたりしますか?
松山選手
忘れられはしないですよ。やっぱりミスしているので。だけど、次の場所がどういうところにあるんだろう、どういう状況か想定していかないと、とんでもないものがいきなりドンとこられても、耐えきれないので、そういうものを次のショットに向けて準備していきます。
森田
常に準備に追われるっていう感じですか?
松山選手
他のプレーヤーが打った球を見て、どういうボールが転がっていくかとかも見て、こっちからはやっぱり難しいよなとか考えなければいけないので、思ったよりは時間がないと思います。
森田
落ち込んでいる暇はないですか?
松山選手
本当に落ち込んでいるときは、本当に調子が悪いときです。「またやっちゃったよ…」と思いながらも、その次のプレーが今後の自分のプラスになるかもしれないって思ったら、無駄な一打は打てないので、そういう気持ちではいます
森田
そういうときは無理に切り替えようとしたりしないということですか?
松山選手
あまりしないですね。次のことを想定しながら「何でミスしたんだろう。どこが悪かったかな」っていうのを考えながら歩いています。