コラム
2024.12.05
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これを読めば、きっと性別への偏見が減っていく。トヨタのチーフ・サイエンティストが語った驚きの事実

2024.12.05

「男性だから」「女性だから」といった偏見をなくすためには、教育よりも有効な方法があるという...

「女性と男性は、違いよりも、共通点のほうが多い」。

トヨタのチーフ・サイエンティスト兼エグゼクティブフェローであるギル・プラット博士は、参加者に向かってそう強調した。

全員活躍に向けて「女性の活躍推進」を重要課題のひとつに置くトヨタは、今年5月、社員向けにGlobal omen's Conferenceを開催。佐藤恒治社長のほか、大塚友美Chief Sustainability Officerら約160人の社員が参加した。

ステレオタイプに悪意はあるか

今回の記事では、プラット博士の講演を紹介する。

トヨタの科学者として、ダボス会議や経団連モビリティ委員会でカーボンニュートラルに向けて提言を重ねてきたプラット博士。

世の中には、いかに“無意識の偏見”が多いかを痛感させられる内容だ。きっと読者の皆さんもドキッとするような気づきが多いだろう。

プラット博士

まずは、数学の先生と男子生徒の会話を見てみましょう。

解答を間違った男子に対して、先生は「うわぁ、あなたは数学が苦手なんだね」と言いました。

次は女子生徒の場合です。先生は何と言ったと思いますか?

「うわぁ、女子は数学が苦手なんだね」と言ったのです。ひどい話だと思いませんか?残念ながらこのようなステレオタイプはよくあることです。

このように、ステレオタイプに基づいて判断されたことがある人は手を挙げてください。

会場では、多くの参加者が手を挙げていた。そして話は続く。

プラット博士

なぜ、こんなことが起こるのか。悪意があるからでしょうか?

科学的なことをお話しすると、動物は、草むらに潜むトラを見つけ出すように、雑多な情報からパターンを見つけることで生き残ってきました。

危険を見逃すより、過剰に警戒したほうが生き残りやすいため、実際にトラがいなかったとしても、私たちはそこにトラがいると思い込むようになります。

これは「確証バイアス*」の一種で、たとえ信じていたものが間違っていたとしても、今まで信じてきたものを肯定する傾向があります。

*自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向

もしあなたが「草むらにトラがいるかも」と警戒していれば、トラがいるときは必ず見つけ出すでしょう。仮にいなかったとしても、存在しているかのように見えてしまうかもしれません。

そこで、冒頭の漫画についてです。

事実として、学齢期の女子は男子よりも数学の成績が良い。にも関わらず、女子のほうが成績が悪いと誤解されることが多い。

確証バイアスのせいで、女子生徒が解答を間違えると、性別のせいだと思われることがあるのです。

では、データに基づいて「男子だから数学が苦手なんだね」と話せば問題なかったのでしょうか?

それは違います。ステレオタイプという根本的な間違いを犯していることに変わりはないのです。

男女差より、同性内での違いのほうが…

次に「男性だから」「女性だから」という意識が、いかに正しくないかが科学的に語られた。

1960年代、進化生物学者のリチャード・レウォンティンは遺伝子について分析。彼の仮説では「遺伝的変異の多くは、グループ内で起こり、グループ間の変異はほとんどない」という。

男女(グループ間)の違いよりも、同性内(グループ内)での違いのほうが大きいという説だ。

プラット博士

現代のDNA解析では、この仮説がほぼ正しいと裏付けられています。この理論は、男女間の特性にも当てはまるのでしょうか?

アンケートでは多くの人が「男女にはいくつもの違いがある」と答えています。しかし、実際は生殖に関するもの以外、その考えは間違っています。

最大の違いのひとつである身長でさえ、男女の平均身長の差よりも、同性内の差の方が大きいのです。

例えば、長野県の蓼科山聖光寺の住職も私も男性です。しかし、私の妻など多くの女性は住職よりも背が高い。逆に私より背が高い女性もいます。

では、脳の構造についてはどうでしょう。

平均すると男女の脳の違いはほんの少しです。逆に、同性内における脳の構造の違いは、男女差よりもはるかに大きいのです。

次は、性格について。

「あの人は男性だから」「女性だから」と言ったことがある人は、多いのではないだろうか。次のページでは偏見をなくす具体的な方法まで語られた。これは必見だ。

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