
2024年に開かれた技能五輪国際大会と全国大会。トヨタイムズでは、それぞれの大会で金メダルを獲得したトヨタ勢8人による座談会を実施した。

技能五輪という大会がある。
文字通りさまざまな職種で若手技能者が技能を競い合う祭典で、国際大会は1950年、全国大会は63年から実施されている。(国際大会は隔年、全国大会は毎年開催)
競技種目にあたる職種も多岐にわたり、自動車板金や左官といった工業・建築技術から洋裁、レストランサービスといったものまで。2024年9月にフランスで開催された国際大会は59(エキシビション除く)、11月の全国大会は41の職種が実施されている。
2024年、トヨタ勢は2つの大会で17職種(国際大会7、全国大会10)に出場し、7職種 * 8人が金メダルを獲得した。
*「車体塗装」は、国際大会と全国大会それぞれでカウント。

金メダリストはトヨタ工業学園の卒業生
頂点に立った職種について、ごく簡単ではあるが紹介したい。
〈自動車板金〉
指定されたサイズの鋼板をハンマーでたたいたり、裁断、溶接したりすることで課題の形に整えていく。図面に基づいた寸法や形状の正確さ、仕上げの美しさが問われる。国際大会では実際にボディが変形、破損したクルマをたたき出しや溶接によって修繕する。
〈車体塗装〉
車体についた凹みや傷を修復する技能。ムラのない塗装だけでなく、マスキング、色をつくる調色技術も必要。国際大会ではクルマだけでなく「列車、飛行機、静的構造物または家具など、さまざまな品目の塗り替えを求められることがある」技能とも定義されている。
〈プラスチック金型〉
家電製品やクルマに使われるプラスチック製品を成形する金型をつくる。CADを使った部品図の作成、課題に沿った金型製作、その金型でつくったプラスチック製品の出来ばえを競う。
〈メカトロニクス〉
2人1組で実施。工場に設置する生産設備を再現し、設計、組立、調整、プログラミング、保守まで行う。機械や電子など横断的な知識が必要で、速く正確に課題をこなすには連携が重要。
〈機械製図〉
クルマも含めた機械製品の土台となる図面を作成する技能。スケールやノギスといった測定器を駆使し、形状や寸法、製造上許される範囲の誤差といった情報を加えた解答図をつくる。
〈試作モデル製作〉
製品のデザインや強度を検証するためのモデルを生み出す技能。手作業で製作し、図面を読み解く力、木材や樹脂など材料の知識、道具に対する理解が結果の良し悪しを左右する。
各職種の課題は複数あり、事前に公表されるものもあれば、大会当日に提示されるものもあるため、技能の習熟と対応力も試される。
国際大会と全国大会で金メダルを獲得した8人は、期こそ異なるものの全員がトヨタの企業内訓練校「トヨタ工業学園」の卒業生。トヨタでは、学園在籍時から技能五輪に出場する選手を選抜する。卒業後はトヨタ技能者養成所の技能五輪課に配属となり、それぞれの職種に分かれて指導員の教えの下で腕を磨く。

今回、トヨタイムズでは金メダリストを集め座談会を実施。頂点へ至る道のりや、これからの目標などを聞いた。(取材は2024年12月実施)
相方が、ライバルがいるから強くなれる
――改めて皆さん金メダル獲得おめでとうございます。
一同 ありがとうございます。
――国際大会、全国大会ということで、それぞれ舞台は違いますが、改めて大会を振り返ってみて、今の気持ちをお伺いできますか。
試作モデル製作・水野碧泉(以下、水野)

去年の大会で、球体の加工をしていくときに、削りすぎてしまって、時間との兼ね合いで修正できなかった。今年1年、自分自身でも(同じミスをしないように)考えて訓練してきたので、すごく達成感と充実感があります。

メカトロニクス・山崎颯大(以下、山崎)

自分たちも去年29位で、全然賞にも届かず悔しい思いをしていて、今年1年しっかり訓練してきました。その中でも(唐牛と)2人でやるところの難しさに本当に直面する1年だったかなと思っています。結構揉めたりもしましたし、喧嘩もしました。それで訓練が止まって、「どうしよう」となったときもありましたけど、2人とも(金メダルという)想いは一緒だったので、結果を出せたのはもちろん、2人で取れたというところが一番嬉しい部分でした。
――メカトロニクスは今回金メダルを獲得した職種で、唯一2人1組で行う職種でした。2人でやることの難しさ、楽しさみたいなところはありましたか?
メカトロニクス・唐牛桜河(以下、唐牛)

そうですね。難しさで言うと、自分はあまり人付き合いが上手い方ではなくて、そこが課題かなと思っていました。苦手なことに向き合わなければいけなかったんですけど、そこはいいあんばいに距離を保ちつつ…。
一同 (笑)。
メカトロニクス・唐牛 自分はあまり作業のスピードを上げるのが得意じゃないんですけど、相方の山崎は速くて、そういうところでカバーしてもらっていました。逆に自分は回路の考案など、お互い担当しているところを分けて、自分の作業に集中できたのが良かったんじゃないかなと思っています。

――森岡さん、今の話を聞いていてうなずかれていました。機械製図は1人で取り組む職種ですが、思うところがあったのでしょうか。
機械製図・森岡優輝(以下、森岡)

(機械製図は)1人でやる競技なんですけど、僕の同期がものすごく強くて、負けないように頑張ってきました。その同期がいないと僕は(金メダルを取れるほど)強くなれなかったと感じています。
