コラム
2024.12.05
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これを読めば、きっと性別への偏見が減っていく。トヨタのチーフ・サイエンティストが語った驚きの事実

2024.12.05

「男性だから」「女性だから」といった偏見をなくすためには、教育よりも有効な方法があるという...

男女の性格について、プラット博士はこう語る。

プラット博士

「男性より、女性のほうが協調性が高い」と思っている人が多いのではないでしょうか。

平均すると、女性の方が少し協調性は高いですね。しかし男女間の平均的な差よりも、同性内のばらつきのほうがはるかに大きいのです。

ある女性が協調性のある人だとしたら、それは彼女が「女性だから」ではありません。彼女が協調性のある一人の人間だということです。

ある男性が協調性のない人だとしたら、それは彼が「男性だから」ではありません。彼が協調性のない一人の人間だということです。

最後に、ここはトヨタなので運転について見てみましょう。2018年、初心者ドライバーを対象に、1回の運転講習でどれだけ技能が上達したかを比較した研究が発表されました。

結果はどうなったか。

運転初心者の女性は、運転初心者の男性より、自信を持っていませんでした。しかし運転技能においては、そこまでの差は見られませんでした。

女性は、平均して自信のない状態からスタートし、経験を積むにつれて自信をつけていきました。

男性は、運転経験がなくても自信満々でスタートし、経験を積んでも運転への自信はそれほど変化しませんでした。

ただ、すべての男女がこのように感じている訳ではありません。ここでも男女間の自信の差よりも、同性内での差のほうがはるかに大きかったのです。

偏見をなくすには、教育をすればいい?

無意識の偏見をなくすためには、教育によって正しい理解を促せばいいのだろうか。

プラット博士

2023年、TMNA(北米トヨタ)は、AT&Tビジネス社の元CEOであるアン・チョウを、自社のWomen's Conferenceの基調講演に招待しました。

偏見をなくす教育が必要と考えられていましたが、アンは「科学的な研究によると、教育を受けた後でも偏見は残る」と話しました。なぜでしょう?

1つは、先ほどお話ししたように、私たちの偏見は生存過程と共に進化してきたため、教育を受けても、常に私たちの中に残る傾向があるからです。

2つ目に、無意識の偏見を測定する「潜在混合テスト」と呼ばれるものには、科学的な妥当性がほとんどないことが明らかになっています。

最後に「あなたの偏見は間違っている」と伝えることで、その人の憤りや皮肉を買うことがあります。

偏見をなくす教育を受けると「あなたの偏見は間違っている」と相手を説得してしまう傾向があります。その結果、かえって態度を悪化させることもあるのです。

では、どうすれば偏見がなくなるか。

それは、ノーベル賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンが説明しているように、人の心は2つのシステムで構成されていると理解することです。

それは「感情的に判断する速いシステム」と「理性的に判断する遅いシステム」です。

偏見を生みやすいのは「感情的に判断する速いシステム」です。なぜなら草むらの中のトラのような、危険を見逃さないためには速いシステムが必要だからです。

一方「理性的に判断する遅いシステム」は先入観にとらわれにくい。何が真実で、何が嘘かを注意深く考える余裕があります。

速いシステムが生む偏見を取り除こうとするのではなく、それを受け入れ、遅い理性的なシステムで考え直す習慣を身につければ良いのです。

例えば、速いシステムで「あの人は女性だから」「男性だから」と判断してしまっても、遅いシステムをオンにして「男女差より、同性内での違いのほうが大きい」ことを思い出しましょう。

先入観をなくすことは難しい。でも考え直すクセをつければ、偏見をなくせる可能性があるのです。

冒頭の数学の先生が、生徒を指導する際の最善のアプローチは、評価することではありません。共感することです。

最も重要なのは、女性と男性は、違いよりも、共通点のほうが多いということです。

最後に、プラット博士は自らの経験を交えてこう語った。

プラット博士

大切なのは「子育てよりもキャリアを選択する女性」「子育てのために休暇を選択する男性」など、多様な価値観を尊重することです。

私の家族も、一人目の子育てでは妻が「外科医になるためのトレーニング」を選択し、私は「育休」を選択しました。二人目の子育てでは、私たちは役割を入れ替えました。

私たち家族は、人生に対する充実感も得ることができました。妻は病院の仕事のおかげでより良い母親になり、私は子育て経験のおかげでより良いリーダーになれたのです。

本日、この話が皆さんに気づきを与え、他人のことをステレオタイプで判断せず、一人の人間として尊重できるようになれば幸いです。

一人のひとりの多様性を受け入れることは、幸せを量産するだけでなく、トヨタをより強い会社にすることにもつながるのです。ありがとうございました。

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