コラム
2024.04.25

「私服の自分」が世の中を変える? "時間外"が起こすイノベーション

2024.04.25

誰かに命じられたわけでも、仕事が残っているわけでもない。トヨタ社員が業務時間外に集まる理由とは?

人生100年時代、元気でいよう

2023年度の優勝アイデアは「定年〇モ(まるも)計画」。定年を迎えた会社員が元気でいられるよう、退職の数年前からサポートするという事業内容だ。

「〇モ」とはクルマのフルモデルチェンジを指す用語。人生を前向きに変えるという意味が込められている。

実際に定年が近いメンバーがチームを組み、顧客課題に向き合った。

趣味が無い、家庭での過ごし方が分からないなど、定年後にはさまざまな問題が起こりやすい。セミナーや参加者同士のワークショップを通じ、それらに早期に備えられるコミュニティ運営を目指した。

人生100年時代では60歳半ばで退職しても、約40年の定年後の日々が待っている。その期間を不安に過ごすのはもったいない、という思いが事業アイデアを生んだという。

「誰もが定年後も元気でいられるようにしたい。家庭にこもりっきりになるのではなく、活動的になれるサポートを」。チームリーダーとしてプレゼンを務めた車両技術開発部の富山雅弘が語った。

次のステップとして、定年間近のトヨタ社員を対象にしたコミュニティを発足。規模が大きくなれば、社外に向けたNPO立ち上げも検討していくという。

すべて自分次第、だから面白い

過去にA-1で発表されたアイデアは、社外起業や社内イベントなどで実現することが多い。

ソフトウェアPF開発部の中井は、2018年のA-1で「ラジコンを使った自動運転プログラミング教育」を立案。

その年の最優秀賞は叶わなかったが、トヨタ技術会とのコラボや子どもたちへのボランティアとしてアイデアを実現。

賞金も予算も出ないA-1だからこそ、自分の意志が重要と語った。

中井

A-1を走りきったとき、アイデアを形にするもしないも自分次第だと気づきました。

だったら能動的に動いて、やりたかったことをやろう。A-1で自分の知らなかった面白い人たちに出会えたんだから、そのつながりを活かそうと思った。

自分が主体になって動けば、新しいことが始められる。A-1後は自然にそう考えられるようになっていました。

社内コミュニティやボランティアなど、A-1後のゴールは多岐にわたる。

山下CDOは「事業化にこだわり抜いてビジネスにするもよし、社内イベントに決着するもよし。良い意味での等身大感があるからこそ、自分で道を決められる」と語った。

ある社員は、A-1をきっかけにキャリアが変わったという。

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