誰かに命じられたわけでも、仕事が残っているわけでもない。トヨタ社員が業務時間外に集まる理由とは?
私服の自分を変える
A-1は有志活動のため、優勝しても事業化の予算や人員が与えられることはない。アイデアを実現させるか否かは、その後のチームの努力にゆだねられる。
それにも関わらず、参加者のアイデアに向き合い、自身の知見を共有しようと役員クラスも審査員として力を貸している。
山下義行 Chief Digital Officer(CDO)は、時間外だからこそ期待することがあるという。
山下CDO
A-1には良い意味での“阿呆”、世の中を良くしたいと本気で思っている人が集まる。だからこそ会社の枠組みから離れ、自由なテーマでそれを突き詰めて欲しい。
会社の仕組みとしてコミットすれば、収益や目標に縛られてしまう。それを否定するわけではありませんが、A-1では私服の想いを大切にしてほしい。
自分の目指すものに、自分の時間で取り組む。トヨタを変えるのではなく、自分を変える。
それが結果的に、トヨタや世の中に新しい価値を生み出すかもしれません。
失敗と挑戦ができる場所
会社の仕組みに頼るのではなく、まずは自分を変える。A-1発起人の1人であり、人事業務に携わってきた島貫洋平も重要性を語った。
人事部 島貫
クルマづくりを通じた社会への貢献。創業以来それを続け、その過程でさまざまな仕組みをつくってきた。それがトヨタの大きな強みだと思いますし、A-1事務局も会社の価値観に強く共感しています。
反面、仕組みがよくできているからこそ、殻を破る経験ができない人も多い。A-1で仕組みの外に出て想いを実現することができれば、その人の成長にも新たな価値創出にもつながるはず。
普段の業務では出会えない多様な人とつながり、企画から実行まで取り組めるのも有志活動ならではです。
過去の労使協議会では失敗と挑戦がテーマになりました。しかし、お客様のいるクルマづくりでは、失敗できない場面も少なくない。
有志活動だからこそ、失敗を恐れず挑戦するきっかけになってくれればとも思います。
A-1立ち上げ当時、豊田章男会長(当時社長)の「バッターボックスに立とう」という言葉に触れ、発足メンバー間に「今までにないチャレンジを始めなくては」という思いが生まれた。
与えられた仕事の枠を飛び越えて「世の中をもっと良くしたい」という意志を実現できる場所があれば。仕組みに頼らず、時間外から新しい価値をつくりたい。
そんな志を同じくした仲間が経営支援、製品企画、業務改善、デザイン、調達などさまざまな部署から集まり、A-1 が始まった。
まだ世の中にない価値を生むかもしれないA-1。2023年度の優勝アイデアが、早速形になろうとしていた。