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整備業界にトヨタができること 現場のための"マッチングサービス"とは?

2023.07.20

人材不足や設備投資負担など、課題が尽きないクルマの整備業界を支えたい。トヨタのマッチングサービスを取材した。

中古品なんて怖くて買えなかった

「メカコミの開始以前から中古設備の売買はありましたが、大抵は買い取ったものをそのまま出品して終わり。設備の状態が分からない中で購入するケースがほとんどでした。メカコミでは専門業者が中古設備をメンテナンスし、安心して使えるようにしています」

中谷主任はメカコミのメリットをこのように語る。

クルマは一つの故障が重大な事故を引き起こしかねない。自動車整備士にとって、使う道具が信頼できるかどうかは、購入を判断する重要事項だ。

実際にメカコミを通じて中古品を購入した整備工場で話を聞いた。

愛知県岡崎市に創業して60年。カーサービス南部電装3代目の杉田雅史社長は、コストを抑えるため、インターネットで中古品を探すことがあるという。しかし、安全性への不安が購入の手を止めてしまう。

南部電装 杉田社長

メンテナンスされていない中古設備を購入すると、様々なリスクが生じます。例えば、購入してもすぐに壊れてしまい、新品を買い直すことになった場合、整備工場の経営は大打撃を受けます。

それ以上に、お粗末な中古設備でお客様のクルマをきちんと整備できず、故障を放置する最悪の事態を招く可能性もあります。

なので、web上で中古設備を見つけるたび、状態について問い合わせようとしますが、そもそも連絡先が分からないのがほとんど。何とか連絡できても「自己責任でお願いします」というコメントが返ってくるばかり。

「中古品に品質を求めるなんて」という声もあるかもしれません。しかし、安心して使えないものは決して購入できないというのが現場の本音です。

お客様の安全・安心を守るうえで、安くても信頼できない中古設備は買えないと言う杉田社長。メカコミについては、どのように感じたのか。

杉田社長

メカコミのwebサイトを見つけたとき、トヨタの名前と共に問い合わせ用の電話番号が載っていたのに安心しました。

中古設備の品質について問い合わせるなんて非常識。通常なら面倒くさい客と思われて終わりです。しかし、メカコミは窓口を用意していて、私の質問にも丁寧に答えてくれました。

私たちが中古設備を購入するうえで、一番に求めるのは“安心”です。専門資格をもった技術者によってメンテナンスされているかを真っ先に確認します。

整備工場を経営するうえで、安心して使える中古設備が普及するのはありがたい。信頼できる中古品を流通させるサービスとして、今後のメカコミの発展に期待しています。

メカコミで購入したヘッドライトテスターを見せてもらった。新品では100万円程度かかるが、メカコミではメンテナンスされた後、15万円から25万円ほどで出品されている。

中古設備を使ううえで欠かせない“安心”。メカコミにおいて、この重要な要素を守る役割を担っているのが、中古設備の査定・メンテナンスを行う専門業者、エステック。

辰身英悟社長は、メカコミの取り組みについてこう語っている。

「単純に中古設備を売るのでは、誰も喜ばない。信頼できるサービスでなければ、業界の皆さんに使ってもらえない。中谷さんとそんな話をして、我々の査定・メンテナンスが“安心”に一役買うなら、とメカコミへの協力を決めました」

「日本全国を探しても中古設備をメンテナンスして販売する企業、サービスはほとんどないです。メカコミが業界のスタンダードになれば、整備工場に中古設備が普及するはず」

エステックの辰身社長。整備の現場に中古設備を普及させるため、今後もメカコミとの協力関係を継続したいと語る。

捨てるために、お金を払っていた

では、中古設備を出品する側は、どのようなメリットを感じているのだろうか?

横浜市中区に拠点を置くウエインズトヨタ神奈川は、使わなくなった設備の買い取りをメカコミに依頼している。

これまではクルマを持ち上げるリフトの処分に約200万円の費用が発生するなど、設備廃棄に高額なコストがかかっていた。それがメカコミにより低減されたと言う。

ウエインズトヨタ神奈川 サービス部 三浪勝徳室長

「自分たちはリユースできるものを捨てているのではないか」という葛藤がありました。中古設備は安全性に懸念があり、整備業者が手を出しづらいというのは承知していましたが、捨てる以外の選択肢はないのかと。

メカコミに使わなくなった設備の買取・査定を依頼するだけで、処分コストが消え、収入に繋がりました。むやみに廃棄物を増やさず、設備も必要な人に使っていただけますし、買い手と売り手、両方にウィンウィンなサービスだと思います。

2022年にサービスが始まったばかりのメカコミ。さらなる成長が期待される一方で、整備現場の課題は待ったなしの状況だ。

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