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知られざる「廃車後の世界」。愛車は、形を変えて生き続けていた

2022.10.05

約3万点の部品でつくられたクルマを、99%もリサイクル?「廃車後の世界」にカメラが潜入した。

1トン超のクレーンゲーム

解体業者に運ばれたクルマは、廃油などを抜いた後、バンパーやドア、エンジンなど中古部品として使えるものを取り外す。そして残りはプレス機で圧縮され、廃車から資源を生み出すリサイクル会社へと運ばれる。

今回我々が訪れたのは、愛知県半田市にある「豊田メタル」。世界で唯一、自動車メーカーが経営に参画しているリサイクル会社だ。

四角くプレスされたクルマの塊は、1台で約600kg。それをクレーンゲームのように複数台同時に軽々と持ち上げ、シュレッダー機に投入。いとも簡単に粉々になっていく・・。

その後、コンベアで建屋内へ運ばれ、「鉄」と、アルミや銅などの「非鉄金属」に選別。量は多くないが、金、銀も含まれるそうだ。

選別された鉄は、製鉄会社へ運ばれ再びクルマのボディになることも。まさに“クルマから、クルマがつくられる”のだ。

驚愕の選別。すべてを資源に変えていく

金属を回収した後は、樹脂やウレタン、ガラスなどの「シュレッダーダスト」と呼ばれるものが残る。

素人の我々には、ゴミにしか見えないシュレッダーダスト。しかしここからも資源を取り出すという。ここに紛れている樹脂などは更にリサイクルできるなど、選別すればゴミではなく資源になるのだ。

金属とプラスティックを選別。センサーで検知し、金属だけがエアーガンで上に弾かれる
下から風を送り、ウレタンなど軽いものと重いものを選別

廃車から、1日400トンの資源

豊田メタルの松本社長は、豊田通商で環境リサイクルの仕事を歴任後、2019年から豊田メタルへ。「20年前はスクラップ業者だと思われていた」と、苦笑いしながらこう続ける。

豊田メタル 松本忠 代表取締役社長

ほとんどの人がリサイクルに思いが至らなかった1970年に、資源再利用への強い使命感を持って豊田メタルはスタートしました。

我々には、要らなくなったクルマを、資源としてよみがえらせているという自負があります。現代社会にはリサイクルされ、再利用されるのを待っている膨大な資源があり、それらを掘り起こして循環型社会の構築を目指しています。

自動車のカーボンニュートラルも、「つくる時」や「つかう時」だけではなく廃車をどう扱うかが非常に重要だ。また欧州では、リサイクル材の使用が一定基準を超えていないと新車を販売できないという規制も始まろうとしている。自動車メーカーがリサイクル会社の経営に参画する意義はますます大きくなっていく。

そしてもう一人、取材に応えてくれた夏目さんは、転職して豊田メタルに入社したそうだ。

豊田メタル 経理・総務部 夏目博崇

前職はトヨタの販売店の営業で、カローラを売っていました。下取りでボロボロだったクルマがどうなっていくのかが気になり入社しました。豊田メタルでは1日最大で、クルマ1000台から、400トンもの資源を取り出しています。

1日400トン。これがゴミとなるか資源となるか、その差はあまりにも大きい。ある社員はこのように話してくれた。「リサイクルは、地球にいちばん優しい仕事だと思う」。

「1%の謎」と「どこかで生き続ける愛車」

ところで、99%リサイクルされている残りの1%について聞いてみた。

豊田メタル 松本代表取締役社長

残り1%は、金属類を回収した後のミックスゴムなどを燃料として活用。そこで出た灰のようなものは、道路をつくるときに固める路盤材などに使われることが多いです。

なんと、1%ですら社会に役立つ形で活かされていた・・。最近は自動車に限らず、あらゆるメーカーが豊田メタル視察に訪れるという。ここは解体現場ではなく、資源を生み出す最先端の現場なのだ。

豊田社長はよく「クルマは、“愛車”と愛を付けて呼んでもらえる数少ない工業製品」だと話す。我々も、これまで何台もクルマを乗り継いできた。あの頃、人生を共にした懐かしい愛車が、今この瞬間も、どこかで形を変えて生き続けているのだと心を打たれた。

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