MBA取得を目指すかたわら、日本でトヨタのインターンに参加した2人の留学生。トヨタで得た学びとは?
中東でも身近なトヨタ
中東とトヨタの歴史は古い。1954年のクウェートを皮切りに輸出をスタートし、現在では中東、中央アジア16カ国に現地資本の販売代理店がある。
売れ筋はランドクルーザーやハイラックスといった大型車で、トヨタの中東でのシェアはナンバーワンを誇る。
そんな地域からやってきた2人へトヨタのインターンに応募した理由を尋ねた。
――トヨタという会社でのインターンを申し込んだ理由は何ですか? トヨタにどんなイメージを持っていましたか?
アハマド
父がカローラに乗っており、自分が働いていた石油採掘の現場では、多くのランドクルーザーが使用されるなど、トヨタ車は身近な存在でした。
採掘現場は、砂漠の果てにあります。ランドクルーザーはそういった環境で、安全に作業するための唯一無二のパートナーであり、私自身も大のランクルファンです。
トヨタは世界中どこでも知られている企業です。そんなグローバル企業での経験は、自分の知識やスキルの向上につながると思いました。
特に、エンジニアなら誰しもトヨタ生産方式(TPS)を知っています。ムダを徹底的に省き、余計な在庫を抱えない。すべての産業に通じるTPSについて学びを深めたいと思いました。
イブラヒム
私も父が石油関係の仕事をしており、ランドクルーザーを使っていました。周囲もみんな「クルマと言えばトヨタ」。耐久性や信頼性のイメージがあります。
私が日本に来た理由の1つは、大学で学んでいたトヨタやTPSについて理解を深めたいと考えたからです。このインターンシップについて聞いたとき、とてもワクワクして「やっとトヨタの人と話ができる」と思いました。
志望動機書は1枚で良かったのですが、どう減らしても2枚にしかならないくらい、「なんとしてもこのチャンスをつかみたい」と興奮していました。
2人がトヨタで学んだこと
インターンの大半はリモートで実施。TPS、TBP(Toyota Business Practice:トヨタの問題解決手法)などを座学で学びつつ、トヨタの販売店や工場などの現場も訪問。2人にこの間の学びやトヨタのイメージの変化について質問した。
――インターンの中で印象に残ったこと、勉強になったことはどんなところですか? またトヨタのイメージはどう変わりましたか?
アハマド
TPSに加えて、TBPのステップを実際に学び、問題解決に非常に役立つと感じました。何が本当の問題なのか、徹底的に真因を追求する。そのうえで対策を打つ。それが標準となり、他の部門や職場に広げていく。
ユニークで優れたこの手法は、今回のインターンシップで最も価値のある学びでした。
また、トヨタの人と出会う中で、人を大切にする企業風土を知ることができました。トヨタウェイには、「『だれか』のために」や「『ありがとう』を声に出す」といった行動規範があります。
難民支援活動の一環で、レバノンでは車両提供を行っていることを教えてもらいました。日本のある販売店では、地域の高齢者の移動を支える取り組みを見せてもらいました。
トヨタが、人々や社会を本当に気にかけていることに感銘を受けました。儲けることだけを考えている企業ではありません。トヨタへのリスペクトが以前よりも強くなりました。
イブラヒム
工場では、すぐにセンサーをつけて自動化するのではなく、余計なお金をかけず、知恵を使った改善が大切だということを学びました。
九州のレクサス工場に行ってとても驚きました。最先端の設備やセンサーが並ぶ姿をイメージしていましたが、からくりを駆使したすごくシンプルなものでした。
全工程で1秒、1円にこだわって改善を加える。小さな積み重ねが利益につながっていることを理解しました。
トヨタのイメージも変わりました。それまでは、クルマや生産ラインなど、無機質なイメージでしたが、トヨタで働く人と出会うことで、人間的な温かい側面を知ることができました。
インターン初日には、オンラインで80人以上の人が迎えてくれました。私たちをそれほどまでに歓迎してくれたことに、心から驚きました。上司と部下とのやり取りを見ていても、非常に家族的だと実感しました。
トヨタの長年にわたる販売店、仕入先との関係にも感銘を受けました。
世界一の自動車会社として、利益や台数を最も大事にしていると思っていました。しかし、それ以上に、販売店や仕入先との信頼関係を築くことを大事にしていて、互いに助け合い、困りごとを一緒に解決する。非常にユニークな関係だと感じました。