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機械ではなく、人にしか感知できないこと。これぞクルマ屋の真髄

2023.03.09

「もっといいクルマづくり」の重要拠点、凄腕技能養成部を徹底解剖する企画。今回は、数値化できない"乗り味"の正体について。

GR86とランクルの乗り味は同じ。その真相は…

ひとつ疑問に思うのは、「トヨタらしい乗り味」と言っても、コンパクトカーとスポーツカーでは、味が違うのではないかということだ。矢吹久主査はこう話す。

矢吹主査

トヨタらしい乗り味は、ヤリスでも86でも商用車でも、すべて同じです。「Confident & Natural」という考え方が軸となっています。

車両の反応が安定しているから「安心」、操作に対する車両の反応が「自然」。そう感じられる「人を中心に置いたクルマづくり」です。

人間はリズムで運転しています。だから、いいクルマとは、感性が合うクルマです。ハンドルやアクセル操作で心地よいと感じるリズムは、ランクルでも86でも同じ。

幹の部分がしっかりしていると、枝葉の部分で味付けを変えられる。たとえばスポーツカーだからいい音を出そうというように。

では、電動化や自動運転という潮流で、評価ドライバーの仕事はどう変わるのか。まず電動化については、大阪GXがポジティブな手応えを感じていると語った。

大阪GX

モーターの特徴は、エンジンに比べると応答性がいいことです。アクセルを踏んでも離しても、レスポンスがいい。だから人間の感性に合わせやすいので、より乗りやすいクルマに仕上げられる可能性を感じています。

自動運転について、矢吹主査はこう語る。

矢吹主査

自動運転だろうがなんだろうが、乗っているのは人間。だから人間が不快に感じない動きが求められるのは、自動運転でも同じです。

機械がハンドルを切ったりブレーキを踏んだりしても、その良し悪しを感じるのは人間なので、人間の感性でクルマを評価する仕事はこれからも重要だと考えています。

電動化と自動運転の時代こそ、評価ドライバーの役割がより重要になるのかもしれない。

豊田市の山奥にある、恐怖の道

矢吹主査は、新型プリウスを走らせ、トヨタテクニカルセンター下山の第3周回路(通称カントリー路)を案内してくれた。

愛知県豊田市の本社エリアからクルマで約30分、東京ドーム138個分の広大な敷地。2019年に最初に完成したのが全長5.3km、高低差75mの第3周回路だ。

コースの設計にあたっては、ドイツのニュルブルクリンクを走り込んできた矢吹主査の知見が注ぎ込まれた。助手席から見ていても難易度の高さが分かるコースである。

たとえば緩やかなコーナーだと思って、速度を保ったまま進入すると、徐々にタイトになっていくコーナーが多い。矢吹主査はコースレイアウトの狙いについて、こう説明してくれた。

矢吹主査

旋回をしながら、さらにハンドルを切り増していく。そういう追加操舵をしたときにクルマが思い通りに動いてくれるのか、それを確認できるテストコースが実は少なかったんです。

勾配のある直線路だと思って加速すると、急遽、下り坂に。クルマがふわっと浮き上がる感覚に襲われる。

ジャンピングスポット。タイヤは路面に接地しているものの、サスペンションのストロークが伸びきっているのが分かる

矢吹主査

速度を上げるとジャンピングスポットになる場所が7箇所あります。

路面に起伏をつけて荷重が抜けるような場所も設定しましたし、一般道ではあり得ない上下方向の入力が入る場所もあります。クルマにはかなり厳しいコースです。

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