「知らなかった!」車いすユーザーが飛行機に乗るとき実は...

2026.07.23

JAXAの研究施設を直撃取材!車いすのワンタッチ固定装置は飛行機に搭載できるのか?

ジャムコ 航空機内装品デザイナー 萩原久也

実際の運用を考えれば、課題は大量にあります。固定するためのアンカーバーの共通規格化や、機内の狭い通路を通れるのか、トイレ利用時のサポート、さらに航空機特有の認証やコストの問題も…。

飛行機は一度離陸すると逃げ場がなく、食事や睡眠などの生活空間でもあります。だから安全性だけでなく快適性も必要。

すべてを解決しようとすると前に進めないので、実証実験を繰り返し、国内線の小型機などで成功例をつくることを目指しています。

JAXAがなぜ宇宙以外を?

今回の取材場所は、調布飛行場のすぐ横にあるJAXAの調布航空宇宙センター飛行場分室だ。JAXAと聞くと、多くの人が宇宙をイメージするだろう。

JAXA調布航空宇宙センター飛行場分室から見た調布飛行場

しかし、実は航空技術の研究も歴史は長いという。

移動時間の常識を変える超音速機や、カーボンニュートラルを目指す電動航空機はもちろん、近年は航空分野におけるバリアフリーやユニバーサルデザインの研究にも力を入れている。

JAXAのような公的研究機関は、より長期的な視点で未来の技術に取り組むことができる。

本プロジェクトでも、JAXAは当事者の声を集め、研究の方向性を示し、トヨタやジャムコ、航空業界、行政などをつなぐ“旗振り役”を担っている。

JAXA 航空技術部門 主任研究開発員 安岡哲夫 博士(工学)

車いすユーザーといっても、一人ひとり求めているものは違うので、一つの解決策だけですべてを網羅できません。

すこしでも多くの選択肢をお届けして、自分に合ったものを使っていただくことが重要だと思っています。

その想いはトヨタも同じだ。

2025年、TOYOTAブランドの新ビジョンとして「TO YOU」を掲げた。

最大公約数としての「みんな」に向けたモノづくりではなく、一人ひとりの「あなた」をめがけて商品をつくり続ける。その積み重ねが「Mobility for All(すべての人に移動の自由を)」に近づいていく。

意志ある行動こそが未来を変える

ワンタッチ固定装置の挑戦も、まさにその一つだ。

CV統括部 稲熊幸雄 主査

将来、バスが自動運転でより便利になっても、車いすの固定に時間がかかるままだったら、車いすユーザーだけが取り残されてしまう。そんな世の中にしてはいけないと思うんです。

飛行機は、他の乗り物と移動できる距離がまったく違う。

クルマ、バス、船、さらに飛行機までをシームレスにつなげば、自分の車いすのまま世界中を旅することができ、多くの人の移動の可能性が一気に広がっていくと思います。

前出の渋谷さんは「自分の車いすのまま飛行機に乗れ、機内のトイレにも行ける。身体への負担を減らし、障害の状態に合った乗り方を選べる空の旅になっていけば嬉しいです」と、この取り組みへの期待を寄せる。

誰もが移動をあきらめなくていい社会へ。一人ひとりの「あなた」をめがけた挑戦の先にどんな未来が待っているだろうか。

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