2025年に発表したTOYOTAのブランドコンセプト「TO YOU」。その想いやコンセプトに基づいたアクションを紹介する特設サイトがオープンした。
2025年秋、トヨタが発表した新しいブランド戦略。Centuryを一つのブランドとして立ち上げ、LEXUSやTOYOTA、GR、ダイハツとともにフォーメーションを再構築し、ビジョンを示した。
CENTURYは「One of One」。
LEXUSは「DISCOVER・誰の真似もしない」。
GRは「THE SOUL LIVES ON.」
ダイハツは「わたしにダイハツメイ。」
そしてTOYOTAは…「TO YOU」。
直訳すると「あなたに向けて」「あなためがけて」といったところか。
CENTURYやLEXUS、GR、ダイハツのクルマなら、何となく運転する人、乗る人のイメージもできるかもしれない。
でもTOYOTAは?
TOYOTAブランドのクルマはたくさん。ヤリスもアクアもクラウンもアルファードもランクルもMIRAIも…。もっと言えばe-Paletteや月面探査車ルナクルーザーだってTOYOTAブランドだ。
“YOU”と言っても千差万別。
「そもそもトヨタは『Mobility for All(すべての人に移動の自由を)』って言っていたのでは?」
昨秋のブランドコンセプトを発表したトヨタイムズニュース。ご覧になられた方の中には、そう思った方もいるかもしれない。
そんな疑問にどこまで答えられているかは分からないが、この度「TO YOU」の下での取り組みなどを紹介する特設サイトがオープンした。
「TO YOU」に込めた想いや願いを少しずつでも知ってもらえたら嬉しい。
Mobility for Allじゃないの?
さて「Mobility for All」と「TO YOU」の違いだが、前者はコーポレート、つまりLEXUSやCenturyも含む“トヨタという企業”のビジョン。後者はTOYOTA単独のブランドビジョンのこと。
こう言ってしまうと簡単だが、これではあまりに味気ない。
そもそもTOYOTAブランドとは、街中でも見かけるオーバルマークをつけたすべてのクルマが、それに当たる。
先述した通り、このマークを付けたクルマは多種多様。
「『TOYOTAブランド』が目指すものを一言で表すにはどうしたらいいんだろう?」
ブランドコンセプトをつくったチームも悩んだ。悩んで悩んで…それでも分からなかったから、現場にヒントを求めた。
まず話を聞きに行ったのは、大衆車の代名詞ともいえるあのクルマの現場へ。
「将来のカローラをどうしようとしているか?」
カローラは“for All”?
1966年の誕生以来、たくさんの国で親しまれているカローラは“for All”を体現するクルマなのかもしれない。
でも、国内のカローラだけを振り返ってみても、ずっとセダンだった訳ではない。クーペだったりハッチバックだったり、ワゴンがあったり。(もちろん売れなかったものもある)
日本を飛び出してみても、海外の土地に応じて形を変えてきた。
時代や道に合わせて求められる姿を実現してきたクルマがカローラだ。
現場で話を聞いた際も「将来のカローラをいろいろな国のさまざまなお客様に求められるクルマにしよう」と企画開発が進んでいた。
じゃあカローラは、いつ、どこで、誰が乗っても良いクルマであるように、最大公約数をカバーするようなクルマを狙っているのかというと、そうではない。
例えばトヨタがマルチパスウェイ戦略を説明するときによく使っているが、エネルギー事情は地域によって違う。同じ街で暮らしていても、BEV(電気自動車)が便利な人もいれば、HEV(ハイブリッド車)が便利という人もいる。ガソリン車ではないと生活できない土地だってまだまだある。
どんなエネルギー事情でも生活事情でも、そこにいる誰かが乗りたいと思うカローラをつくる。もっと言えば、それらを効率的につくって稼ぐ力をつける。
これがカローラの開発企画ということだ。
ベースにある想いは「Mobility for All(すべての人に移動の自由を)」。だけど、いざ「クルマにしよう」と始めると、その視点は“for All=最大公約数”ではなく、一人ひとりのお客様の顔を浮かべながら考える、つまり“TO YOU”の視点だった。
ブランドコンセプトをつくったチームは、もう一台、別のクルマの開発現場にも足を運んだ。
仕上げはアフリカで
「IMV origin」。このクルマはアフリカ・ケニアで暮らす人々に寄り添ってつくろうとしている。ジャパンモビリティショー(JMS)2025でも展示されていたので、ご覧になった方もいるかもしれない。
「経済的に余裕はない」「バイクでたくさんのモノを運んでいる」「整備された道は少ない」といった事情があるなかで、その人たちの生活にクルマがいかに役に立てるのか?
このクルマには、そんなことが考えられていた。さらには、完成車一歩手前の組み立てキットの状態で輸入され、最後の作業は現地で行うということも想定されている。
それはアフリカで新しい仕事をつくるため。
新しい仕事が生まれれば、給料が発生する。そうすると今までクルマを持っていなかった人も、持てるようになるかもしれない。また別の新しい仕事が生まれるかもしれない。
そんなことまで現地の人と一緒になって考えられている、“TO YOU”の想いが込められた企画だった。
“TO YOU”は昔からあった
「Mobility for All(すべての人に移動の自由を)」は、モノづくりを企画する際に通底している想い。トヨタの従業員に深く浸透している。
ただ、いざつくり始めようとしたとき、そこには“for All=最大公約数”なんて考え方はなかった。
誰かの顔を想像して「その人“目がけて”つくる」。これがオーバルマーク付きの商品群、“TOYOTAブランド”の大切な考え方であり、それがたくさん積み上がっていくと、自ずとMobility for All に近づいていく。
こうして“TO YOU”という言葉が誕生した。(もちろんTOYOTAの“TO”と“YO”との相性が良いという、ダジャレ的な考え方もあったらしい)
すでにピンと来ている方もいるかもしれないが、「誰かの顔を想像して『その人“目がけて”つくる』」という考え方は、トヨタの原点にもつながっている。
豊田佐吉がつくった木製織機。これは苦労して機を織る母親を楽にしてあげたいという想いから佐吉が発明したもの。
今に続くトヨタの“モノづくりのフィロソフィ”であり、この想いを現代版に置き換えたものが「TO YOU」という言葉なのだ。
ただ、ずっと大切につながってきた訳ではない。トヨタも台数・シェア・収益といった数字ばかりを追い求めてしまっていた時期がある。
この当時は北米という最大の市場ばかりに目を向け、最大公約数的なモノづくりになっていたかもしれない。
そんな中、2009年に社長に就任した豊田章男会長が、全従業員に向けて呼び掛けた「もっといいクルマをつくろうよ」。以降も「町いちばんのクルマ屋を目指す」「地域軸と商品軸で経営する」といった言葉と行動で、数字をつくる会社からクルマをつくる会社へと戻してきた。
あなたをめがけたモノづくり
「TO YOU」は、モノづくりの会社であるトヨタが、これからも大切にし続けないといけないフィロソフィを端的に表している。
大きいクルマから小さいクルマまで、
エンジン車からBEVやFCEVまで、
日本のクルマからアフリカのクルマまで、
地球を走るクルマから月を走るクルマまで。
オーバルマークをつけたTOYOTAブランドには、誰かの笑顔を想像しながら仕事をする、「あなためがけたモノづくり」という共通の想いが流れている。