なんとトヨタが大豆をつくっていた!豆乳や湯葉、ラーメンまであるって本当!?

2024.10.01

本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は自動車会社の国産大豆?

この大豆では難しい?その真相とは…

京都の老舗・ゆば庄。ここでも高オレイン酸大豆を使ったトヨタとのコラボ商品開発は進む。しかし、ゆば職人から「この大豆ではおいしい湯葉がつくれない」と言われてしまった。

この声に対して、ゆば庄の橋本社長は「今までにない新しい大豆だからこそ、新しい商品がつくれる」とポジティブに捉え、開発に踏み切った。

職人の試行錯誤の末、完成したくみあげ湯葉や大豆拉麺は、高オレイン酸大豆の甘みと風味が凝縮された味わい深いものとなった。

ゆば庄 代表取締役 橋本慶一郎さん

日本は大豆の食べ方が多彩で、湯葉や納豆や味噌など、大豆だけでいくつもの専門店があるのは海外から不思議がられます。そこには日本の技術力があり、だからこそ大豆を高付加価値化すればもっと売れると思います。

通常の大豆麺はくさみが残りやすいのですが、この高オレイン酸大豆の拉麺は青臭さを感じることなく、美味しく召し上がっていただけます。この大豆の特徴を活かすことで用途の幅が一気に広がります。

アグリバイオ事業室 吉田篤司

2024年5月に富士スピードウェイで開催された「S24時間レース“オールナイトFUJI”」では「ゆば庄」さんが運営するカフェも出店しました。

高オレイン酸大豆を使った大豆拉麺やシュークリームなどS耐限定の商品を販売し、モリゾウ選手やルーキーレーシングの皆さんからも「おいしい」と好評でした。

なぜ、儲かる農家が少ないのか

我々は、トヨタと一緒に大豆生産を進めている滋賀県の大豆の生産現場も取材。農業の未来を明るく変えようと奮闘する経営者の話には大きな納得があった。

イカリファーム 代表取締役 井狩篤士さん

農業は生きていくうえで必須の産業。先人たちが命がけで守ってきた。でも離農する人が多いんです。農業系の大学を出ても農家になる人は1割もいないのが現実で…

僕も親が苦労しているのを見てきたので、継ぐ気はありませんでした。でも北京大学に留学中、アジア出身の友人から「絶対に農業をやるべき」と言われたんです。

いつまでもお金で食料を買えると思っていたら大間違い。食べ物がなくなったら人は死ぬんだよと教えられ、農業に従事することを決意しました。

とはいえ、日本の多くの農家はあらゆる苦境に追い込まれている。だからこそ井狩さんはあることを考えた。

イカリファーム 代表取締役 井狩さん

農家が儲けると“良く思われない風潮”も感じます。でも経営者として儲かる農業を追求しました。社員や協賛者、そして地域に還元するために、1円でも多く利益を出したい。

コスト意識を持てば農業は明るい産業になる。なのでトヨタの改善により生産性を向上させる仕組みに共感しました。

まずは整理・整頓から。スコップを探す時間や何度も買い足していたムダなど、あたり前のことから改善していくうちに、困りごとに気づいていないことが困りごとなんだと社員のみんなの意識も変わったんです。

高オレイン酸大豆の栽培の提案をもらった時は、コンセプトがはっきりしていて、付加価値の高い大豆にやりがいを感じました。今後も収量の高い品種などの開発を期待しています。

最後に、トヨタが品種開発だけでなく、パートナーと商品開発まで行う理由を聞いた。

アグリバイオ事業室 嶋本泰代 主任

アグリバイオ事業室 鈴木誠グループ長(左) 嶋本主任(右)

新しい品種をつくっただけでは普及させることは難しく、大豆の魅力を活かした商品づくりを進める必要があります。

品種開発から栽培支援、商品開発までを一気通貫でつなげば、生産者やメーカー様、消費者にも喜んでいただけるし、農業全体が盛り上がると思うんです。

高オレイン酸大豆を開発する黒笹圃場にて。女性やベテラン社員がイキイキと働ける職場のモデルケースになっている

トヨタのアグリバイオ事業の認知度はまだ低い。だが、地道な活動こそが仲間を広げ、ラーメンやパンなど、大豆が原材料ではなかった商品にもイノベーションが起こり始めている。

農業に関わる人から消費者まで、まさに「HAPPY AGRI」の名の通り、多くの笑顔とともに取り組みは続く。

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