都合がよすぎる!? 座るだけで健康に?トヨタが開発する驚愕の椅子とは

2024.06.18

本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は夢のような椅子!?

まずはこの椅子を見ていただきたい。

※座面は既製品を購入後当社で加工。本来の使用目的とは異なります

実はこの椅子「座っているだけ」で「運動していること」になるという。どういうことか意味が分からないと思うが、答えは椅子の裏側に…

座るだけで運動?その理由は…

3本の支柱のうち1本だけが短く、人が座ると座面がわずかに傾く。この3本の支柱が下記動画のようにぐるぐる回転することで座面の傾く方向が360度、刻々と変わるのだ。

気づかない程度の傾斜で、1分以上かけてゆっくり一周。人間には無自覚で姿勢を維持しようとする「姿勢反射」という本能があるため、頭は固定されたまま骨盤は自然と動くことになる。

つまり「座るだけで筋肉が緊張と弛緩を繰り返す」状態になれるのだ。

体幹を鍛えるバランスボールとも似ているが、バランスボールは一方に傾くと傾きっぱなしだが、この椅子は360度自動で回転するので、無意識のままずっと動き続けることが可能になる。

失われた能力の覚醒?

実際に20分ほど座ってみると軽く疲れが出る。これは普段、意識的に使えていない筋肉を使えている証拠だという。実はこの「意識的に使えていない筋肉」に大きな意味があるのだ。

未来創生センター 数理科学領域 小田島正 主幹

昔の日本人は100kgの米俵を担げたといいます。我々は、昔の人がすごかったのではなく、現代人の能力が失われているのではと考えました。

失われた能力を取り戻すにはどうしたらいいか。そんな問いから生じたのが、人間が本来持っていた能力の回復による機能拡張「ERIA(エーリア) 」という考えです。
Enhancement by Recovering Inherent Abilities

機能拡張といえば、筋トレや脳トレ、またはメガネや補聴器の使用が一般的ですが、ERIAの考え方は根本的に異なります。

どう違うのか。非常に興味深いことが語られた。

トレーニングや器具で「脳」「筋肉」「感覚器」を強化するのではなく、それぞれの連動性を鍛えるという。

未来創生センター 数理科学領域 小田島主幹

人に備わっていたものの、日常生活で使われなくなった連動性に注目しています。昔の人は「脳」「筋肉」「感覚器」のつながりの部分の働きが、現代人より優れていて、体を効率よく連携させて高い運動能力を発揮できていたのではないかと考えました。

つながりの部分は、脳や筋肉と違って意識して鍛えることができない。だからこそ無意識で鍛えられる方法が必要だった。

そこで冒頭の椅子が開発されたのだ。

「固定された椅子」と「傾斜が回転する椅子」で筋肉の活性度の違いを調査。すると回転する椅子では、腰部だけではなく、あらゆる部分で深層筋(インナーマッスル)の緊張と弛緩が繰り返されることが確認された。

筋の連携強化が図られ、失われていた能力の向上が期待できる。つまりこの椅子なら、筋トレや脳トレで意識的に鍛えられない領域の機能拡張が見込めるかもしれないのだ。

苦しいトレーニングと違って椅子に座るだけだから、意識が高くなくても継続できる。

また、同じ姿勢で長時間座っていると腰への負荷が高まり腰痛を発症しやすくなるが、座面が動けば同じ姿勢を維持しづらい。結果として腰痛を抑える効果が期待できる。

紹介した椅子以外にもあらゆるタイプが検討されている。共通点は座面がグラグラ不安定であること。キーワードは「運動連鎖」。なんだか難しそうなので簡単に説明すると…

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