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2026.05.20
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「この色で合っているかな?」を、もう迷わない 電線色可視化ツール誕生

2026.05.20

仕事を楽しく、面白くするための「創意くふう提案制度」。今回は少し趣向を変えて、全員活躍を目指してチームで取り組んだ、とある改善のストーリー。

謎の箱の正体は?

パソコンにつながれた、この黒い箱。側面には小さな隙間が空いている。

ここにハーネスを差し込むと…。

電線上に「ちゃいろ」「あお」「あか」といった文字が表示される。

箱の中には、汎用的なWebカメラが中央にあり、ほかにはボックス内を照らすLEDとそれを制御する基板と基本構造はシンプル。LEDの光を直接配線に当てると、明るすぎてハレーション*がおきやすいため、白い紙を一枚通すことで光を柔らかく、均一に拡散させる工夫が施されている。
*強い光が当たることによって、画面の一部が白くぼやけてしまう現象。

箱が真っ黒なのは「箱の中での光の反射やノイズを低減するため」だそう。

色を文字で表すという発想。実は全然関係のない資料をつくっているときにヒントを得た。

阿納

(パソコンで資料をつくるとき)もともとグレーとか黒色しか使っていなかったんです。

でもたまたま赤色を使おうとなったときに、2色似たような色が並んでいて「どっちが赤だろう?」と思ってポインターを当てると「濃い赤」と文字で表示されて、これは参考にできるなと思いました。

ひらがな表記にしたのは私のこだわりで、色鉛筆もひらがなで表記されていることが多いですし、日本人なら誰でも読めるので採用しました。

突破口を見つけてから、チームは箱を作成するグループと、撮影した画像から色を判定するアプリケーション(ソフトウェア)をつくるグループに分かれて開発を進めた。

ソフト開発では、HSV色空間という考え方を採用。「色相・彩度・明度」それぞれの数値の組み合わせによって、色を判定する方法だ。

「難しかったのは、閾(しきい)値の調整です。赤色と言ってもたくさんあるので、どこからどこまでの数値の範囲で設定するかが大変でした」

これらは画像処理の技術であり、AIによる画像認識よりも手間やメンテナンスが少ないという利点もあるという。

こうして完成した「電線色可視化ツール」。阿納はこう振り返る。

「これで何色だろうという不安がなくなったのが、一番うれしかったです」

「全員活躍、こういうのが大事なんだよ!」

「電線色可視化ツール」によって、阿納と森本も自信を持ってハーネス製作に関われるようになった。「電線色可視化ツール」はQCサークル活動の成果として発表され、全員活躍に貢献する改善は、社内での評価も高かったという。

QCサークル活動は、品質管理(Quality Control)にまつわる課題に対し、チームで向き合い成長していくための活動だ。主に個人の改善を対象とする「創意くふう制度」とは異なるが、トヨタ伝統の「改善」という文脈においては、どちらも似た意味合いを持つ。

阿納(左)と森本

阿納は「改善事例展示会のとき、河合(満)おやじから『全員活躍、こういうのが大事なんだよ! 社内には同じ悩みを抱えている人がいるだろうし、応用すれば製造現場でも活用できる!』と言っていただきました」と振り返る。

「電線色可視化ツール」は「2025年度 QCサークル全国大会」で感動賞および体験事例優秀賞を受賞。さらに、令和8年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰「創意工夫功労者賞」も受賞した。

「全員活躍を掲げ、みんなで頑張って完成させたので、社外の方からも『参考にしたい』と言われたときはうれしかったです」と阿納。

最後に、トヨタの改善文化について聞いた。

「入社以来、改善については常に教えられているので、やりづらいとか、危ないとか、なんか手間だなと感じたら、どうすれば解決するかを考えることは自然になっています。でも大事なのは自分だけではなく、職場や共に働く仲間が、楽に、そして安全に作業できることです。そのために、皆で知恵を出し合い、より良いモノづくりにつなげていきたいです」

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