本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回はタイで農業&カフェ?
クルンテープ・マハナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャターニー・ブリーロム・ウドムラーチャニウェート・マハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカッタティヤウィッサヌカムプラシット
え、何の呪文!?と不安になったみなさん。実はこれ、タイのバンコクの正式名称なんです。「世界で最も長い地名」としてギネス世界記録にも登録されているとか。
そう。今回はトヨタがタイで進めている一風変わった取り組みをご紹介!
我々が訪れたのは、タイ北部の国境近く、ナーン県のプーパヤック村。バンコクから飛行機で1時間強、さらにクルマで約4時間もかかる標高1,500mほどの山岳地域だ。
20年ほど前まで電気が通ってなかったこの地では、900人ほどの住民がほぼ全員、農業で生計を立てている。
2003年、村に大きな衝撃が走った。タイの王室プロジェクトの地に選ばれたのだ。
米づくりから、コーヒーづくりへ
王室プロジェクトとは、農村部の生活向上を目指す国家事業のこと。農作物の栽培、加工技術を支援し「貧困問題の解決」と「森林保全」を両立させる取り組みである。政府機関の担当者はこう語る。
農業開発長 ワチャラポンさん
「米づくり」から、付加価値の高い「コーヒーづくり」へシフトしました。コーヒーは木に実るので、収入を高めつつ、森林再生も叶えられるからです。
2003年にはシリキット王太后陛下もこの村を訪問。王室で研究された結果、タイの暑さに耐えられ、土壌との相性もいいアラビカ種のコーヒーを育てることになりました。しかし大きな課題がありました。生産効率です。
そこで改善のためトヨタがチームに加わってくれました。当初は「なぜ自動車会社が…?」と驚きました(笑)。
トヨタが関わる理由は後半で紹介するとして、生産効率をトヨタがどのように高めたのか。答えはこの画像にある。よーく見ていただきたい。
まずは、あえて日陰で育てるようにしたのだ。アラビカ種のコーヒーは気温が低い場所に適しているため、木の伐採をやめることを周知して木陰をつくりだした。ちなみに土地は、王室が無償で貸し出しているという。
もう1つは、写真中央を横断する水色のホースがヒント。
水不足になりやすい地域だったが、すべての農家さんが困らないように、山の水を3キロ下まで循環させるオートメーションシステムをつくりあげたのだ。
さらには収穫方法の改善も。
昔は深く考えずに一括で収穫し、青いものは捨てていたが、それでは生産効率は上がらない。あたり前のようだが、正しい収穫方法も伝えて回ったという。
そこで、別地域で成功している農家さんを視察してもらい、知識を高める活動も始めた。クルマづくりでも「人が財産」という考えがあるように、人材育成が重要だからだ。
都会のカフェにパパの写真が
改善後、農家さんに収入がどれほど上がったかを聞くと「う~ん……かなり(笑)」と満面の笑み。
農園のウィーさん親子
王室プロジェクトで、いろんなことを教えていただき、モチベーションも上がりました。トヨタの改善で、味や品質に対して”考える癖”がついたことも大きいです。
品質が良くなれば生活も良くなる。今はマーケットを大きくするために新しいフレーバーも試作しています。娘が仕事を継いでくれ、親子で一緒に成長していけることが嬉しいです。
18歳の娘さんは「都会のすごくおしゃれなカフェに、父の写真が飾られているんです!!」と教えてくれた。
心の底から嬉しそうなその表情を見て、お父さんも微笑む。王室プロジェクトに関わることで、仕事に大きな誇りが生まれたのだ。
収穫後も改善は続く。かつてはコーヒーの実を手作業で剥き、豆を取り出していたそうだ。
そこで脱穀機を提供し、乾燥工程も改善。しかし、コーヒーの専門家ではないトヨタには限界もあるため、タイ・スペシャルティコーヒー協会(SCATH)とも連携。1年目の活動で品質スコアが76点から82点に上がり「スペシャルティコーヒー」の基準を達成できたという。
今では大きな品評会で高評価も獲得。村には観光客向けのカフェもつくられた。
今後は、高級品種「ゲイシャ」も収穫予定。日本では一杯1,500円超える豆だ。ちなみに名前の由来は「芸者」じゃないってご存じでしたか?