英語、中国語、スペイン語、ドイツ語...8か国以上の言語が聞こえる!?海外64 事業体から世界中のトヨタ社員が集い、学び合う、グローバルな社内イベントに潜入。
“Toyota is family.”
アメリカ・インディアナ州の生産拠点 TMMI(Toyota Motor Manufacturing, Indiana, Inc.)で働くブレノン・ベントンは笑顔でそう語った。
彼がこの言葉を口にしたのは、2025年11月18~19日に開催された「第36回 トヨタグローバルQCサークルコンベンション」でのこと。世界6地域・64事業体から64のサークル、約300名が日本に集い、2日間にわたりQCサークル活動の成果と学びを分かち合うグローバルな大会だ。
今回トヨタイムズは、TMMIを代表して参加したチーム「Forklift Certified」 に密着。彼らを通じて、2日間のコンベンションや参加者のようす、トヨタQCサークル活動の意義をお届けする。
世界各地から最優秀QCサークルが集結
トヨタグローバルQCサークルコンベンションは、各地域の事業体を代表するQCサークルが一堂に会し、改善を通じた人材育成事例を発表し合い交流を深める場。
代表サークルのサークルリーダーには「アンバサダー」の称号が授与され、帰国後1年間、その地域のQCサークル活動をリードする役割を担う。
QC(Quality Control=品質管理)サークルとは、職場メンバー5~7名でサークルをつくり、自分たちの現場の問題を見つけ、話し合いながら改善していく小グループ活動のこと。人材育成や明るい職場づくりを目的として、製造業を中心に世界中さまざまな業種で取り入れられている。
なお、トヨタグローバルQCサークルコンベンションは世界一を決める大会ではない。各事業体で最優秀に選ばれたチームが集い交流し、経験や気づき・学びを共有し持ち帰ることで、各職場を活性化させることが目的だ。人材育成と草の根交流の場として位置づけられている。
今回密着したTMMIのQCサークル「Forklift Certified」は、ボデー部品構内物流部(East Body Weld Internal Logistics )で働く仲間たち。来日したのはサークルメンバー4人と、QC工場事務局の1人。
サークルリーダー ブレノン・ベントン(Brennon Benton, Circle Leader)
テーマリーダー スペンサー・セクストン(Spencer Sexton, Theme Leader)
ゲートキーパー スコット・メリック(Scott Merrick, Gate Keeper)
タイムキーパー ディラン・メレディス(Dylan Meredith, Time Keeper)
TMMIトレーナー兼QC工場事務局 マーク・ペレリート (Mark Pellerito, TMMI Trainer & TMMI QC Secretariat)
マーク以外は日本に来るのも初めて。街の清潔さ、人々の礼儀正しさ、食べ物の違い、すべてが新鮮なカルチャーショックだとも話してくれた。
1日目:トヨタの歴史にふれる博物館ツアー
初日、参加者はトヨタ本社本館ホールで開会式とオリエンテーションを受けたのち、トヨタ産業技術記念館とトヨタ博物館を巡る「トヨタ歴史ツアー」へ。
トヨタ産業技術記念館では、トヨタの原点である、はた織り機の実演や、織機メーカーからはじまり世界的な自動車メーカーへと成長していった軌跡、G型自動織機の実演などを見学。トヨタ博物館では、世界のクルマの進化と文化を堪能。
「トヨタが織機から始まり、今ではスーパーカーや世界最大級の自動車メーカーになった。その進化を見るのは本当にすごいことでした」(スペンサー)
「企画展*でGT-Rを見られて嬉しかったです。映画『ワイルド・スピード』でブライアン・オコナーがいつも乗っていたのが印象的です」(ディラン)
*企画展では「What’s JDM?-世界が熱中する’80-’90年代の日本車-」と題し、15台の日本車が特別展示されていた。
「工場のチームメンバーと一緒にこの歴史を体験できたこと。それが一番印象に残りました」(マーク)
トヨタ博物館のショップでは、上司へのお土産に、娘や孫へのお土産に、自分用にと、彼らの部署でも使われているフォークリフトのミニカーを全員が購入した。自分たちの仕事を仲間や家族にも伝えたい。そんな思いが、お土産選びから垣間見られた瞬間だった。
TMMIでは、週1回QCサークル活動を実施しており、データを取り、特性要因図(フィッシュボーン)などを使い、原因を深掘りしながら3~4カ月かけて対策していく。
ブレノン
問題を分解できること、そして全員の意見を取り入れられることがQCサークル活動の魅力です。
例えば、1人だと1〜2個しかアイデアが出なくても、チームで協力すればそれぞれ1〜2個ずつ意見が出て、特性要因図などで情報を見える化できます。トヨタのQCサークル活動では、様々なスキルをチームメンバーに示すことができます。リーダーシップを発揮できるところも私は好きです。
スペンサー
ベテランと新人両方の意見が得られるのも良い点です。ベテランは慣れで同じことを繰り返しがちですが、新人は新しい視点で提案してくれるので、どちらの意見も役立ちます。
ベテランと新人が一緒になって考えることで、思いもよらないアイデアが生まれる。大事なことは、メンバーに敬意を示し、互いに尊重し合うこと。そうすれば、すべてがスムーズに進むんです。
QCサークルを通じて人が育ち、リーダーが育つ。TMMIの現場でもそれが根付いていることがわかる。