持続的な成長と還元、これからもトヨタらしく

2024.06.27

トヨタは利益をどのように還元していくのか。成長のビジョンは? 株主の疑問にChief Financial Officer(最高財務責任者)も務める宮崎洋一 取締役副社長が応答した。

持続的に成長していくためには

では、トヨタ、さらには自動車産業が持続的に成長していくためには、どのような取り組みが必要なのか。

製造業が慢性的に抱える「人材不足」。そこに対するトヨタのアプローチとは? 再び宮崎副社長がマイクを握る。

宮崎 副社長

企業が持続的に成長していくためには、従業員一人ひとりが個性を生かしながら、明るく楽しく元気に仕事に専念できる、そんな環境整備が大変重要であると思っております。

そのためにも、まずは「入社したい」、「働きたい」と思っていただける会社になるための環境を整えることが必要です。その後は、高い意欲とやりがいを持って長期にわたって頑張っていただけるような制度の浸透やインフラ整備が必要だと思い、現在取り組みを進めております。

年齢・性別を越え、またハンディキャップがある方も含めて、ダイバーシティに活躍していただけるような働きやすい環境に向けて、トイレや寮・社宅の拡充、また女性従業員だけでなく男性従業員の育児休暇の取得促進、さらにはクルマの設計構造や生産ラインの工程見直しにより、作業負荷を低減する取り組みを進めております。

一方で、自動車産業は大変裾野が広い産業ですので、この労働力の問題は我々だけじゃなく、仕入先を含めた産業全体の課題だと思っております。産業全体の魅力を上げて、「550万人の仲間になりたい」と思っていただけるようなところまで目指して、仕入先の1次、2次、3次、4次…といったところまで、深く、賃上げの効果を浸透させていくことを意識して現在取り組みを進めております。

トヨタは「人は宝、従業員は家族」と思っております。また、自動車産業の未来は、トヨタだけではつくれません。多くの皆様と一緒に未来をつくっていきたい、そんな想いでおります。産業全体で技能と技術を伝承し、これからも日本のモノづくりをしっかりと発展させていく、そのためにも、人への投資をしっかりと進めていきたいと思いますので、引き続きご支援よろしくお願い申し上げます。

「人への投資」は、今年の労使協議会でも取り上げられた重要なテーマだ。3月に行われた第3回の話し合いでは、工場の暑熱対策や物流エリアの委託業者の作業環境に対する課題を共有。4月には、販売店・仕入先との “拡大労使懇談会”を初開催するなど、自動車産業全体を見据えた改善が進み始めている。

「従業員は家族」――。これは、トヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎の言葉であり、『豊田綱領 * 』には“温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし”と記されている。

*グループ創始者・豊田佐吉の遺訓を、豊田喜一郎らがまとめたもの。

鍛えた経営基盤だけでなく、そこに込められた精神も受け継ぎ、未来へと発展させる。宮崎副社長の回答からは、そんな想いを感じさせた。

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