液体水素車2年目3つの進化 航続距離は1.5倍に 第2戦富士

2024.07.02

液体水素カローラで臨んだ2度目の富士24時間レース。トラブルで長時間のピットインもあったが、クルマの進化には目を見張るものがあった。そのポイントを3つの観点でまとめた。

「悔しいのは、僕らテストでたくさん走ったんです。トラブルも1個ずつつぶしていって、やっと本番を迎えました。先週もテストをしたんですが、トラブルもなくて、近藤(真彦)さんにも、モリゾウさんにも、気持ちよく走ってもらえていて、迎えた本番…。やっぱりレースは厳しい世界だなと感じました」

32号車、液体水素を燃料とする水素エンジンカローラ(以下、液体水素カローラ)の監督も務める石浦宏明ドライバー。レース後のインタビューで、悔しさをにじませた。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

5月2728日にかけて決勝が行われた「ENEOS スーパー耐久シリーズ 2024 Empowered by BRIDGESTONE 2戦 富士SUPER TEC 24時間レース」。

液体水素カローラは、途中、ブレーキ系統のトラブルなどで9時間のピットインを余儀なくされ、332周(約1,515km)。完走こそ記録されたものの、昨年の実績358周(約1,634km)に届かなかった。
撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

何が起こるか最後までわからないレースの世界。チームにとって悔しさの残る結果ではあったが、今年の液体水素車両の進化には目を見張るものがあった。

その進化のポイントを3つの観点で押さえる。

進化①ポンプの耐久性向上

「ポンプは液体水素技術の中で一番難しいところであり、弱点」。水素エンジンプロジェクトの統括を行うGR車両開発部 伊東直昭主査はこう話す。

昨年の富士24時間レースで液体水素カローラは4時間、3時間と2度、計画的にクルマを停めた。

この間に行っていたのが、液体水素を燃料タンクから送り出すポンプの交換だった。

モーターの回転運動をクランクと言われる機構を介してピストンの上下運動に変え、10MPaほどの圧力で液体水素をくみ上げる。

このときに、モーターのトルクとそれに反発する圧力で、クランクの歯車などの部品が傷んで、耐久性が落ちていくのが去年の課題だった。

手前が液体水素を送り出す燃料ポンプ(撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

問題はクランクの片側だけにモーターで力を加えていたことだった。課題の克服のために、モーターはそのままに、Dual-Driveと名付けたギヤセット(下写真の青と赤の部品)を追加。

クランクの片側だけに駆動力をかけるのではなく、両端に力が伝わるようになり、部品のねじれを軽減し、耐久性を向上させた。

ギヤセットをかませるだけの極めて簡易的な対策ではあるが、徹底的な軽量化が求められるレースにおいて「シンプルにするところに大切さがある」と伊東主査。

その効果は大きく、改良後のテストでは一度もポンプの不具合は発生しておらず、レース中も長時間のピットインはあったが、ポンプの耐久性に問題はなかった。

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