今年からW2RC(世界ラリーレイド選手権)の最高峰クラスに挑戦している三浦昂選手が出演! 連覇を阻まれたダカールラリー市販車クラス(ストッククラス)での出来事から、W2RC挑戦の難しさまで興味深い話が沢山聞けました。
4月17日のトヨタイムズスポーツは、今年からW2RC(世界ラリーレイド選手権)の最高峰クラスに挑戦している三浦昂選手をゲストに迎えた。
ダカールラリー13連覇を果たせず、悔しさを残したまま参戦した新たなステージ。新たな課題と向き合う中で見出した、トヨタの“究極のSUV”を鍛えるという自らの役割。社員ドライバーとしての気づきや学び、もっといいクルマづくりへの想いを余すところなく語ってもらった。
勝田貴元のWRC連勝が大きな活力に
番組冒頭の話題は、WRC(世界ラリー選手権)第4 戦のクロアチアラリーで優勝した勝田貴元選手が優勝したニュース(01:36 から)。サファリラリーケニアでの初優勝に続く連勝で、日本人として初めてドライバーズランキング首位に立った。
貴元選手の活躍に大きな力を与えられているのが、砂漠やジャングルなどの自然環境の中を走破するラリーレイドのトップカテゴリにステップアップして挑んでいる三浦選手だ。
「僕は今むちゃくちゃ壁にぶち当たって苦しいんですよ。貴元さんが勝った時に、技術的に難しいとか大変だっていう話以上に、自分を信じて進み続けることって本当に苦しいと思うんですよ。 でも、やった日本人はそこにいる。俺も頑張ろうと思えて」と、感謝の想いを語った。
三浦選手はトヨタ車体の社員で、総務部広報室に所属。チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)のダカールラリー市販車クラスでの活動を牽引し、ナビゲーターとして2回、ドライバーとして5回の優勝を果たしている。
TLCが豊田章男会長と約束していた12連覇を2025年に達成したのを機に、三浦選手はW2RC最高峰クラスへの参戦を豊田会長に直談判。今年1月のダカールラリーを最後にTGR-W2RCチームに移籍し、総合優勝を目指してドライバーとしての新たな道を歩み出した。豊田会長への直談判の模様も、過去の放送で紹介している。
ダカールラリー13連覇を阻んだライバルの本気
まずTLCとして13連覇を目指したダカールラリーを振り返ると、市販車部門は今年からストッククラスという名称となり、ランドクルーザー300にはディフェンダーという強力なライバルが現れた。ドライバーには、三浦選手の憧れの存在で「ミスター・ダカール」と呼ばれるステファン・ペテランセル選手も参戦した。
TLCの結果は3位が最高位で、三浦選手自身は5位という“惨敗”。「今でも悔しいです。ある意味負けるべくして負けたというか、実力が及んでいなかったなと思いますね」と振り返る。
「100%を目指していろんな準備をしたんですけど、我々が思う100%というのは、まだまだ100%じゃなくて、その先にもっと本当の 100%があったということが、今回の一番の学びだったと思います。勝つということに徹底的にこだわった時に、僕たちが思いつきもしないような方法があった」
その例の1つが、トランスミッションの交換。ルールではトランスミッションを2回交換できるので、各チームはA・B・Cの3機のトランスミッションを用意する。三浦選手らはラリー期間の前半でAを使い、中間日に交換して後半でBを使い、Cは予備という想定をしていた。
ところが、ディフェンダーはルールを別解釈して、3機のトランスミッションを毎日交換した。2回目に使用される時のAは、メンテナンスされているだけでなく、それまでの走行データをフィードバックしたAになっており、ラリー期間を通して進化を重ねた。
三浦選手は「1stステージや2ndステージは、彼らに追いついて追い抜いているんです。ところが後半は、姿も見えないぐらい速くなっているんですよね。彼らはこの 1日1日、1秒1秒の中で、もっといいクルマづくりを僕たちより進めていたんです。これは完全に負けた、甘かったなと思いましたね」と語る。
「見るべきものは未来だった」
ライバルとの戦いとは別に、今年のダカールラリーには複雑なものがあったと三浦選手は明かす。もっといいランクルづくりへのこだわりの強さゆえに、迷いがあったのが負けた理由の一つだという。
「ストッククラスになって、ランクルをけっこう改造できるようになったんです。でも僕たちは、ランクルであり続けたい。改造しすぎてランクルでなくなってしまうのは嫌だったんですよ。一定レベルの改造はしてもいいんですけども、トランスミッションとか駆動系の主要パーツはオリジナルを使って戦うことにこだわって開発をしたんです。そこまで手を入れてしまったら、僕たちがやってきた『もっといいランクルづくり』から違うところに行っちゃうかもしれないから…。今思えば、勝つために全てをやって、どんな形のクルマになろうが『これを未来のランクルにするんだ』という意思を持ってやれることを全部やっていたら、もしかして今は変わったのかな」
森田京之介キャスターは3月のニュルブルクリンク取材を思い返して、「今年ニュル(24時間耐久レース)を走るGRヤリスを取材していると、今までは市販車ベースの枠内で考えていたけど、『ちょっと枠外にはみ出して考えてみようよ』みたいなチャレンジを今まさにしている最中で。その話と重なるところを感じました」と反応した。
「今じゃなくて、見るべきものは未来だった」と三浦選手。
ダカールラリー13連覇を逃したことは、チームを離れる彼にとっても、来年以降もストッククラスを戦い続けるTLCにとっても、大きな教訓になったことは間違いない。
今年のダカールラリーの振り返りは21:53から。
ハイラックスを超える“究極のSUV”
TGR-W2RCで三浦選手が新たに乗るのは、DKR GRハイラックス。だが、見た目の印象とは全く異なるクルマだという。
「ハイラックスっぽく見えると思うんですけど、ハイラックスを改造して作ったクルマとかそういう考え方じゃなくて。もう砂漠を走るためのレーシングカーなんですよ。ハイラックスと本当に同じなのってドアノブぐらい」
W2RC最高峰の「アルティメットクラス」を走る意義について、三浦選手は“究極のSUV”という言葉で説明した。
「“究極のSUV”というのが、トヨタでいえばGR ハイラックスだと思うんですよね。なので、ここで学んだことは、ハイラックスを鍛えるとかランクルを鍛えることじゃなくて、トヨタの SUV 全体にフィードバックできるものがあるんじゃないかなと思っています」
ダカールGRハイラックスの走行映像は37:58から。
ドライバーの技術がごまかせないクルマ
実際にGRハイラックスを動かして感じたのは、ドライバーの技術がそのまま反映されること。「レーシングカーとして作られてるので、ちょっとした操作に対してもクルマがものすごく感度よく反応してくれる。動かしたいようにすぐ動かせるクルマなんですよ。逆に無駄な操作をしても、その無駄な操作にクルマがちゃんと反応する。だからドライビングの精度を上げていかないと、ミスがどんどんタイム差を作っちゃうんで、ごまかせないんですよ」と話す。
だからこそ、ランクルからハイラックスに乗り替わったばかりの三浦選手は、試練の時を迎えている。「トップのレベルの高さが想像したよりはるか高いところにあるのが、どんどん分かってくるんです。一つずつステップを積んでいるはずなんですけど、目標ラインが上がっていくスピードの方が速い状態で。でも、これは厳しいと思った瞬間にこのチャレンジは終わる。どんなに高かろうとやれると信じるしかない」と語った。
“究極のSUV”が争うクラスは「無駄なことを一瞬でもやったら負ける世界」。ブレーキを踏むかどうかの一瞬の判断が勝負を分ける。迷いながら走っている現状を認識しながらも、三浦選手は壁を一つずつ乗り越えようとしている。
クルマを鍛え、人にもチャンスを
移籍後初のW2RC参戦となったポルトガルでのW2RC第2戦で、三浦選手は25台中完走が21台の中で14位。5月にアルゼンチンで第3戦、秋にはモロッコとUAEで第4・5戦が予定されている。
ここから総合優勝を目指すには高いハードルがあるが、「だからこそやる価値があると思います。僕は社員からチャレンジさせてもらったんですけど、これからモータースポーツをやりたい人にもチャンスがあると思えるように頑張ります」と語る。
森田キャスターは、三浦選手のステップアップについて「スポーツとしての高みを目指しているのかなと最初思っていたんですけど、総合優勝を目指すことは結局、もっといいクルマづくりに返ってくるんだな」と感じたそうだ。サファリラリーの現地取材でランクルに助けられたことを挙げて、ランクルを鍛えてきた三浦選手にあらためて感謝の気持ちを伝えていた。
“究極のSUV”を目指して、社員ドライバーのもっといいクルマづくりへの挑戦は続く。
毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2026年4月24日)は、開催まであと半年に迫った愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会を特集する。トヨタアスリートの活躍が期待される10月の大会に向けて、パラ競技ならではの熱狂するポイントを解説。元パラアスリートの佐藤圭太さんをゲストに迎え、大会本番の熱狂に備える。ぜひ、お見逃しなく!