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「喜んで院政」15年ぶり"回答者"豊田会長が語った2つのこと

2024.06.26

2009年以来15年ぶりに議長から"回答者"に戻った豊田章男会長。佐藤恒治社長ら現執行メンバーも登壇する中で語ったこととは。

モータースポーツは道楽か?

――モータースポーツに時間を使いすぎているのでは?言葉を選ばずに申し上げると、会長の道楽になっているのではないかと。いかがでしょうか?

豊田会長が応えたもう一つの場面がこちら。認証問題が発覚し、「ショックを受けた」、「ガバナンス不全に陥っているのではないか」と不安を覚える株主からの、この日最後の質問だった。

モータースポーツは、トヨタのもっといいクルマづくりの起点であり最前線。しかし傍から見ると、道楽に映ってしまうのかもしれない

豊田会長は、「『いかがでしょうか』と言われても、どうお答えしたらいいのかではございますが…」と話し始めた。

豊田会長

私自身2010年のリコール問題のときに、トヨタの責任者として過去、現在、未来の責任を背負う。そう覚悟を決め、現在に至っております。

あれから14年が経ちましたけれども、今まだトヨタグループの責任者はこの私だと思っております。「ガバナンス」という言葉をちょっと勉強してみますと、統治、支配、管理を意味する言葉ですが、その語源は船の舵を取り、導くという意味だそうでございます。

私自身が考えるガバナンスとは、支配や管理ではなく、一人ひとりが自ら考え動くことができる現場をつくること。それに尽きると思っております。

しかしながら、私の存在や行動というのは、院政とか道楽とか言われてしまいます。院政についてこれまた調べてみると、後三条天皇が摂関政治からの脱却を図るため、働き盛りのうちに譲位されたことがそもそもの始まりだったと、ものの本には書いてあります。

今、院政というと老害のようなネガティブなイメージがありますが、本来の院政はむしろ、新しい時代を切り開く気概に満ちたものであるということをぜひ皆さんにも分かっていただきたいと思います。

私は常々、佐藤社長をはじめとする執行メンバーに「責任を取るのはこの自分。決めて実行するのが執行メンバー。いつでも、どんなことでも相談に乗るよ」と言っています。

私が執行メンバーの後工程になり、物事を決めたり、修正したりするつもりは一切ございません。そうではなく、私が前工程としていろいろな相談に乗ることで、私の失敗体験を糧にし、若い執行メンバーが思い切って決断し、自らの成長につなげてほしい。そう願っています。

それを院政と言われるのであれば、私は喜んで院政をしたいと思っております。私がグループビジョンを作成したのは、トヨタグループという船団のガバナンス、舵を取るためでございます。

私たちが未来に向かって進むためには、目指すべき方向を示し、働く人たちが迷ったときに立ち戻る場所をつくること、すなわちビジョンが必要だと考えました。

「道楽」とは道を楽しむと書きます。「次の道を発明しよう」。このビジョンを海図とし、私自身が責任者として、正しいモノづくりを行い、モビリティ・カンパニーへの変革を目指すトヨタグループの航海をリードいたします。

執行メンバーとともに全員で未来づくりをやっておりますので、株主の皆様にはなお一層、ぜひ新しいトヨタ自動車を応援いただくよう、よろしくお願いしたいと思います。

実は、豊田会長は以前も「道楽」の解釈を説明していたことがある。トヨタイムズニュースで生放送した社長交代の会見だ

放送内では、「本来は悪い意味ではなく『道を極める』という意味に近いと、理解をしました。マスタードライバー『モリゾウ』と佐藤新社長の共通点は『道を楽しめるクルマづくりを目指している』ということだと思うんですね」という言葉を残している。

このときも、今回の株主総会も、豊田会長は真っ直ぐ前を向いて話していた。しかし、その言葉は、隣に座る佐藤社長へのエールのようでもあった。

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