シェア: Facebook X

URLをコピーしました

使い終わったタイヤは資源 クルマの"足元"から進むカーボンニュートラル

2026.11.06

使用済みタイヤから新しいタイヤを生む。ブリヂストンが挑むカーボンニュートラルの取り組みがS耐岡山の現場で紹介された。

道がクルマを鍛える―。

トヨタが、モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりを続けるうえで、大事にしている考え方だ。

その道とクルマをつなぐただ一つの部品にして、小さな接地面からたくさんの情報をドライバーに伝えてくれる重要な部品、タイヤ。

路面との摩擦よってすり減るなどして、使用済みとなったタイヤがどうなっているか、ご存知だろうか?

日本では使用済みタイヤの有効利用率は99%を超えており、その多くが工場の熱源として使われている。

これはとても有効な再利用ではあるが、燃やす以上CO2といった温室効果ガスを発生しているのも事実。

そこでブリヂストンが取り組んでいるのが、“EVERTIRE INITIATIVE”の想いに基づき、精密熱分解技術を使って、タイヤを再びタイヤとしてよみがえらせる水平リサイクル。

10月24、25日、岡山国際サーキット(美作市)で行われたENEOSスーパー耐久シリーズ2026 Empowered by BRIDGESTONE(S耐)第6戦で、この技術を用いたタイヤが使われた。

お好み焼きから小麦粉や卵、キャベツを取り出す

精密熱分解とは、酸素が無い状態で有機化合物を加熱することで、構成する原材料に分解する技術。

クルマに使われているタイヤは、天然ゴム・合成ゴム・充填剤(カーボンブラックなど)・配合剤・補強繊維・鉄などの鋼材から構成されている複合体だ。ブリヂストンいわく、使い終わったタイヤから、これらの原材料を抽出するのは「お好み焼きから小麦粉や卵、キャベツを取り出すようなもの」とのこと。

S耐岡山の現場で行われた説明会では、この精密熱分解技術によって抽出した「再生カーボンブラック」を使ったタイヤが公開された。

タイヤのゴムは、そのままだと路面との摩擦ですぐにボロボロになってしまう。そこでゴムの強度を高めるために使われているのが「カーボンブラック」。文字通り炭素の粒で、街中でよく見かけるさまざまなタイヤが黒くなっているは、このカーボンブラックが混ざっているため。

ブリヂストンでは、使い終わったタイヤを細かく破砕した後、磁石で鋼材を取り除き、残りを精密熱分解の工程に送る。もちろん取り出した鋼材も別にリサイクルする。

精密熱分解工程で、加熱されたゴムなどはタイヤ分解油*となり、後に残るのが再生カーボンブラック。
*タイヤ分解油は、ENEOSに送られ、ナフサなどに戻し、再び合成ゴムの材料になる。

このとき、カーボンブラックの表面に分解されなかったゴムや粗大粒子が残ると、再びゴムと混ぜた際に破断の起点になってしまう。

不純物の少ない、より高品質な原材料を取り出すためには、加熱温度や時間、圧力といった細かいコントロールが求められるという。

タイヤだけでなく、合成ゴムなどのタイヤ原材料工場や天然ゴム農園も持つブリヂストンでは、2022年に使い終わったタイヤから原材料を取り出す挑戦を開始。23年からは熱分解の試験を始めるとともに、モータースポーツの現場を“走る実験室”と位置づけ、技術を磨いてきた。

今回、レースタイヤに使えるレベルのカーボンブラックを取り出せるところまで、精密熱分解技術が進化したということで、S耐に投入したということだ。

ちなみに、一般的に使い終わったタイヤは「廃タイヤ」と呼ばれることが多いが、ブリヂストンでは、新しいタイヤの“資源”として捉えているため「使用済みタイヤ」と呼んでいるそう。本稿でも、それに倣ってみた。

モータースポーツは情熱の原点

ブリヂストンでは、25年にソーラーカーでオーストラリアを縦断する「Bridgestone World Solar Challenge」で、再生カーボンブラックを使ったタイヤを初採用。

そして今回、より過酷な環境で耐久性やグリップ性などを試すため、S耐に挑んだ。

ブリヂストンが開発したタイヤを使ったのは、ST-Qクラスに出場した、12号車(MAZDA SPIRIT RACING RS Future concept)と32号車(TGRR GR86 Future FR concept)。

ST-Qクラスは、カーメーカーにかかわらず、クルマに関わるさまざまな技術をサーキットで試すために設置したクラス。トヨタイムズでもおなじみだ。

12号車と32号車

またカーボンニュートラルを意識した取り組みの一環として、岡山国際サーキットまではトヨタのFCEV(燃料電池車)トラック1台を借りて、計60本のタイヤを運んできた。ブリヂストンのモータースポーツの物流拠点である武蔵村山(東京)から、約700キロの道のりだ。

12号車、32号車ともに練習走行から予選、決勝でも再生カーボンブラックを使ったタイヤを使用。

決勝レースの後、32号車の石浦宏明選手に話を聞いてみた。

石浦選手
いろいろなカテゴリーでカーボンニュートラルのタイヤにトライしていますが、私たちからすると、乗っても(通常のレースタイヤと)違いが無いというのが最高の状態だと思います。

(今回のタイヤは)性能的にグリップもタレも含めて今までのタイヤと全然違いを感じませんでした。そういう意味では、かなり完成度の高いタイヤだと思います。

32号車で参戦した(左から)佐々木栄輔選手、大嶋和也選手、石浦選手、28号車でST-Qクラスに出場したMORIZO

モータースポーツオペレーション部の鈴木栄一部長は、ブリヂストンにおけるモータースポーツの役割について、次のように語った。

鈴木部長

モータースポーツは我々の情熱の原点です。

ブリヂストンでは、モータースポーツだけではなく、ここから外に出ていく技術というものも開発していきたいと思っています。

これからも、こういった取り組みを紹介していきたいと思います。

まさに“モータースポーツを起点としたもっといいタイヤづくり”といったところだろうか。

再生比率やコストといった壁はあるが、タイヤリサイクルの新たな可能性に向けて挑戦を続けるブリヂストン。

2027年9月には、岐阜県に精密熱分解のパイロット実証プラントの稼働が始まるという。

「敵は炭素」。カーボンニュートラル達成に向けて、共に挑む仲間の姿が、モータースポーツの現場にあった。

Facebook facebook X X(旧Twitter)

RECOMMEND